若い世代の教員ほど中学校の部活動に負担を感じている
今回の会場となった板橋区立上板橋第二中学校は2022年4月に新校舎へ移転し、各教科の教室に生徒が移動して授業を受ける「教科センター方式」を採用している。校舎には「英語」「数学」といったエリアごとに教科教室と教科に関わる展示などができる教科メディアが設置されているほか、図書室の機能を持つメディアセンターを備えているのが特徴だ。
板橋区は年3回「身近な教育委員会」開催しており、今回は令和4年度の2回目となる。教育委員会の会議と保護者懇談会の二部形式で構成され、板橋区教育委員会の教育長である中川修一氏と4名の委員のほか、板橋区教育委員会事務局から計11名、板橋区立小中学校の管理職や保護者などが参加した。第一部では、板橋区教育委員会から「板橋区立学校における働き方改革」についての報告と、小中学校における働き方改革への取り組み状況が発表された。
まず、板橋区教育委員会事務局 教育総務課長の諸橋達昭氏が「区立学校における働き方改革」として、教員の役割における諸外国との違いや、同区の教員へのアンケート調査結果、同区における働き方改革の取り組みを報告した。
国立教育政策研究所の調査によると、日本はアメリカやフランス、中国などの諸外国と比較して「学校で一般的に行われている業務」を教員が担当することが多いという。具体的には、児童生徒の指導以外にあたる「学校運営」や「外部対応」の部分だ。
また、OECDが定期的に行っている国際教員指導環境調査「TALIS(Teaching and Learning International Survey)」では、2018年時点で、日本の中学校教員の週あたりの仕事時間は56時間と、2位の48.8時間に大きな差をつけたトップであった。しかし、指導(授業)の時間は平均かそれ以下という結果になっている。
次に、諸橋氏は教育委員会が板橋区の教員に行ったアンケート結果を紹介し「特別な支援が必要な児童生徒への対応」や「学校行事の準備」などを重く感じている教員が多いという、現場の実態を明らかにした。また、小学校と中学校との違いでは、授業準備や会議準備に関しては小学校の教員のほうが負担感が強く、中学校の教員は部活動指導に負担を感じていることがわかった。その上で、諸橋氏は「中学校は特に若い先生ほど厳しさを感じており、先生の責任も重くなっている」と述べた。
続いて、板橋区の取り組みである、学校支援人材と学校支援ツールが紹介された。児童生徒の指導に関わる支援人材としては、学力向上専門員やICT支援員をはじめ、多様な分野に特化した支援員や指導員などを学校現場に投入しているという。諸橋氏は「教育をどうするかを考えるために、限りある財源で持続可能性を検討し『学校は、先生は、何をどこまでするべきか』について、一度立ち止まって熟議をしてほしい」と、参加者に呼びかけた。