領域を超えた対話で未来を考える
イベントの冒頭で、みんなのコード代表理事の利根川裕太氏は、会場に集まった120名以上の参加者に問いかけ、学校、行政、大学、民間企業、NPOなどさまざまな立場の参加者が集っていることを確認した。領域を超えた対話で新しい価値が生まれることを期待し、「今日はぜひ10年後など、長いスパンのことを考えていただきたいと思います」と呼びかけた。
利根川氏は最近参加したコンピューターサイエンス教育の国際カンファレンス「CSEdCon」で、「日本はGIGAスクール構想で1人1台のデバイスとインターネットが行き渡り、世界的に非常に進んでいる」と実感したそうだ。また、教育におけるAIと、情報分野におけるジェンダーギャップは国際的に共通の話題だったという。これらのキーワードを踏まえて、第1部のトークセッションに入った。
トークセッションは、文部科学省での経歴が長く、プログラミング教育の導入期をよく知る、文化庁 次長の合田哲雄氏と、AI技術の研究開発とソリューション提供を行う、株式会社PKSHA Technology 代表取締役の上野山勝也氏を迎えて行われた。
AIで社会はどのように変わるのか
まず上野山氏が現在のAIの状況を、教育関係者にわかりやすく説明した。上野山氏によると、この1年に起きたAIの技術的な変化は、ここ10年で一番激しく、それまでの9年間に起きた変化よりも大きく「非連続」なものだという。
この変化を象徴するのが生成AI「ChatGPT」の存在だ。上野山氏はChatGPTの技術について「すごくシンプルかつ直感的に言うと、インターネット上にある世界中の人間の知恵がいっぱい詰まった文章を、うまく人の脳の形のようにぎゅっとすることで小さなモデルになり、そこに言葉で話しかけると、言葉を返してくる。それがとても人っぽく見える」という状態だと説明した。「うまく使えば、何かを学んだり気づきを得たりすることにおいてはパワフルです」と上野山氏。
具体例として、ChatGPTでテキストだけでなく英語の音声会話ができるようになったことを紹介し、スマートフォンでAIを相手に、英語で自由な会話する様子をデモンストレーションした。いわば即興の英会話ロールプレイだ。言葉をキャッチボールする過程で英語の学びが深まる感覚は、これまでにはない体験だという。会話を振り返ってよりよい英語表現のアドバイスを受けることも可能だ。