自分たちの調べ学習のノウハウを、後輩に引き継ぐ
2022年度に6年生を担任していた井戸氏は、さまざまなメディアのメリット・デメリットを調べて分析していく実践として、下級生に向けた調べ学習のデジタルガイドブックを作成することにした。D-projectのメンバーにアドバイスをもらいながら、「インターネット」「本」「ブリタニカ・スクールエディション」の3つのメディアを活用する、6年生の卒業制作「亀川小学校 調べ方ガイドをつくろう」として、授業を設計した。
「授業は全部で8時間です。最初の1時間は、教頭先生から子どもたちにガイドブック作りの提案をしていただきました。本校は和歌山県で唯一の学校情報化優良校に登録されたことから、『ぜひ、自分たちの調べ方を後輩に引き継いでほしい』と子どもたちに依頼する形をとりました」(井戸氏)
次の5時間で、これまで自分たちが行ってきた調べ学習の経験を踏まえ、それぞれのメディアでどのように調べるとよいかを分析し、後輩に向けてまとめていった。その際、工夫したのがグループ分けだ。教科書・辞書などを含む紙の「本」「インターネット」「ブリタニカ・スクールエディション」の3グループに分け、さらに担当する学年ごとに「低学年」「中学年」「高学年」と、9つのグループを作成した。
まずは調べ方ごとに分けた3グループで、それぞれのメリットとデメリットをデジタル付箋に書き、意見を出し合った。次にそれらの意見をまとめ、今度は学年ごとのグループで、それぞれの学年に向いた方法を話し合っていった。
「9つのグループに分かれて分析し、最終的に1つのガイドブックを作っていく形を採用しました。ジグソー法に似た方法ですが、このグループ分けによって非常に深い分析をすることができました」と、井戸氏は振り返る。
各メディアの特性を俯瞰的にとらえることが重要
付箋を活用して意見を出す方法は、井戸氏のこれまでの授業でも行っていた。そのため児童は慣れており、活発に意見が出たという。授業の様子について、井戸氏は「例えば『本』のグループは、ほかのグループよりメリット・デメリットを出すことが難しいだろうと思いましたが、私が考えている以上に、子どもたちはたくさんの意見を出してくれました」と語る。
「子どもたちには、私が課題として感じていた『とりあえずインターネットで調べてしまう』のではなく、『なぜインターネットを使うのか』ということを常に考えながら、調べ学習をしてほしいと考えています。複数のメディアを用意して、各メディアの特性を俯瞰的にとらえることは、私の中で最も重要なポイントでした」(井戸氏)
なお、児童から出た意見から有用なものを選び、ルーブリックにしていく部分については、井戸氏が声がけし、サポートを行った。
こうして丁寧に分析を行った上で各学年の担当ごとにページを作成し、最終的に1冊のデジタルガイドブック「亀川小学校 調べ方ガイド」が完成した。子どもらしいアイデアや工夫にあふれ、動画を入れたり、4コマ漫画風になっていたりと、下級生にわかりやすく伝えたいという子どもたちの思いが詰まっている。
「ガイドブック作りでは、特に低学年グループが『どこまでできるのか』という線引きに苦労していました。この部分は私自身一番悩み、テコ入れした活動です。他者のレベルを想定するというのは、難易度が高い学習だったと思います」と、井戸氏は振り返る。
低学年向けのグループがおすすめしているのが、ブリタニカ・スクールエディションの活用だ。子どもたちからは「クリックだけで操作できるから、タイピングができない1年生にもいい」「教科書のように使える」「インターネットに載っていることは難しいけれど、ブリタニカはふりがなもふってあって、わかりやすい」といった意見が挙がった。
「学年が下がるほどブリタニカ・スクールエディションが有効だという意見が多かったですね。まずはインターネットで調べて、最終的にブリタニカで確かな情報かどうかを確かめる、という結論になりました」