【観点2】顕在化した教育課題を把握する
続いて武藤氏は直近で行われた「PISA2022」に関して、ICTを活用した学習への慣れや、教員の多大な尽力もあって全分野の結果がトップ級であったことをねぎらった。そのうえで、教育におけるICT活用にはまだまだ多くの課題があることを示唆した。
例えば、PISA2022の質問紙調査やユニセフの幸福度ランキング、日本財団の継続調査において、日本の子どもたちの自己効力感や個人的幸福度等が世界的に見ても非常に低い傾向を示していることを指摘する。
「日本の教育は大きな成功をおさめているが、その裏で少なくない子どもたちが幸せを感じていない現状がある。この状況を何とかしなければならない。そのために、学校や学級の風土、授業手法などのモードチェンジが必要な部分があり、そこにデジタルがどう貢献できるかという視点で考える必要がある」
関連して、武藤氏は直近の教育関連データを多数引用し、
- 生活保護を必要とする子どもたちの割合は(改善しているが)高止まりしている
- 不登校や通級指導が増え、現場の負担になっている(ただ、今まで見えなかった実情が顕在化したのはよいことである)
- 小学校における暴力行為が増加している
- 虐待が疑われる事案が増えている
- 小学校高学年で授業が「簡単すぎる」「難しすぎる」と答えた児童が約半数を占め、これが中学校では「簡単すぎる」が大幅に減り、「難しすぎる」が3割を超える
- 同じ学年や同じ生まれ月の中にも、算数・国語のスコアや作業記憶・行動抑制などの特性に大きな差がある
- 普段見ているコンテンツも子どもによってさまざまで、動画の視聴速度も人によって異なる
といった実情を紹介。これにより、今までの「みんな一緒に、同じスピードで、同じように学ぶ」ことの「足場」がとても弱くなっていると指摘した。つまり、今までのような一斉指導型の学びだけでは、個々に事情が異なる児童生徒をフォローすることが難しいということだ。
その課題に挑むために重要なのが「GIGAスクール構想」であると武藤氏は断言する。GIGAスクール構想は現行の学習指導要領に遅れてやってきた形ではあるが、「どのように学ぶか」の方向性である「主体的・対話的で深い学び」には、さまざまな個別学習コンテンツやコラボレーションツールが使える、いわゆるGIGA端末が有効だ。そのため「GIGAスクール構想と学習指導要領には圧倒的な親和性」があり、これらを使い倒していくことが、現行のカリキュラムを真に実現する上で大きく寄与するとした。