オンライン授業は、教室授業の代替えではない?
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発出により、学校へ登校できない状況下で取り沙汰されたのが「オンライン授業」だったのは記憶に新しいかと思います。
「学校に登校できないから教室授業の代わりにオンライン授業」──当時はその印象が強く、オンライン授業を実施した先生の中には「今までの授業と同じスタンスで実施すると授業として成り立たない……やっぱり授業は対面だな」と感じた方も多いのではないでしょうか。このように感じてしまうのは、教室での対面授業とは異なり、オンライン特有の環境や特徴があるためです。
緊急時には、教室授業のあり方のままでオンライン授業へ切り替えざるを得ないでしょう。しかし少し落ち着いた今、あらためて「オンライン授業」という新しい授業スタイルの特徴は何か、その特徴を活かしてどのような授業を目指し、どのようなことがかなうのかを考えていけたらと思います。
「教室授業」と「オンライン授業」は何が違うのか?
まずは「教室授業」と「オンライン授業」の違いとは何か、オンライン授業の特徴を4つお伝えします。
特徴(1):インターネット環境さえあれば、どこからでも授業ができる・受けられる
1番の大きな特徴は、授業を実施すること・受けることに対する「場所の制限がない」ことです。家から授業を受けられるだけでなく、他校や世界中の先生の授業を受けたり、働く人の声として現場の職人さんとオンラインでつないで話を聞けたりなど、場所の制限がなくなることで授業の幅を大きく広げることができます。
特徴(2):発言者は常にひとり
オンラインでは同時に複数人が話すと聞き取りづらいため、発言者は常にひとりです。そのため、教室授業との違いとして以下のようなことが考えられます。
- 意識しない限り、ほとんどの児童生徒が話さずに授業が終わる可能性が高い。
- 発言の際にみんなが聞いている環境=プレッシャーになりやすい(聞いてくれているか、間違っていないか、と心配になる)。
- 発言者に必然と耳を傾ける環境のため、発言をしっかり聞いてもらいやすい。
- 隣同士での会話がないため、クラスメイトの自然発生的な助け合いが起こりにくい。
特徴(3):児童生徒の雰囲気がわかりにくい
画面の表示をタイル表示にすると、複数人の児童生徒の顔を一気に見ることはできますが、教室授業とは違い空気感や画面に映っている部分以外がわからないため、実際のところはどうなのかをつかみにくい側面があります。例えば児童生徒が画面(カメラ)を見ていても、実は授業とは関係ない資料を見ている場合に注意が難しいといった問題があるかもしれません。
特徴(4):授業を受ける環境によっては誘惑がある
例えば自宅から参加の場合、漫画がそばにある・テレビがついている・お菓子がすぐに食べられるなど、教室に比べて誘惑が多い可能性があります。また、誰にも見られていない環境では、児童生徒が授業に対して主体的になれないと緊張感や集中力が途切れやすく、飽きてしまうということも招きかねません。
このように、オンライン授業は一見するとデメリットに感じる「ひとりだけれど誘惑がある」環境ではありますが、その特徴を活かして「自主自律を育てられる」環境だとも言えるのではないでしょうか。
予測不可能な変動のある社会が続くとされる中、子どものときから自主自律を育む重要性はますます高まってきています。「誰かに見られているから」「注意されるから」など、外部から強制する力があるから勉強できるのではなく、自らの意志で勉強に向かえるようになるというのも自主自律のひとつではないでしょうか。オンライン授業はこれらの特徴がある授業スタイルだと認識した上で、どのように進めるべきかを考えていきます。