アルサーガパートナーズは、東京都千代田区立九段中等教育学校が導入する校内生成AIツール「otomotto(オトモット)」の開発を支援したことを、2月21日に発表した。
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九段中等教育学校は文部科学省のリーディングDXスクールに指定され、生成AIパイロット校として先進的な教育DXの推進に取り組んでいる。同校は生成AIの登場とともにその可能性に着目し、2023年10月にはアルサーガパートナーズが提供する生成AIソリューションを活用した教員向け「ChatGPT勉強会」を実施した。
さらに、千代田区が実施する生成AI関連業務の公募型プロポーザルにおいて、アルサーガパートナーズが選定された。この選定を契機に、他校に先駆けて生成AIを活用した授業の導入を目指し、教員と生徒を対象とした校内生成AIのSaaS版ツール「ARSAGA INSIGHT ENGINE powered by GPT」によるPoC(概念実証)を実施。その成功を踏まえ、独自の校内生成AIツール「otomotto」の開発に至った。
「otomotto」という名称は、同校の生徒たちによって考案された。また、アイコン画像も生徒たちのアイデアをもとにアルサーガパートナーズのデザイナーがアドバイスを加えながら制作した。「otomotto」は単に開発提供するだけではなく、実際の利用者である生徒・教員たちとともにアイデアを出し合い、工夫を重ねて作り上げた。
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「otomotto」の特徴は以下の通り。
1.多彩な生成AI活用
OpenAIの「GPT-4o」だけでなく、Anthropicが提供する「Claude 3 Opus」や、Googleの「Gemini Pro」といった複数の大規模言語モデルから適切なものを選択でき、多様なニーズに対応。また、チャット機能に加え、画像生成も自由に行える柔軟性を備えている。
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2.マイプロンプト機能
生徒や教員が独自のプロンプトを作成・共有できる機能を搭載。共有されているプロンプトへ「いいね」を送るなど、コミュニケーションも促進する。この機能により生徒同士の創造的な会話が活発化し、学びの新しい形を実現する。
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3.独自コンテンツフィルター
生徒が使用する際に教育目的を逸脱しないよう、独自のフィルタリング機能を搭載。検知されたコンテンツは管理画面から確認できる仕組みとなっている。
4.データ連携機能
科目ごとに保存された教科書データなどをもとに、AIと対話しながら出力が可能。例えば「日本史のこの時代についてテスト問題を出して」といった具体的なリクエストにも対応できる。教員が指定のフォルダにデータをアップロードするだけで自動で内容を取り込み、回答に反映させられる仕組みを実現した。
また、生成AI技術が日々進化する中、同校のニーズも刻々と変化したため、アルサーガパートナーズは同社の強みを生かした以下のような対応を行った。
迅速かつ柔軟な対応を可能にする「アジャイル開発」の徹底
短期間での仕様変更や要望の追加に対応するためチームワークを強化したスクラム開発を採用し、開発プロセスを最適化した。特に、明確なコーディングルールを設定し、新たに参加するメンバーでも即座に対応可能な体制を構築。また、誰がレビューしても品質を保証できる統一基準を整備することで、開発の遅延を防ぎつつ高い品質を実現した。
生徒と教員の声を反映した「ユーザー視点」の徹底追求
同校では中学生から高校生までの生徒が在籍しており、特に中学生でも直感的に操作できる優しいUI/UXを設計した。エラーメッセージや通知文言にも工夫を凝らし、迷わず利用できる環境を提供している。教員のフィードバックをもとに、生徒に寄り添った使いやすいサービスへと進化させた。また、サービス名とアイコンは生徒たちが提案した案を採用し、生徒自身がプロジェクトに参加する喜びを感じられる仕組みを取り入れた。
全員が同じゴールを目指せる「認識共有」の仕組み
教育現場と開発チームが一丸となるために学校との週1回の定例会議を設け、開発状況や提案内容を図式化・資料化して共有した。この取り組みにより関係者間の認識齟齬を防ぎ、目指すゴールを明確にすることが可能となった。開発者と現場の垣根を越えた密なコミュニケーションにより意見が反映された開発が実現し、プロジェクトのスムーズな進行を後押しした。
同社は今後、教員の業務改善に特化した機能を順次実装予定で、働き方改革の一環として教育現場の効率化に貢献していく。
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