「ものづくり」と「地域創生」の2つをキーワードに設計した大田区の独自教科
次に、東京都大田区が取り組んでいるSTEAM教育の推進について説明します。
同区では「笑顔とあたたかさあふれる未来を創り出す力を育てます」を「おおた教育ビジョン」に掲げ、その実現に向けてSTEAM教育など、教科横断的な学びを推進する区独自教科「おおたの未来づくり」を実施しています。文部科学省の「教育課程特例校制度」を活用した「おおたの未来づくり」では、「ものづくり」と「地域の創生」の2つをキーワードに、各学校が企業、団体、実社会と直接つながり、児童がアイデアを立体化させ実社会に発信する授業を行っています。
この2つをテーマにした授業づくりを進めるため、授業パートナーとして「おおたの未来づくり」に協力可能な企業・団体を募集するポータルサイト「おおたの未来づくりポータル」を構築し、大田区の学校と企業・団体が直接マッチングする仕組みもスタートしています。
学校内のリソースだけで学びを完結させるよりも、外部の企業・専門家といったプロの前でアイデアや成果を発表するほうが子どもたちのやる気につながりますし、学びの質も高まります。
現在、大田区内の3校で先行実施、27校で研究実践を行っている「おおたの未来づくり」ですが、令和7年度から区立小学校・特別支援学校で独自教科として全面的に導入される予定となっています。
今後は、渋谷区や大田区の先進的な教育事例を横展開していくことも重要で、そのためには自治体間の連携協定が必要だと私は考えています。連携協定によってカリキュラムやデータ、ナレッジの共有が進み、地域を超えて学校と企業による多様なマッチングが生まれると、授業の幅もより広がると期待しています。
後編では、「やらされ探究」を防ぐポイントと、教育関係者の意識改革をテーマに解説していきます。