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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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ICT教育サービス開発者インタビュー(AD)

児童生徒が主体的に考え、次の学びにつなぐには何が必要?「スクールタクト」振り返りAI分析の実証に見る

株式会社コードタクト 教育総研 江添光城氏インタビュー

 授業での学びを次の学びへと主体的につなげていくためには、児童生徒自身による「振り返り」が欠かせない。しかし、アウトプットが「感想」にとどまってしまったり、フィードバックを行う教員側の負担が大きかったりするなど課題も多い。そこで、授業支援クラウド「スクールタクト」は、2023年10月に「振り返りAI分析(β版)」をリリース。現場の教員から「振り返りの質が上がった」「授業改善につながり、評価もしやすくなった」といった声が寄せられているという。本稿では、開発に携わった株式会社コードタクト 教育総研の江添光城氏に「振り返りAI分析」誕生の背景から、スクールタクトの活用によって期待できる児童生徒主体の学びの形までを伺った。

AIとスタディログを活用した授業支援クラウド「スクールタクト」

 株式会社コードタクトが2015年から提供する授業支援クラウド「スクールタクト」は、国公私立を問わず2500校以上の小中高校や大学、学習塾、教育委員会などに採用されている。

 OSを問わないWebブラウザベースのクラウドツールで、単元に沿った9600以上の課題のワークシートが用意されている。課題の配布やフィードバックを一元管理し、児童生徒の回答もリアルタイムで閲覧・共有できるほか、シンキングツールや授業チャット、マイノート、タイマーなど、授業準備から授業中、授業後まで使える多様な機能を備える。

児童生徒の回答をリアルタイムで閲覧・共有
児童生徒の回答をリアルタイムで閲覧・共有

 また、学習の履歴はポートフォリオとして蓄積され、評価にも活用しやすい。操作の切り替えは1ボタンで簡単に行えるため、ICTを苦手とする教員や、低学年の児童でも直感的に使うことができる。

 導入した学校では、教員から「児童生徒の考えが可視化され、話し合い活動が充実した」「俯瞰的な見取りができ、子供主体の授業へと変わった」といった声も寄せられている。

 さらに、昨年度には「振り返りAI分析(β版)」や「班機能」が実装されたほか、2024年度は、同社の社内研究部門「教育総研」が行う、ICTによる「自己調整型の学びプロジェクト」や、生成AIを活用した「AIと一緒に学ぶプロジェクト」などの実証研究も進めている。

 今回、「教育総研」に所属する江添光城氏へインタビューを実施。振り返りAI分析の効果や実証研究の結果を中心に、スクールタクトが児童生徒主体の学びにどのように寄与するのか、話を伺った。

ボタンひとつであらゆる授業形態に対応可能

──まずは、スクールタクトの特徴について教えてください。

 学校現場で「主体的・対話的で深い学び」のためにICTを活用する際は、汎用的なツールよりも教育に特化したツールを使うほうが、先生も児童生徒も学びに専念できると考えています。ただし、ICTによって先生の負担が増えてしまうことも起こりがちなので、スクールタクトは極力、先生に負担をかけることなく授業をサポートできる設計を心がけています。

株式会社コードタクト 教育総研 江添光城氏
株式会社コードタクト 教育総研 江添光城氏

 スクールタクトには、授業準備ではすぐに使える課題のひな型となる「課題テンプレート」が搭載されています。また、授業中は児童生徒の学習状況がリアルタイムで見える「回答一覧画面」などを使いながら、スムーズに授業を進めることが可能です。一方、児童生徒はスクールタクト上のキャンバスを使って、まずは個人で考え、次に友だちと共有して学びを深めていくという場合も、ボタンひとつで「個別」と「協働」の画面をすぐに切り替えることができます。

課題テンプレート
課題テンプレート
回答一覧画面
回答一覧画面

 弊社には学校現場を経験したメンバーも多く在籍しており、現場のことを熟知しています。そうしたメンバーと共に、ICTをシームレスに使いながら授業をサポートするツールを作り上げてきました。

──江添さんご自身も、以前は学校の先生でいらっしゃったと伺っています。

 はい。私自身、公立と私立の小学校で9年間教員を務めていました。その経験からも、スクールタクトの「ボタンひとつでさまざまな授業形態に対応できる」点は、授業でのICT活用において重要なポイントであると感じています。

 限られた授業時間の中で、1秒も無駄にせず、先生も児童生徒も学習活動や思考を途切れさせることなく、スムーズに画面を切り替えられることは大きなメリットです。

──「先生の負担を増やさない」工夫として、そのほか開発時に注力した点はありますか?

 スクールタクトの画面では、ボタンの大きさやレイアウト等を調整し、先生が説明しなくても児童生徒が自分で理解できる工夫が施されています。一例として、小学校の低学年では、画面上のボタンやメッセージはひらがなで表示されるようになっています。汎用的なクラウドツールは大人が使う前提で開発されており、子供が使うとなると操作が難しい部分もありますが、こうした工夫によって先生は授業へ集中できるようになります。

学びのサイクルを回す「振り返りAI分析」

──2023年10月にβ版として追加された機能「振り返りAI分析」について詳しく教えてください。どのような機能なのでしょうか。

 振り返りAI分析は、児童生徒が入力した「振り返り」を、コードタクトが独自に開発したAIが客観的かつリアルタイムに、「事実」「感想」「考察/要因」「考察/仮説」「結論」の5観点に分類する機能です。コルブの「経験学習」や、ギブスの「リフレクティブサイクル」のモデルをベースに、弊社の研究チームが考案したシステムです。

振り返りAI分析 5つの観点
振り返りAI分析 5つの観点

 開発の背景としては、児童生徒が授業の終わりに書く振り返りが「授業の感想」にとどまりがちで、先生も振り返りを次の学びにつなげたいと思っているものの、記述内容の分析やフィードバックに手が回りきらず、書かせて終わりになってしまっているという現状がありました。そこで「児童生徒自身が自分の学びをしっかりと言語化し、その振り返りのサイクルを回すことができるようになると、よりよい学びにつながるのではないか」という発想のもと、振り返りAI分析の開発が始まりました。

 OECDの「Education2030プロジェクト」でも、「AAR(Anticipation、Action、Reflection:見通し、行動、振り返り)」のサイクルを回していくことが学習効果を高めると示されており、必然的に「振り返り」に着目する流れになってきたと考えています。

──振り返りの必要性は感じていても先生の負担が大きく、学校現場ではなかなか実現できていなかったということですね。

 その通りです。私も教員時代は、毎日100冊近くのノートの回収と評価に追われていました。現場としては、クラウドツールで配布・回収する手間が省けるだけでも助かるものですが、それらがさらにAI分析によって記述内容の見取りもしやすくなります。先生の負担もかなり軽減されるのではないでしょうか。

──「振り返りの5観点」についてもう少し詳しく教えてください。どのような形で、児童生徒に5観点を提示するのでしょうか。

 児童生徒が書いた振り返りの文章に対し、下線で5観点のタグが付けられます。「事実」「感想」「考察/要因」「考察/仮説」「結論」の5観点は、先生と児童生徒の画面で同じ言葉を使って表示されます。5観点を児童生徒向けにわかりやすい表現に変えることも検討しましたが、最終的にはそれぞれの観点に補足説明を入れる形にしました。また、それぞれの観点では「感性的」「理性的」、どちらの傾向が強いかも確認することができます。

振り返りAI分析画面のイメージ
振り返りAI分析画面のイメージ

 先生と児童生徒の画面の機能や表現に大きな差をつけなかったのは、先生の画面を電子黒板などで映す際にわかりやすくするためです。また、自分が書いた文章が振り返りの5観点でタグ付けされることによって、「こんな文章を書くと『感想』になってしまうんだな」と、児童生徒自身で振り返りの観点を学んでほしいという思いも込めています。

振り返りの分析を活用し、授業改善や評価に役立てる

──この振り返りの結果から、先生はどのように児童生徒をサポートすればよいでしょうか。

 振り返りAI分析によって5観点に分類されているので、「ここに着目してほしい」といったポイントを絞って児童生徒にフィードバックができるようになります。

 もっとも重要なのは、振り返りを次の学びにつなげることです。例えば、「楽しかった」などの端的な感想のみで振り返りが終わっている児童生徒に対しては、「自分が感じたものをもとに、どんなことがわかったのか、もう少し自分で表現できるといいね」といった声かけをします。すると、次の授業では学んだ内容をもとに「○○がわかった」と、少し具体的に書けるようになります。そのうえでさらに「わかったのはどうしてなのか、その理由が書けるといいね」と声がけをします。直接的な「こう書きなさい」という指導ではなく、最初は先生の声がけで振り返りの本質に向かうための「足場」を作っていき、慣れてきたら、その足場を外していく指導がよいのではと思います。

分析の結果を見ることで、児童生徒は自ら気づき学んでいく

──振り返りAI分析を使っている学校や先生からは、どのような反響がありましたか。

 振り返りAI分析では児童生徒自身も結果を見ることができるので、例えば「どのように書けば『考察』や『結論』の観点になるんだろう?」と考えつつ、友だちの振り返り分析を見ることで「こんなふうに書けばいいのか」と学ぶことができます。また、従来は先生が書き方などを指導していた場面でも、児童生徒同士が分析結果を見ることによって自分たちで学び、「学び合い」が進むようになっています。

 また、先生からは「授業改善に取り組みやすくなった」「振り返りAI分析の結果を、評価の判断材料のひとつにできた」といった意見も頂きました。具体的には「今日の授業では授業のねらいに沿った児童生徒の振り返りが少なかったので、次はどのように授業を組み立てていくか」を考える際、クラス全体の振り返りの分析傾向を参考に授業改善を行ったという声がありました。

 なお、どの学年でこの機能がよく使われているのかを調査したところ、小学6年生がもっとも多く、続いて中学校3年生、小学校5年生、中学校1年生、小学校4年生という結果になりました。もともとテキスト入力された文字を分析対象としているため、小学4年生以上が使用することを想定としていましたが、小学校2・3年生でも、先生が工夫して使っているケースもあるようです。

 教科別に見るともっとも活用が多かった教科は国語で、次に数学/算数、理科、社会などの主要教科で活用されていました。「振り返りAI分析があるから使う」というよりも、もともとそういった教科で振り返りをしていて、この分析によって次の学びにつなげようとした行動の結果だと考えています。

──教科学習のほかには、どのようなシーンで振り返りAI分析が活用できそうでしょうか。

 探究学習でも有効だと思います。自分で問いを立てながら学びを進めていく過程で、「今はどのような状況か」「次にどのような学びにしようか」と考えるためのサポートツールとして振り返りAI分析が活用できると期待しています。

 なお現在は、先生の操作によって児童生徒が分析するタイミングを設定していますが、AIに分析されることに対する不安感も減ってきている様子が見られるので、今後は児童生徒が自分の好きなタイミングで分析できる仕様に変更することも検討しています。

振り返りの文字数が増え、言語化もできるように

──振り返りAI分析によって、児童生徒の学びにはどのような効果がもたらされましたか。

 教育現場で行っていた実証では、児童生徒に、まず興味や面白さからスタートし「5観点すべてを網羅できるように書く」といったようにゲーム感覚で取り組む子もいました。それは想定内でしたし、楽しく取り組むことは大事ですが、それだけでは振り返りの本質からはズレてしまいます。

 最初はゲーム感覚で取り組んでいたとしても、振り返りの過程を繰り返していくことで、自分自身で振り返りをメタ認知するようになり、次第に自らの力でどんどん本質の振り返りに近づいていくことができました。

 また、短く書いて終わっていた振り返りから、何を書けばいいのかがわかったことで、より具体的に書けるようになり、文字数が増える傾向も見られました。分量が多ければよいという話ではありませんが、20字前後だったものが、平均すると40字前後の振り返りを書けるようになっています。また、自分が学んだ事実から導き出した要因や仮説を、きちんと言語化できるようになりました。

 一方で、ペーパーテストの点数などの目に見える学力に影響しているかどうかは、さまざまな要因が含まれるため、まだはっきりとした結果は出ていません。どのように効果検証できるかを含めて検討し、次の実証として取り組みたいと考えています。

──発達段階による差などは感じられましたか。

 結論から言うと、差はありませんでした。最初から完璧に振り返りが書けているわけではないものの、児童生徒自身が「振り返りは、このように積み重ねるといいんだ」と学び、経験していくことで、小学生でも論理的に考え、振り返りが行えることが実証を通して感じられました。

──最後に、児童生徒のよりよい学びに向けて、振り返りAI分析の機能も含めたスクールタクトの今後の展望をお聞かせください。

 振り返りAI分析は現状、「アルゴリズムの精度改善」と「生成AI活用の検討」という2つの課題に向き合っています。アルゴリズムについては、現場からのフィードバックをもとに改修を進めています。2024年9月にはテキストの検出精度が最大128%向上し、AIがより人の感覚に近い形で振り返りを分析できるようになりました。来年春にも新たな改修を予定しています。

 また、振り返りAI分析は現在、生成AIではなく機械学習を中心としたAIを使っているのですが、生成AIを取り入れることでよりよい結果が出るのであれば、生成AIで作り直すことも視野に入れる必要があるでしょう。

 振り返りAI分析に関わらず、スクールタクト全体として、今後も調査や実証を通じて、児童生徒がどこまで本物の学びを深められるのか、つまり主体的・対話的で深い学びが実現できているのかについて検証していきます。

 具体的な内容としては、スクールタクトを使った学習効果を、データと質問紙調査のクロス分析によって可視化し、授業改善をしていくサービスの展開も検討しています。

──ありがとうございました。

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提供:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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