週7勤務が当たり前、「保護者クラブ」への移行前における働き方の課題
──土日の部活動を「保護者クラブ」へ移行する前に、部活動にどのような課題がありましたか?
辻氏(以下敬称略):一番は教員の負担の大きさです。私は以前、自分の専門であるサッカー部を担当していたので、当時はほぼ毎日部活動を見ていても苦ではありませんでした。しかし、そうではない教員も多いのです。
専門ではない部活動を見たり、学校の都合で毎年担当部活動を替えられたりと、かなりストレスを感じている教員が多かったように感じます。また、かつては土日の部活動は当たり前で、週7日勤務が常態化していました。苦しくても「子どものためだから土日勤務も当然でしょ」という雰囲気が岐阜市だけでなく、全国的にあったと思います。
このような教員の負担の大きさを感じたのが出発点でした。
──土日の部活動の運営を「保護者クラブ」へ移行した決め手を教えてください。
辻:私は令和3年4月に本校に着任しました。その当時、ある教員が「校長先生、知っていますか。国が令和5年から部活動の地域移行を進めていくんです」と教えてくれました。私は前任校が小学校だったため、このとき初めて「部活動地域移行」について知り、取り組みを進めていこうと思いました。
当時、本校には14の部活動があり、そのうち11の部活動には既に「保護者クラブ」ができていました。土曜日は教員が指導をして日曜日は「保護者クラブ」による運営という仕組みがあったので、これをさらに活用しようと考えました。
──土日の部活動を「保護者クラブ」に移行するまでに、どのようなプロセスを経ましたか。
辻:まずは部活動の保護者代表者会議で、「保護者クラブ」がない部活動に設置を依頼しました。それと併せて国の「部活動地域移行」についても説明し、今後は土日両日とも「保護者クラブ」による部活動運営とすることを伝えました。
また、「保護者クラブ」に運営を任せても、各部活動に専門的指導ができる大人が複数名いなければ長期的な活動は難しいため、各部に複数名の社会人指導者を確保してもらうことも依頼しました。
──保護者から反対の声は上がりませんでしたか。
辻:正直、反対の声はありました。これまで日曜日の週1回だけだった「保護者クラブ」による部活動運営が、土曜日も追加されて2日間になるということで「保護者の負担が増える」「なぜ先生は土日に来ないんだ」「うちの子どもが在籍している間はやめてほしい」といった意見が出ました。
そこで私は「部活動地域移行」のメリットを文書にまとめて説明しました。例えば顧問が必ずしも専門的な指導ができるわけではないこと、社会人指導者を立てれば子どもたちが専門的な指導を受けられる上に、平日の夜間を含むより多くの時間に活動ができることなどを伝えました。中でも特に「部活動をやりたい子がやれる環境を作れる」という点が一番のメリットだと考えたので、強調しました。