エデュテインメントは「やってみる」のハードルを下げる
本セッションは、4月24日に「第16回 EDIX東京」のトークセッションのひとつとして開催された。会場には多くの教育関係者が参加し、質疑応答では「エデュテインメント」に関する疑問から、デジタルを活用した学びまで、多様な質問が寄せられた。
前半は正頭氏、岡本氏、丸山氏が、それぞれの立場から教育における取り組みを紹介した。最初に登壇した、立命館小学校の教諭である正頭氏は、東京大学の客員研究員としてエデュテインメントの研究にも携わっている。

今回のテーマである「エデュテインメント」という言葉について、正頭氏は「『楽しく学ぶ』『ゲームで学ぶ』ことだと、ざっくり捉えてもらって問題ない」としつつも、教育のバズワードとして捉えられる風潮に触れ、実は1960年ごろには生まれていた言葉であり、決して新しいものではないことを指摘した。
現代において「エデュテインメント」の重要性が増している理由として、生成AIなどの技術発展により「1人でできること」が増えたこと、そしてSDGsのように「1人では解決できない問題」が増え、協働学習やコミュニケーションが重視されるようになった社会の変化を挙げた。さらに、スマートフォンをはじめとしたデジタルデバイスの普及など、子どもたちを取り巻く環境の変化により、「やってみたいことがわからない」という子どもが8割にも達している課題に触れ、子どもたち自身が「調べたい」「つくりたい」「試したい」といった感情を持つことの重要性を強調した。
その上で、正頭氏はエデュテインメントの定義を「とりあえずやってみる」のハードルを下げる」こととした。「子どもたちにとって体験は非常に重要だが、『とりあえずやってみようよ』と声かけしても、なかなか行動に移さない」という現状を挙げ、「エデュテインメントはYouTubeや楽しいコンテンツのように、この『とりあえずやってみる』というハードルを下げ、学びへのきっかけを提供する」と解説。一方で、エデュテインメントだけで完結するのではなく、あくまで学びの入り口であることも強調した。
具体的な取り組みとして、正頭氏は自身がプロデューサーを務める「桃太郎電鉄 教育版」を紹介。「エデュテインメントが世に広まるきっかけのひとつになった」とし、2025年3月時点で1万2300校以上の登録があり、多くの学校で活用されている現状を伝えた。また、教育版特有のマップエディット機能「マイ桃鉄」では、駅名や物件情報などを自由に変更できるため、自分の町を探究する学習などに応用し、学びのアウトプットの形としても有効であることを語った。
