教員は「教える」のではなく「伴走者」になること
では次に、先生方がどのような意識や心構えを持って、探究学習に取り組めばよいのかについて説明していきます。
探究学習においては「教員の役割は『教える』ことではなく『伴走者』になること」が一般的にも重要視されています。伴走者というのは、子どもたちの隣で一緒に走りながら、つまずいたり立ち止まったりしてしまったときにサポートしていく存在になることを指します。「子ども」と「大人」の関係ではなく、「対等の立場」で接していく意識を持つことが重要です。
さらに今の時代は、教員よりも子どもたちのほうがデジタルについて詳しいこともあると思います。自分が知らないことを子どもに「わからないから教えて」と素直に聞く姿勢や勇気を持つことも必要です。
「先生は子どもよりも知識があり、すべてを教えなければならない」といった旧来の価値観から、自身の考え方を柔軟に解き放ち、これからの時代を共に生きる子どもたちと接する際、どのような意識や心構えを持つか、自分自身で考えてみるのもよいかもしれません。
民間との連携には「学校が自走できる体制」が欠かせない
これまで話してきた探究・STEAM教育を学校として推進するには、地域人材や企業・団体と連携して「専門性を補完すること」も大切なポイントだと言えます。
その際、学校と企業・団体が事業パートナーとして手を組み、探究のカリキュラムや授業を作っていくには、当然ながらBtoB(企業間取引)のビジネスマナーやコミュニケーションが不可欠であり、「学校全体で自走できる体制づくり」が肝になります。
場合によっては事務局が介在して、学校と企業を取り持つケースもありますが、最終的には事務局を通さなくても企業や団体、時には専門家と円滑にやり取りできるよう、研修の仕組みを作るとよいでしょう。また、企業と一緒に授業を作る場合は企業側に丸投げすることを避け、探究学習の目的や目指す子どもたちの姿をきちんと伝えて、目線を合わせることも重要です。
学校現場における教育のアップデートは、まだまだ道半ばだと言えますが、全国各地で探究・STEAMの学びは浸透しつつあります。こうした学びのナレッジを、少しずつでも全国に共有していき、日本全体で探究・STEAM的な学びが広がり、各教科でもそのような新しい学びのあり方がスタートしていくよう、私たちも微力ながらサポートしていきたいと思います。
この記事が同じ想いを持つ教育関係者の方の目に少しでも留まることがあるのであれば、これほどうれしいことはありません。立ち位置は異なりますが、時代に沿った教育のアップデートを、共に全国各地で広げていきましょう。