15年来の課題を解決に導いた、Zoom Phone導入の5つのポイント
15年越しの電話システム刷新という大きな決断。その背景には何があったのか。関西学院をZoom Phone導入へと導いた、5つの重要な決め手を紹介する。
1.双方向性番号ポータビリティの開始
刷新を阻んできた「大きな障壁」を取り払う転換点となったのが、2025年1月からの双方向番号ポータビリティの開始だった。これにより、関西学院が利用する「0798」「06」「03」などの市外局番を持つ固定電話番号をすべて変更することなく、Zoom Phoneに移行できるようになった。これにより、告知コストの最小化や新旧システム併用期間の短縮といったメリットが生まれ、長年の懸案であった番号問題が解消された。
2.大学の「当たり前」を支える、機能性と安定性の両立
Zoom Phoneは、業界最高レベルのSLA(サービス品質保証)や政府のセキュリティ評価制度ISMAPへ登録している。さらに、阪神・淡路大震災の経験からBCPを重視する関西学院では、KDDIの「Cloud Calling for Zoom Phone」を採用。万が一、Zoomのサーバーがすべて不通となった場合でも、KDDIの交換局から別の電話に一括転送できる。藤澤氏は「この仕組みがあることで、『もしもの時でも、電話を受けられる』と学内に説明でき、安心が得られた」と語る。
この盤石な安定性を土台として、無償の自動音声応答(IVR)や無制限の通話録音といった、日々の業務効率を向上させる機能も充実しており、利便性と信頼性の両面から高く評価された。
3.AIと音声コミュニケーションの親和性
電話でのやり取りは、内容が記録に残りにくく、担当者しかわからない「ブラックボックス」になりがちだ。Zoom PhoneのAI機能は、ブラックボックス化を解消するだけでなく、これまで見過ごされがちだった個人の課題にも解決策を示した。その一例が、耳の不自由な職員の電話対応だ。リアルタイム文字起こし機能は、当事者からも「非常に期待している」と歓迎されたという。
また、日本語話者でない関係者との会議ではリアルタイム翻訳が、会議後の議事録作成では自動要約が、職員の負担を大きく軽減する。従来は会議後の議事録作成やタスクの割り振りに1~2時間を要していたが、AI機能によってそれらがなくなることで「時間創出によるコスト削減」が実現する見込みだ。
4.大学の多様なニーズに応える、柔軟な価格設定とサポート
多様な立場の構成員がいる大学において、全職員に同じ機能のライセンスを付与するのは現実的ではない。Zoom Phoneは、内線のみの利用者は無償にするなど、利用ニーズに応じたライセンスの組み合わせが可能で、無駄のないコストで運用できる点が評価された。
さらに、このような柔軟性は、Zoomの製品開発の姿勢にも表れている。藤澤氏は、ユーザーの要望がサービスに反映される余地がある点を挙げ、導入後も製品が進化し続けることへの期待を語る。変化し続ける大学のニーズに合わせてコストを最適化し、機能は進化し続ける。この「導入して終わりではない」という価値こそが、関西学院にとっての決め手となったのである。
5.学生や教職員にとって最適な環境を提供する、マルチベンダー戦略
関西学院は、これまでもSlackやBoxの導入など、特定のベンダーに縛られず、ユーザーの使いやすさを重視したマルチベンダー戦略でDXを進めてきた。大学は一般的な企業と異なり、教職員だけでなく、内部の構成員でありながらお客さまにも近い存在の「学生」の存在がある。そのため、利用できる機能や閲覧できるデータを立場に応じて厳密に管理できることは、ツール選定における絶対条件だった。
藤澤氏が「ツールを導入することが目的ではなく、最終的には教育研究の質を向上させることが目標」と語るように、あくまでユーザーである学生と教職員を中心に据えたシステム設計が、最適なツール選択へとつながった。

こうして、2008年の検討から15年が経過し、PBX更新時期の調整、コロナ禍による在宅勤務の重要性の認識、据え置き型から軽量ノートPCへの移行など、すべての条件が2023年に整ったことで、クラウド型IP電話への移行が決定されたのである。
職員の意識自体を変えて、DXを成功に導く
Zoom Phoneはすでに導入済みのZoomアプリ上で使うことができ、新たなアプリのインストール等が不要かつ教職員が操作に慣れている点も導入の決め手となった。しかし、一部の教職員からは「今までの電話の仕組みを変えたくない」といった声も上がっていたという。こうした声に対し、情報化推進機構では無理に新しい使い方を押し付けるのではなく、従来とほぼ同じ使い方ができることをアピールし、より多くの職員が安心できる状況で移行を進められるようにした。
また関西学院のDXでは、一部の部署で成功事例を作り、その好事例を学内で横展開することで、他部署の「私たちもやってみたい」という自発的な興味を引き出すことをねらっている。Zoom Phoneの導入においても、AI機能の活用事例などを広げていく予定だ。これは、藤澤氏が「無理強いするのではなく、まずは興味を持ってもらい、楽しみながら仕事に取り組むことで、DXが定着しやすくなる」と語るように、職員自身のマインドセット変革を促すためだ。
セミナーの最後には、藤澤氏とZVC JAPANの野澤さゆり氏との対談が行われ、導入における予算化のコツも語られた。従来の電話の保守費用をZoomのライセンス費用に付け替える際の交渉など、動画でリアルな物語が語られている。