現状を「解像度高く、広い目線で」見つめる
冒頭、久芳氏は、先だって公表された全国学力・学習状況調査の結果に触れ、「各論ではさまざまな課題がある」としつつも、「数値的なところで言えば、活用が着実に進んでいるし、児童生徒から『(デジタル技術を)使ってよかった』という評価が出ている」と紹介。さらにこうした状況は来年度以降の「予算」にも如実に表れており、デジタル技術を活用した学びのDXや教職員の働き方のDX、生成AIの活用、教職員向けの研修など、「20年間、文部科学省に勤めてきたが、ここまでメッセージが伝わってくる予算はなかなかない」と、現状を分析した(注:久芳氏は文部科学省から現在、デジタル庁に出向している)。
これに対して平井氏は「デジタル技術の活用において大事なことは『解像度』を高めること。解像度が高くなれば、細かい部分がより詳細に見えてくるし、一方で高い解像度を保ったまま、全体を俯瞰することで見えてくることもある」と応じた。
そのうえで、久芳氏が言及した全国学力・学習状況調査(学調)について「学調は児童生徒に対するテストではなく、自治体の教育力を調査しているもの。正答率だけを見ることは、一部を粗い解像度で見ているだけに過ぎない。児童生徒が回答した質問紙調査を見て、先生たちが『できているつもりで、できていないこと』を把握し、どう授業を改善していくかを考える。そのためには、もちろん先生方が問題を『解く』ことで、高い解像度を得ることも大事」とした。
続いて久芳氏は「デジタル技術によってできることが非常に増えた。教育DXの仕事をしていて常々思うのは、(教育のデジタル化を進めていくには)教育の原点に立ち帰ることが実は最短ルートであると思う。例えば、一斉授業という授業のあり方がよいのかどうか」と問いかけた。これに対し、平井氏は「まさに、私が高校生のときは45人学級で、高校の指導内容を教えるには効率性が必要だった。しかし教育の原点に立ち戻れば、生徒同士の横の学びも重要。そこをテクノロジー、つまりGIGAスクール構想でどうしていくかを考えるのが出発点」と応じた。