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イベントレポート(STEAM教育)

理工系学部における「女子枠」入試の効果・課題とは? アンケート結果と有識者の声を紹介

「大学入試の「女子枠」がもたらす未来への変化とは?理工系学部の「女子枠」実態調査2024を発表 記者発表会」レポート


 メルカリのCEOである山田進太郎氏が設立した、山田進太郎D&I財団は3月7日、理工系学部における「女子枠」入試を実施する大学を対象としたアンケート結果を公表した。同日に開催された記者発表会には文部科学省・大学・産業界から担当者および有識者が登壇。本稿では調査結果と発表会の模様をあわせてお伝えする。

「女子枠」入試導入大学へのアンケート結果を紹介

 山田進太郎D&I財団は、メルカリがダイバーシティ&インクルージョンの推進に向けて女性エンジニアを採用しようとした際、そもそも世の中に女性エンジニアの数が少ないという問題に直面したことが設立のきっかけとなっている。高校生時点での文理選択における構造的な問題を解決すべく、STEM分野で大学進学を目指す女子生徒対象の奨学助成金事業と、女子生徒のSTEM進学を促進するための支援として、調査・政策提言活動や大学等との連携、イベントの開催、情報発信による、エコシステムの形成に取り組んでいる。これらの取り組みによって、STEM分野での大学入学者における女性比率を、2021年度の18%から2035年度までに28%へ増やすことを目標としている。

 記者発表会では、同法人でマーケティングと政策提言・調査を担当する大洲早生李氏が調査結果の概要を紹介。まず、大洲氏は「『女子枠』入試の導入は、ジェンダーバランスの是正だけでなく、誰もが性別にかかわらず好きなことを追求し、選択できる社会の形成につながる」と、理工系学部の入試で女子枠を設ける意義について説明した。

公益財団法人山田進太郎D&I財団 マーケティング/政策提言・調査 大洲早生李氏
公益財団法人山田進太郎D&I財団 マーケティング/政策提言・調査 大洲早生李氏

 今回の調査は、女子枠入試が大学教育にもたらす影響を包括的かつ客観的に捉え、それを社会に正しく伝えることを目的として実施されたもの。現在、理工系学部で女子枠入試を実施している大学は全国で40校あり、定員は約700名。それら40大学を調査対象とし、そのうち以下の24大学から回答があった。

 愛知工科大学/大分大学/大阪工業大学/神奈川工科大学/金沢大学/北見工業大学/熊本大学/高知工科大学/山陽小野田市立山口東京理科大学/芝浦工業大学/島根大学/大同大学/電気通信大学/東京工業大学/東京理科大学/東北工業大学/富山大学/名古屋大学/新潟工科大学/人間環境大学/兵庫県立大学(工学部)/福井工業大学/山梨大学/宮崎大学

 調査はインターネット調査と郵送調査を併用し、一部大学へは聞き取り調査も行った。調査時期は1月4日~2月8日(聞き取り調査は2月29日まで)。

 調査に回答した大学のうち、2020年度以前に導入したのは3校(12.5%)、2023年度以降に導入したのは21校(87.5%)となった。背景には、2022年6月の文部科学省通知「令和5年度大学入学者選抜実施要項」において、「多様な背景を持った者を対象とする選抜」の工夫が奨励され、その中で特に「理工系分野における女子」への言及が注目されたことがある。この結果、多くの大学において女子枠入試を導入する動きが急速に広がり、アンケートの回答データでも2023年度以降に女子枠を導入する大学が急増している。

女子枠入試の導入時期
女子枠入試の導入時期

 大学が女子枠入試を導入する際に最も期待していた効果は、学部の多様性と活性化(87.5%)、優秀な女子学生の獲得(83.3%)、学部のジェンダーバランス改善(79.2%)の順で多かった。一方、入学した女子学生にとって学びやすい環境(ハード・ソフト面)や入学後のサポートに関する期待は3割程度で、副次的効果としての期待にとどまった。

導入する際に期待していた効果
導入する際に期待していた効果

 2024年度女子枠入試の応募状況において、非公開等の5大学を除いた19大学のうち、定員を上回る応募、あるいは同数程度だった大学は12校で、定員を下回った大学は7校だった。定員を下回った大学はすべて2024年度入試からの導入となっており、高校訪問やパンフレットによる周知といった広報活動の不足や、女子枠における定員数の問題なども原因と考えられる。

2024年度女子枠入試の応募状況について
2024年度女子枠入試の応募状況について

 2020年度入試以前からの導入大学では、2016年度入試の導入から8年で10%だった工学部の女子学生比率が15%となったほか、卒業後、約半数の女子が大学院に進学し、意欲的な女子学生が研究面でも貢献するなど、具体的な成果が出ている。

 一方、2023年度以降の導入大学では、具体的な成果はまだ顕在化していない大学が多いものの、当初の期待通り優秀な女子学生の獲得には成功したため、2025年度からは女子枠入試の対象となる学科・専攻を拡充し、女子枠の増加を計画している大学もある。

 また、女子枠入試導入にあたって、大学内外からの否定的なコメント等があった大学は、45.5%と約半数を占めた。偏見や逆差別への対処として、制度の目的や必要性を社会に明確に発信し、女子枠入学者のスティグマ化を防ぐ対策が必要だと考えられる。そのほか、導入したばかりの大学においては認知不足や志願者不足に対処するために、積極的かつ効果的な広報活動が不可欠との回答があった。

 さらに、入学後のフォローアップにも課題があり、特に学力試験がない場合は、入学後の数学・物理の補講や専門教育導入授業の実施等、学力面でのフォローアップが必要となるケースがあったほか、女子トイレの増設やロッカールームの設置等施設の充実を課題とする回答もあった。

 なお、アンケートに回答したすべての大学が、入試での女子枠を来年以降も継続すると回答している。

来年以降の継続意向
来年以降の継続意向

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文科省・大学・産業界それぞれの視点から、女子枠入試を考える

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この記事の著者

森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

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