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早稲田大学などの研究グループ、児童の体力に生活習慣が大きく影響していることを明らかに

 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の内藤隆氏、早稲田大学スポーツ科学学術院の石井香織教授、岡浩一朗教授、関東学院大学経済学部の青柳健隆教授らの研究グループは、小学生の体力レベルと身体活動・スクリーンタイム・睡眠の3つの生活習慣の関連を分析した結果を、12月5日に発表した。同研究の成果は、12月3日に『PLOS One』に掲載されている。

 1日(24時間)は身体活動、座位行動、睡眠の3つの行動で構成されており、この3つの行動の推奨事項を包括的に遵守することを目指した「24時間行動ガイドライン」という概念が、国際的に広まりつつある。

人の1日(24時間)を構成する3つの行動
人の1日(24時間)を構成する3つの行動

 5〜17歳を対象にした24時間行動ガイドラインの推奨事項は下図の通りであり、座位行動にはスクリーンタイムが指標として用いられている。

子どもの24時間ガイドラインの推奨事項
子どもの24時間ガイドラインの推奨事項

 これまでの研究によれば、3つの推奨事項の遵守数の多さや特定の遵守の組み合わせが、子どもの体力の高さ、肥満や心代謝リスクの低さ、認知機能や学力の高さ、主観的な健康感や生活の質の高さと関連することが示されてきた。一方で、24時間行動ガイドラインの遵守状況と子どもの体力レベルの関連を調べた国内外の研究は十分ではなく、日本全国の小学校で実施されている新体力テストの全8種目のデータを用いて関連を検討した研究は、これまで存在していない。

 今回の研究は、体力レベルと3つの生活習慣(身体活動・座位行動・睡眠)との関連を調べることによって、子どもの体力向上策を検討する上で役立つ実践的な示唆を得るべく行われた。

 調査は横浜市内の研究協力校である小学校1校の児童を対象に実施され、体力テストのデータを取得するとともに、質問紙を用いて

  • 中〜高強度の身体活動の時間・頻度
  • 1日あたりの娯楽目的のスクリーンタイム
  • 1日の平均睡眠時間

を調べている。体力テストは以下の全8種目で構成され、各種目のスコア(各10点満点)および総合体力スコア(80点満点)のデータを取得した。

新体力テストの種目
新体力テストの種目

 24時間行動ガイドラインの推奨事項に基づいて、3つの生活習慣の遵守状況は以下のように分類されている。

  • 身体活動:1日60分以上の中〜高強度の身体活動を毎日行っている場合を「遵守」、それ以外を「非遵守」
  • スクリーンタイム:1日あたりの2時間以下の場合を「遵守」、それ以外を「非遵守」
  • 睡眠:1日9〜11時間の睡眠をとっている場合を「遵守」、それ以外を「非遵守」

 小学校の児童307名を対象に分析を行ったところ、3つすべての推奨事項を遵守していた子どもは5%に留まり、3つすべてを遵守していない子どもは25%を占めた。

 総合体力のスコアでは、「身体活動を遵守している子ども」「身体活動とスクリーンタイムの両方を遵守している子ども」「身体活動と睡眠の両方を遵守している子ども」「3つすべてを遵守している子ども」が、それぞれ遵守していない子どもと比較して有意に高い結果が示されている。とりわけ、身体活動の遵守に加えてスクリーンタイムまたは睡眠のどちらか、または両方を同時に遵守している場合、より高い総合体力スコアとなった。

24時間行動ガイドラインの遵守パターンと総合体力スコアの関連
24時間行動ガイドラインの遵守パターンと総合体力スコアの関連

 個別の体力についても、「身体活動を遵守している子ども」は、そうでない子どもと比較して、多くの種目で高いスコアを示しており、身体活動の遵守に加えてスクリーンタイムまたは睡眠のどちらか、または両方を同時に遵守している場合、体幹筋力/持久力・敏捷性・スピード・瞬発力・巧緻性でより高いスコアとなる傾向がみられる。なお、握力(筋力)、長座体前屈(柔軟性)は、24時間行動ガイドラインの遵守状況との関連がみられなかった。

 今回の研究によって、子どもの体力を高める上で身体活動・運動を行うことの重要性が改めて示されるとともに、スクリーンタイムの適切な管理や十分な睡眠を組み合わせることで、体力がより高まる可能性が示されている。身体活動だけでなく、24時間行動ガイドラインに基づいて、身体活動・座位行動・睡眠の推奨をバランスよく満たすことが、子どもの体力向上に効果的だと考えられる。そのためには、教員・保護者・子ども・政策立案者・事業者・研究者といった子どもたちを取り巻くステークホルダーが連携して、運動不足、デジタル機器の過度な利用、睡眠不足といった課題に対して総合的な対策を進めていくことが求められる。

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