モチベーションが低い児童生徒にどう向き合うか?
──創造的思考や批判的思考の育成が重要であるのは間違いないですが、「やりたいことがない」「何をすればいいのかわからない」といったように、学びへのモチベーション自体が低く、前向きに取り組むことが難しい児童生徒もいます。そうした子どもたちに向けて、先生は何ができるでしょうか。
モチベーションが高くない児童生徒には「何をするのか」「なぜやるのか」について、先生が一緒に考えるとよいのではないかと思います。先生の指示通りに取り組むのではなく、児童生徒が自ら選択することで主体性が育まれていきます。その際に大切なのは信頼関係であり、児童生徒が「自信はないけれど、こんなことをやってみたい」と安心して言える環境でなくてはいけません。失敗してもいい、正しいことができなくてもいい、突拍子もないアイデアでもいいということを児童生徒自身が体感することが重要です。
一概に効果的だとは言えませんが、授業の進め方自体を変えて、児童生徒一人ひとりが違うプロジェクトに取り組むのもよいと思います。すべての授業を変える必要はなく、例えば学期の最初の授業はブレインストーミングの時間を設けて子どもたちと一緒に授業を組み立て、それを踏まえて次からは先生が指導する授業にするといった方法もあるでしょう。
また、学びのプロセスの最後にあたる「振り返り」から、自分が何をやりたかったのか気づきを得る手法もあります。わからないながらも、まずは取り組んでみることが、モチベーションの向上につながります。
なお「創造性」と聞くと「何か特別なことをひらめく」と捉える方も多いかもしれませんが、OECDでは少し違った定義をしています。私たちは「創造性」を「オリジナルで新しいアイデアを作ること」と定義しており、「オリジナルで新しいアイデア」というのは必ずしも革新的である必要はありません。児童生徒にとって身近なところ、家族や友だちの視点でオリジナルなものであればよいのです。そこから「私にとってはオリジナルだが、ほかの人にとってもそうなのだろうか」「ほかの人にとって何の役に立つのだろうか」といったことを考えられるようになります。