[※]出典:日本教職員組合「2024年 学校現場の働き方改革に関する意識調査」
株式会社クジラボ 代表取締役 森實泰司(もりざね だいじ)氏

株式会社リクルートで採用コンサルタント、ITベンチャーで人事責任者経験後、人事コンサルタントとして独立。現在も人事顧問に従事するなど、教員をはじめ数多くの転職者として関わる。2019年に学校法人の事業を承継し私学経営を行うかたわら、2021年に教員のキャリア支援事業を行う株式会社クジラボを創業。ミッションは教育のオープン化。
実質週6勤務の現状──残業は減らしたいが、現実的に難しい
──教員の働き方について、現場の先生方からはどのような声が寄せられていますか?
「仕事が終わらない」「持ち帰り仕事が多すぎる」といった相談が多く寄せられています。特に目立つのが、「土日のうち、どちらかはほぼ毎週出勤をしないと回らない」という声。実質週6勤務、まともな休息を取れない状態が続いている先生が少なくありません。
ある中学校の先生は「部活動があるため、土曜日は休めない。定時退勤日が設けられていても、結局仕事は終わらないので持ち帰るしかない」と言います。いわゆる「ノー残業デー」を設定している学校もあるようですが、翌日にしわ寄せがくるため、結局は持ち帰り仕事になってしまっているのが現状です。
──具体的な事例があれば教えてください。
例えば、教員2年目の小学校教員の方。朝は6時50分に学校に到着し、夜は21時まで働いているそうです。休日も地域活動に参加する必要があり、ほぼ毎週土曜日は出勤。休めるのは日曜日だけという生活が続いています。「あれだけ憧れていた仕事なのに、帰り道に涙が止まらなくなることがある」と打ち明けてくださいました。
また、ある学校では、月の残業時間が200時間を超える先生もいるそうで、ヘルプの声を上げても何も変わらないと諦めムードが広がっています。結果として、休みと睡眠時間を削りながら働く日々が続き、自身のスキルアップの時間を確保できない状況に陥っていると言います。

──長時間労働を引き起こしている業務には、どのようなものがあるのでしょうか?
学校種や地域によって原因はさまざまですが、特に中学校・高校では、部活動の指導が大きな負担となっており、土日も練習や試合があるため休日出勤が常態化しています。休みの日に地域の行事に参加を求められるケースも存在するようです。さらに、体育祭や文化祭など行事前は、業務量が急増します。加えて、保護者対応に多くの時間を取られているケースも目立ちます。特に対応が難しいケースでは、教員が1人で抱え込んでしまい、業務時間の大半を費やしてしまうこともあるそうです。
ただ、これは学校によってかなり差があり、残業が少なく休みの日も出勤せずに仕事が回っているところもあります。最近では部活動の負担を外部コーチに委託する動きも出てくるなど、働き方改革への意識は高まっていますが、多くの現場では長時間労働が続いており、働き方に関する相談は増えているのが実情です。
──教員の間では、働き方改革に対してどのような意識があるのでしょうか?
「本当は残業を減らしたいが、今の業務量では時間を減らすのは現実的に難しい」と考えている教員の方が多いようです。「早く帰れ」と言われても、次の日の授業準備や成績処理、保護者対応などに追われ、現実的に難しいと感じています。
また「がんばっている先生=よい先生」という価値観が残っている場合もあり、長時間働くことが美徳とされがちです。時には、定時で帰る先生よりも、遅くまで残っている先生のほうが「熱心に仕事に取り組んでいる」と評価されることもあるようです。制度を整えるだけでなく、就労観を見直すことが、働き方改革を進めるためには必要なことだと感じます。