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「プログラミング的思考って?」「ふさわしい指導案がない」……現場の先生の悩みを、みんなのコード利根川裕太氏に聞く

小学校での「プログラミング教育」どうするの? 先生の悩みをトップランナーたちとひも解く 第1回

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2019/08/01 07:00

 2020年の小学校でのプログラミング教育スタートまであと1年を切っている一方で、現場の先生からは「どうしたらいいか分からない」といった不安な声も聞こえてくる。EdTechZineではプログラミング教育支援などのトップランナーにお話を聞き、小学校でのプログラミング教育導入のヒントを探っていく。今回は特定非営利活動法人みんなのコード代表理事の利根川裕太氏。『先生のための小学校プログラミング教育がよく分かる本』(翔泳社)の著者のひとりでもある。全国の先生とも接することの多い利根川氏は、現場の課題をどのように捉え、2020年をどう見据えているのだろうか。

全国の子どもたちがプログラミングを楽しめるように“先生”をサポートする

 ――みんなのコードさんは2015年から活動を始めているそうですが、現在はどのような取り組みをしていますか。

 利根川裕太氏(以下、利根川):みんなのコードは、「全ての子どもがプログラミングを楽しむ国にする」をミッションに掲げています。子どもたち自身がプログラミングと楽しい出会いをする機会を、全国あらゆる場所で実現することを目指して、「人」と「テクノロジー」の両面でサポートしています。

 「人」のサポートには、先生にフォーカスした3つのステップがあります。(1)教育関係者向けのシンポジウム「プログラミング教育明日会議」、(2)自治体等の依頼に応じて実施する「指導者研修会」、(3)実践的な通期の講習「プログラミング指導教員養成塾」です。これらを通じて先生方がプログラミングに対して前向きになれる環境を作っています。元教員のメンバーが3名おり、彼らが中心となって全国行脚しています。

 「テクノロジー」のサポートとしては、プログラミング教材「プログル」の提供をしています。算数の「多角形」「公倍数」「平均値」の単元でプログラミングを簡単に導入できるようにした教材で、Webブラウザで利用できます。また、今年になって理科の「電気の利用」の単元で活用できるmicro:bit(教育用のマイクロコンピューター)などを使った教材キットをリリースしました。

特定非営利活動法人みんなのコード 代表理事 利根川裕太氏
特定非営利活動法人みんなのコード 代表理事 利根川裕太氏

 ――活動が先生のサポートにフォーカスしているのが特徴的ですが、それはなぜですか。

 利根川:首都圏の小学校から地方や離島の小さな小学校までが同じ教育を受けられるようにサポートしたいと思っても、私たちみんなのコードのマンパワーで直接できることは限られています。

 全国隅々まで同じようにプログラミングが広がっていくためには、なんと言っても子どもたちと直接関わっている、現役の先生方の力が必要です。だから、プログラミング教育を実践して周りの先生に広めてくれる核となる先生を増やすことを目指しています。

 ――参加している先生の中には、そもそもなぜプログラミング教育をやるのか疑問を持っている方も多いのでしょうか。

 利根川:初めて私たちの研修会に参加した先生に「なぜプログラミング教育をやるんだと思いますか」と尋ねると、「指導要領にはこう書いていあるから」「プログラミング的思考を育むため」と返ってくることも多いです。本来注目してほしい「社会が変わって今後こういうことが必要だから」といった答えが返ってくることは少ないですね。

 ――その一方で、編集部でお話を聞いた先生方からは、これからの時代の流れとして「プログラミング」や「IT教育」をやる意義は理解できても「プログラミング的思考」と言われると捉えきれないといった声がありました。

 利根川:たしかに、シンプルにプログラミングのスキルを学ぶ授業の方が分かりやすいですよね。

 もし今ここに「プログラミング的思考」という言葉に強くとらわれている先生がいたら、「そこは難しく考えずに、プログルみたいに簡単なものでいいから子どもたちに授業をやって様子を見てみましょう」と声をかけたいですね。

 文部科学省の示した「プログラミング教育の手引」などを読み込んで考えることも大事ですが、そこで議論だけをしても何も出てきません。まずは子どもたちと一緒にやってみることをおすすめします。実際にやってみると、子どもたちの取り組み方や思考の変化が見え、プログラミングをやる効果はおのずと見えてくるはずです。

 授業でいきなりやらなくても、クラブ活動などで小規模にやってみるのでも、知り合いやご自身のお子さんと一緒にやるのでもかまいません。まずは子どもと共に体験することが重要です。

まずは何より“始めやすい”ツールであることが大切

 ――「プログル」はたしかに便利で簡単に導入イメージのわく教材ですが、算数の特定の単元に特化しています。これだけをやってプログラミングとしては発展せずに学びが終わってしまう懸念はありませんか?

 利根川:現在の日本の小学校の状況を考えると、入り口として「やりやすい」ことはとても大切だと考えています。シンポジウムや講習会などに直接参加される先生方自身は、熱意や関心があり大変勉強熱心です。その先生方が各学校に戻れば、その周りにはあまり興味関心の高くない大勢の先生方がいます。その時「ほかの先生にすすめやすいツール」であることが重要なんです。

 たしかにプログルは単元を絞った限定的な教材ですが、ただ真っ白な原稿用紙のように自由度の高いツールを渡すよりも、フォーマットのあるものの方が始めやすいのが現実です。逆に、興味があってやる気がある先生にはもっとたくさんのツールの選択肢をご紹介しますし教育内容も発展させてほしいと考えています。

 ――なるほど、プログルを踏み台にして越えて行ってほしいというイメージでしょうか?

 利根川:そうですね。ただ、今は、プログルから旅立って行く人よりプログルに入ってくる人の割合の方が多いというのが現実です。本来ならグローバルに使われている自由度の高いツールを自由な発想で使ってほしいとは思いますが、現場の実情は厳しいです。「先生の研修の時間がない」「先生同士で情報共有する暇がない」「PCやタブレット、インターネットなどの環境が整っていない」という状況で、いくつものハードルがありスタートラインのずっと手前にいます。

 せめてプログラミングの初めのステップはスムーズに越えられるようにしたい。プログルでとどまってほしくないという思いはありますが、プログルを導入するメリットの方が大きいと考えています。


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著者プロフィール

  • 狩野 さやか(カノウ サヤカ)

     株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。著書に『見た目にこだわる Jimdo入門』(...

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