立命館と今治明徳学園 FC今治高等学校里山校は、「探究学習と大学の学びとの接続に関わる共同研究会」設立に関する協定を、8月9日に締結した。今回の締結により、新しい高大接続と入試の在り方を考える共同研究会を立ち上げ、探究学習で芽生えた問題意識や課題解決への意欲を大学入試を経ても継続させ、卒業後は実際の社会活動にコミットしていくことを後押しする、新しい高大連携プログラムの構築および入試企画の開発を目指す。
社会環境が大きく変化する今、主体的に動き、イノベーションを起こすことのできる多様な人材が求められている。文部科学省もこの潮流を受け、小・中・高校教育における学習指導要領を改訂し、探究学習を導入。探究的な思考力と横断的・総合的な学習能力の育成を目指し、学生の主体的な学びを促進する取り組みが進んでいる。
一方で、高校卒業後の学び、特に大学教育との接続は十分とは言えず、大学入試を経ても探究を継続しながら適切な学部でより専門性を深め、社会で活躍するための基盤を身につけることが課題となっている。
立命館は、2030年へ向けた学園ビジョン「R2030」を掲げ、附属校と連携した一貫教育モデルの構築を推進。附属校での学びと大学入学後の学びを接続し、学生のさらなる成長を支援する取り組みを積極的に進めている。また2022年度より、入学後の学びをより充実させる、AO選抜に向けた独自プログラム「UNITE Program」を実施し、明確なモチベーションをもって学習し、さらなる成長を支援する取り組みを進めている。
2024年4月開校のFC今治高校里山校は「ヒストリック・キャプテンシップ」を持った、リーダーの育成を目指す学校。正解のない世界において、自らの信念に基づいて目標達成にまい進できる人材を育成するため、探究学習をベースとした実学・実践的なカリキュラムを展開している。
今回、両者は共同研究会を設立し、探究学習と大学の学びの接続に関する研究を進めていく。相互の人的・知的資源を活かして連携することにより、顕在化する社会課題・テーマに対して、探究学習や大学側のコンテンツを組み合わせた、新たな高大連携プログラムの開発およびプログラムと連動した入試の開発を目指す。
研究会には民間企業からatama plusとInspire Highも協力し、多様な学習歴のマーケットおよび探究学習の実態をしっかり把握・研究し、AI教材を活用した「UNITE Program」も活用しながら入試企画の開発を目指す。AIや学習データなどを活用した、新しい学習スキームの開発に取り組むことで、社会に新たな価値を創出していく。
協定締結式にて、今治明徳学園 学園長の岡田武史氏は「これからはロールモデルのいない、予測できないVUCAの時代が来る。これまでの『失敗をしないための教育』ではなく、『やってみなくてはわからない中で失敗をしながら学んでいく』教育が必要ではないかと思う」と語った。そのうえで「これまで、高校で身につけるべき能力については考えてきたが、その先にはあまり取り組めていなかった。今回、このような形で共同研究の話を頂けたことは光栄でもあり、願ったりかなったりだ」とコメントした。
立命館の理事長である森島朋三氏は「岡田学園長と同じ問題意識を私も持っていた。子どもたちが自ら考え、探究する力を身につけなければいけない時代が来ている」と述べる。さらに「首都圏一極集中が進む中、地方と地方が手を取り合って活性化していく教育をしなければならない。岡田学園長が地方で取り組みを始めたことにリスペクトを持った」と、同学園の取り組みに共感したことを語った。
現時点で予定されている連携内容は以下の3点。
(1)探究学習で培った課題解決能力や主体性を十分に活かせる高大連携プログラム・プログラム連動入試企画の開発
探究による学びでは大きな問題意識を課題設定し、社会課題解決への使命感・モチベーション・意欲を醸成しながら、課題を解決していくためにどのような学びを展開する必要があるのかを考える。そして、大学・学部の学びを理解し、学びに必要な基礎学力を身につけることができるような高大接続を検討する。
16学部21研究科を持ち、入学者の50%以上を近畿圏外から受け入れている立命館大学、実践や実学中心の新しい教育を取り入れているFC今治高校里山校、さらに、テクノロジーを活用したAI教材を開発するatama plus、探究的な学びを促進し、新学習指導要領に基づいた探究プログラムを全国の小学校・中学校・高等学校の授業に提供するInspire Highのそれぞれの特徴や強みを活かし、高大連携プログラムや入試企画を開発していく。
(2)研究内容社会的還元への協力
探究学習をより発展させるような入試やプログラムを大学高校間で進められるような情報発信を行う。
(3)相互の人材交流
生徒・学生間交流、教員(コーチ)間交流、探究学習支援として大学院生、研究者をFC今治高校里山校へ派遣することなどを検討する。
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