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「国の課題が教育を形作る」――EdTechの本質とは何か、教育の世界にも必要とされるイノベーター像とは

「教育×テクノロジーの可能性を学ぶ会」レポート

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2018/11/19 14:00

 「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせた「EdTech」という言葉に対する認知は、教育現場のみならず、社会全体にも徐々に広まっているように感じられる。では、実際に今EdTechに取り組んでいる人たちは、その本質をどのように捉え、何を実現していこうとしているのだろうか。

 10月14日、都内で「ネパール驚きの教育革命と360人の未来を変える『教育×テクノロジー』の可能性を学ぶ会」と題するイベントが開催された。主催者は、オンライン家庭教師事業「メガスタディ・オンライン」などを手がける教育系ベンチャー企業「シンドバッド・インターナショナル」常務取締役の横山弘毅氏だ。

株式会社シンドバッド・インターナショナル 常務取締役 横山弘毅氏
株式会社シンドバッド・インターナショナル 常務取締役 横山弘毅氏

 同イベントでは、デジタルハリウッド大学大学院教授であり、EdTechに関する多くの研究と実践を手がける佐藤昌宏氏と、故郷であるネパールでの学校作りに取り組んでいる、NPO法人YouMe Nepal(ユメネパール)のライ・シャラド代表をゲストに招き、「EdTechの本質は何か」「テクノロジーによって教育はどう変わるのか」といったテーマで講演やディスカッションが行われた。

EdTechの本質である「イノベーション」を起こすために必要なこと

 前半は、佐藤氏によるEdTechの概論に関する講演が行われた。「実務家教員」である佐藤氏は、教授として学生の指導にあたる教育者であると同時に、一般社団法人教育イノベーション協議会の代表理事、人材育成コンサルティングやeラーニングシステムの開発事業を行う企業「グローナビ」の代表取締役、政府や行政機関が立ち上げる教育に関する委員会の委員など、さまざまな立場からEdTechに取り組んでいる。

デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏
デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏

 佐藤氏は冒頭、EdTechの定義として「デジタルテクノロジーの力を使った教育のイノベーション」であるとした。ここで重要なのは、この言葉が特定のテクノロジーや企業体などではなく「イノベーション」そのものを指すということ。つまり、旧来の枠組みの中にテクノロジーを取り入れたとしても、そこに何らかの「イノベーション」がなければEdTechとは呼べないというのが同氏の考えだ。

 では、教育にイノベーションを起こしたいと考えた場合、どのようなアプローチが可能なのだろう。佐藤氏は「トップダウン」「ボトムアップ」「イノベーター支援」の3つがあるとする。

 国のレベルで見た場合、「教育」は、国を構成する人々に知識を与え、育てていくための「制度」や「仕組み」を意味する。既存の制度や仕組みを、テクノロジーの力を使いながら、より現代にふさわしいものへと変えていくというアプローチが「トップダウン」ということになる。一方の「ボトムアップ」は、実際に教育を行っている現場を変えていくアプローチだ。教育現場で利用するソフトウェアの開発や、学校経営そのものの変革がこれにあたる。

 そして「イノベーター支援」は、既存の教育の制度や仕組みとは離れたところで生まれる新たなテクノロジーやアイデアを育てて、教育システムに取り入れていくアプローチになる。佐藤氏は、教育関連スタートアップのオーガナイズ、メンタリングや投資といった形で、この領域にも取り組んでいる。こうした、さまざまな立場や領域での動きが、有機的につながっていくことが「教育にイノベーションを起こす」ことにつながっていくというわけだ。佐藤氏が政策提言、起業家、教育者、投資家など、さまざまな立場でEdTechに取り組むのは、こうした理由による。

 「教育にイノベーションを起こす」ために、なぜテクノロジーが重要なのかという点について、佐藤氏は「テクノロジーは、先人たちが持っていなかった道具であり、武器であるから」とする。日本において、現在の教育システムができあがるまでには、多くの先人たちがテクノロジーによらない形での「イノベーション」を積み上げてきた。その蓄積による成果を、さらに大きく変革していくためには、ティッピング・ポイント(急激な変化のきっかけとなる臨界点)に達したテクノロジーの力を使うことが効果的だと言う。

 「ここで言うテクノロジーは、AR/VRやAIといった最新のものだけに限らない。コモディティ化したもののほうが、安定して成果を生み出すこともある。そして、テクノロジーには、これまでの教育の仕組みの中で、人間が関わっていたがゆえに避けられなかったエラーや認知バイアスといった限界を乗り越えていく可能性がある。だからこそ、これからテクノロジーをうまく活用していくことが重要になると考えている」(佐藤氏)


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著者プロフィール

  • 柴田 克己(シバタ カツミ)

    フリーのライター・編集者。1995年に「PC WEEK日本版」の編集記者としてIT業界入り。以後、インターネット情報誌、ゲーム誌、ビジネス誌、ZDNet Japan、CNET Japanといったウェブメディアなどの製作に携わり、現在に至る。 現在、プログラミングは趣味レベルでたしなむ。最近書いてい...

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