ICT活用先進国のプログラミング教育・STEAM教育とは
国をあげてICT活用を進め、さまざまな公共サービスがオンラインで処理できることで注目されるエストニア。スタートアップ支援にも積極的で、Skypeが生まれた国としても有名だ。セミナーではエストニアのプリスクール、Lohkva KindergartenのHeadteacherでプログラミング関連の教育にも詳しいAnneli Mõtsmees氏を迎え、富山大学名誉教授 日本教育工学会前会長の山西潤一氏がコーディネーターを務めた。電子化の先端を行くエストニアで行われているプログラミングやSTEAMに関する教育の実態を知る貴重な機会となった。
エストニアの教育制度と環境
エストニアは人口130万人の北欧の小さな国。7歳~15歳が小中一貫のベーシックスクールで9年間義務教育を受ける。日本の保育園、幼稚園にあたるプリスクールは任意で、高等学校にあたる教育段階では一般の学校と職業訓練系の学校に分かれる。PISA(OECD生徒の学習到達度調査)では、日本やシンガポールと同様に多くの項目で上位の結果を出して注目されている。
国全体で電子化が進んでいると聞くと「どんな大都会なのか」と思うかもしれないが、伝統的な町並みやのどかな風景が続く。Mõtsmees氏は「田舎の地域に小さな学校がたくさんあり、どの学校でも最高の教育を提供する必要があります。それにはテクノロジーが大きな助けになります」と語った。
ほとんどの学校で子ども用のフリーWi-Fiが提供されており、共用のデバイス類もあるがBYOD(自分が所有する機器を持ってくること)が認められている。日本では何かと議論の種になるBYODだが、子どもたちが自分のデバイスを学校に持ち込むことで教育予算を補うことになり、むしろ助かっているという。教育現場ではそれだけ当たり前に1人1台のデバイスが必要とされる手法がとられているということだろう。
電子化の一例としては、2020年に向けての国の方針として、学習教材はすべて電子教材でなければならないと示された。教科書など、すべての教材はインターネット上に置く必要があり、現在そのプラットフォームが作られている。学校からでも家からでもどんなデバイスからもアクセスでき、子どもたちが重たいカバンから解放されるということだ。