OECD教育研究革新センター(CERI)政策アナリスト Cassie Hague氏
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教育におけるコンピテンシー(能力)開発とデジタル技術の活用に関する研究を行っており、OECDの「創造的・批判的思考の教育、学習、評価プロジェクト」において、23カ国以上の2万人の教育者と協力し、創造性と批判的思考を育む教育手法を調査した。また、教育者が生徒の創造的・批判的思考を支援するための専門的学習フレームワークも執筆し、各国や地域の文脈に適応できるアプローチを探求している。
以前は、OECDの政策助言・実施部門で各国の教育政策と取り組みの評価に携わり、さらに学術機関や研究・革新団体でもデジタル技術の教育利用について研究していた。
忙しく、「先生自身が学べない」状況は世界共通の問題
──「創造的思考(クリエイティブ・シンキング)」や「批判的思考(クリティカル・シンキング)」はこれからの時代を生きるために重要な能力と言われています。日本の学習指導要領でもそうした力の育成が重要視されていますが、学校現場は忙しく、先生自身が創造的思考や批判的思考について学ぶことができていないため、子どもたちの能力を育むことが難しいという現状があります。OECDではそうした問題に対し、どのように向き合っているのでしょうか。
OECDが先生方と一緒にプロジェクトに取り組む際は、児童生徒について話し合うことから始めます。先生は児童生徒のことをとても大切に考えていますから、創造的思考や批判的思考がこれからの時代を生きるために必要であることを伝えると、前向きに取り組んでいただけるように思います。もちろん、国として学校現場にメッセージを発信することも大切ですし、また校長先生がこれからの時代に必要とされる能力についてしっかり認識することも欠かせないでしょう。トップが重要性を認識しているからこそ、現場の先生は安心して新しい学びの実現のために行動することができます。
「先生が忙しい」という問題は、日本に限らず世界中の多くの国で存在しています。勉強を教えるだけでなく、クラスのマネジメントや学校の細かい業務など仕事の内容は多岐にわたっており、先生の仕事はとても多いのです。こうした状況では、新しいことにチャレンジするのは難しいでしょう。
だからこそ、先生には「創造的思考や批判的思考がなぜ重要なのか」を国レベルで丁寧に説明する必要がありますし、現場任せにせず「一緒に新しい学びを作っていく」という姿勢が重要です。
加えて、教室から離れて先生が学べるような環境の整備も必要ですし、「これならやってみたい」と思える事例を示すことも有効でしょう。押し付けではなく、事例を見てインスパイアされ、その先生自身が授業を組み立てていけるようなものがよいと思います。