LX DESIGN(エルエックス デザイン)は、熊本市教育委員会と外部人材活用に関する連携協定を締結したことを、6月5日に発表した。同社が提供する、教育現場に特化した外部人材マッチングサービス「複業先生」を同市内の学校で活用することで、教員だけでは対応が難しかった外国籍の児童生徒への支援など、多様化する児童生徒への対応や教職員の支援を行う。同日、官民共創HUB(東京都港区)で行われた連携協定締結式の後には「熊本市と日本のこれからの教育」をテーマに、同社の代表取締役である金谷智氏と熊本市教育長の遠藤洋路氏によるトークセッションが開催された。
近年、学習指導要領の改訂を期に、プログラミング教育やキャリア教育、外国語教育などの新たなカリキュラムが増えた一方で、学校教育を担う教員不足や教員の労働環境の改善などが深刻な課題となっている。
熊本市も、各地域における人口差などさまざまな課題を抱えており、学校では子どもたちが「自分の住む地域の課題」を解決するための取り組みを行っている。また熊本県内には台湾の大手半導体メーカーの大規模な工場が建設中で、それに伴い熊本市にも多くの台湾出身の児童生徒や保護者の移住が予想される。遠藤氏は「我々も英語であればある程度対応できる。しかしそれ以外の言語となると、対応できる人材が熊本市内には限られている。相手国の文化や背景を理解した上で、外国籍の児童生徒とその家族を支援したい」と述べ、外部人材の必要性を強調した。
同市教育委員会は、2020年4月に新型コロナウイルス感染拡大で多くの学校が一斉休校となった際、2週間ほどで市内すべての小中学校でオンライン授業を実現したことで著名な自治体だ。遠藤氏は、ICT教育や教員の働き方改革などの教員現場における課題に一早く注目し、解決に向けて最前線に立って取り組んでいる。
LX DESIGNは、教育現場のさまざまな課題を総合的に解決するサービスを展開している。同社が提供する「複業先生」は、学校現場が、教育にかかわりたい多様な民間人材に授業を依頼できる外部人材活用サービス。教員だけでは手が回りづらかったキャリア教育や探究学習・総合的な学習、プログラミング、グローバル、IT、起業教育、金融教育、性教育などの各領域において、民間人材の知見やネットワークを手軽に活用できる。これにより、児童生徒は社会とつながりながら学びを深めることが可能となる。
今回、熊本市におけるICT教育の充実や教員の働き方改革といった教育現場における課題解決を目指し、同協定の締結に至った。
連携協定の内容は以下の通り。
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外部人材(複業先生)活用による教員・学習支援に関すること
- 外国籍児童生徒の通訳
- 探究的な学習、キャリア教育、創造性教育、その他
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教員の働き方改革に関すること
- 臨時的任用教職員・非常勤講師のマッチング
- 教育活動アシスタントのマッチング
- 教職員の業務分析、管理職・教員研修に関すること
- コンテンツ・ソフトウェアサービスの開発・運用検証等に関すること
- その他双方が協議して必要と認める事業に関すること
トークセッションにて、遠藤氏は「AIの普及をはじめ、現代の子どもたちに求められているものは山ほどある。それを学校現場や教育委員会のみで対応していくことは不可能になってくる。今後は、学校と社会が協力して子どもたちを育てていくことが重要。そのために熊本市教育委員会をはじめとする日本の自治体や教育現場は外部との連携を強化し、子どもたちが社会のあらゆる人と共創していく力を身に付けられる教育を提供したい」と、今後の教育の在り方を述べ、連携協定への期待感を表した。
また、遠藤氏は「外部人材の活用」という新たな取り組みを行うことに関して「前例がないからこそやってみようと思う。これからも良いと思ったことには前向きに取り組んでいきたい」と語った。
金谷氏は「『複業先生』というサービスは、学校現場と社会をすぐにつなげられるということに価値がある。熊本市との協定締結から、教員の孤独を解消し、日本教育全体の変革につなげていきたい」と、今後の意気込みを語った。その上で「私たちは学校を媒介に地域の課題を解決しようとしている。地域や学校を支援する『複業先生』にとっても『最高の機会』、そして子どもたちにとっても『最高の学びの機会』となるよう取り組んでいきたい」と述べた。
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