1人で抱え込まない体制を作るために大切なこと
──メンタルヘルス関連の相談が増えている背景として、職場での人間関係も話題に上がっていました。その点についてはいかがでしょうか?
そうですね、職場の対人関係も重要な要因です。最初に公立学校での異動に関連する相談が多いという話をしましたが、異動による環境の変化はメンタルヘルスに大きな影響を及ぼします。学校が変わると組織文化も変わるため、新しい環境に適応するには時間がかかります。
さらに、公立学校は管理職が短いスパンで異動するという特殊な環境にあります。管理職が変わることで方針や雰囲気が大きく変わり、職員間で価値観のズレが生じることもあります。こうした変化に適応するのが難しく、孤立を感じたり、難しい対応を1人で抱え込んでしまい、心身ともにストレスを抱えたりするケースも少なくありません。
──1人で抱え込まないように、学校内でできることはないのでしょうか?
一番大切なのは、属人性を排除する体制作りだと思います。現在、学校現場では「担任がすべての問題に対応する」という慣習が根強く残っていますが、この考え方を見直し、1人ではなく複数人で対応することを当たり前の文化として根付かせることが必要です。そのためには、学級内で閉じがちな情報を、情報共有ツールなどを活用し職員間で共有する環境を整えることが考えられます。
そして何より管理職から「この問題は個人で解決しなくてもいい」というメッセージを明確に伝えること。困難な状況に直面している教員を学校全体で支える姿勢を示すことが、孤立感を減らす鍵となるでしょう。
まとめ
教員のメンタルヘルスを守る取り組みは、教育現場のサステナビリティを確保するための鍵となります。「先生だから」と過剰な負担を押し付ける社会の構造を変え、教職員が安心して働ける仕組みを構築することが求められます。教員一人ひとりが安心して働ける環境を作ることは、教育現場の持続可能性を高めるだけでなく、子どもたちの成長にも大きな影響を与えるでしょう。学校を支えるためには、教員個人の努力に頼るのではなく、学校全体、地域社会、そして社会全体で連携した取り組みが必要なのです。次回のテーマは「業務改善」。教育現場の働き方改革を掘り下げます。