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プログラミング教育の講師インタビュー

2030年代の情報教育のあり方とは? 次期学習指導要領で変えるべきポイントを利根川裕太氏に聞く

みんなのコード「2030年代の情報教育のあり方についての提言」を深掘り

 新学習指導要領がスタートし、小学校・中学校・高校すべての段階でプログラミング・情報教育が必修化・拡充された。しかし、プログラミング教育の普及に努めるNPO法人みんなのコードは「情報活用能力の体系的な育成についてはまだ課題が多い」として、2030年以降の学習指導要領改訂を見据えた提言を4月20日に発表した。この提言では、学習指導要領において、情報教育のあり方をより探究していく必要があると考え、次期学習指導要領に「体系的な情報活用能力を育成する枠組み」を盛り込むことを目指し、教科再編の具体案が示されている。本稿では、みんなのコードの代表理事である利根川裕太氏に、提言の意図と、そもそもなぜ情報教育が重要なのか、その理由について話を伺った。

特定非営利活動法人みんなのコード 代表理事 利根川裕太氏
特定非営利活動法人みんなのコード 代表理事 利根川裕太氏

「プログラミング教育は必修化された」が……

──2020年度に小学校でプログラミング教育が必修化され、その翌年の2021年度には中学校における「技術・家庭」でのプログラミング教育の拡充、そして2022年度には高等学校で「情報I」が必履修科目となりました。小学校から高校まで、すべての段階でプログラミング・情報教育が必修化・拡充されたことになりますが、実際の学校現場における実施状況を教えていただけますか。

 みんなのコードは昨年末、日本国内の学校の教員と、児童生徒およびその保護者を対象としたプログラミング教育の実態調査結果を発表しました。結果を見ると、小学校では2021年7月の調査時点で半数弱の先生がすでに実施済み、約3分の1の方が2021年度内に実施予定と回答していました。つまり、合わせて85%くらいの方が「実施済み」もしくは「実施予定」ということで、まったくやらない方は少ないのです。「実施しない」と回答した方の中には低学年を受け持っているなどの理由で、なかなか実施できないケースもあるようです。

小学校教員を対象とした「プログラミング教育の実施率」調査 ※出典:みんなのコード「プログラミング教育実態調査」(2021年)
小学校教員を対象とした「プログラミング教育の実施率」調査 ※出典:みんなのコード「プログラミング教育実態調査」(2021年)
──低学年で実施しづらい理由は、多くのケースが『小学校プログラミング教育の手引』のA分類[※1]で示されている、小学5・6年生の算数・理科の単元で行われているからでしょうか。

 そうですね。肌感覚ですが、例えば小学5年生の算数「円と正多角形」の中で1時間だけ体験するケースがほとんどといった印象です。本当はそれだけにとどまらず、さまざまな学びにプログラミングを取り入れていただきたいのですが、現状ではそこに至っている学校現場は少ないようです。

 子どもを対象とした調査でも、高学年の児童の6割程度が「やったことがある」と回答している一方で、低学年では約8割の児童が「やったことがない」と答えています。プログラミング教育は始まったものの、小学校全体に浸透しているとは言えない状況です。

子ども・保護者を対象とした「プログラミング教育の実施率」調査 ※出典:みんなのコード「プログラミング教育実態調査」(2021年)
子ども・保護者を対象とした「プログラミング教育の実施率」調査 ※出典:みんなのコード「プログラミング教育実態調査」(2021年)

[※1]文部科学省『小学校プログラミング教育の手引(第三版)』で示されている「小学校段階のプログラミングに関する学習活動の分類」のうち、「学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの」がA分類となる。A分類では具体的な単元名もいくつか記載されている。

──このような現状があるからこそ、今回の提言を発表されたのでしょうか。

 私はどちらかと言うと、小学校に限らず中学校の「技術・家庭」や高校の「情報」でも同様に「現状がこうだから未来はこうなるよね」と考えてはいけないと思っていて、今回の提言も「未来」を軸につくりました。学校現場はそれぞれ事情を抱えていますし、その中で先生方が奮闘されていることも間違いありません。でも、客観的に世界を見渡した際に「このままではダメなんじゃないか。未来をもっと明るくするにはどうすればいいのか」といったことを考えるのは重要で、提言にはそういったメッセージを込めています。

──情報教育を充実させて「よりよい未来を創る」ということですね。

 ある政府の会議でデータサイエンティストの安宅和人さんとご一緒した際のプレゼンテーションが印象的で、「未来は予測するのではなく、夢と技術とデザインをかけあわせて創るもの。」というメッセージに強く共感しました。現状の延長線上から考えるのではなく、このメッセージを情報教育に取り入れたい。その発想が提言の根底にあります。

未来を創る方程式 ※出典:みんなのコード「2030年代の情報教育のあり方についての提言」(2022年)
未来を創る方程式 ※出典:みんなのコード「2030年代の情報教育のあり方についての提言」(2022年)

 学習指導要領を見ていただければわかるのですが、「夢・技術・デザイン」は、高校で始まった教科「情報I」の要素と非常に近いんです。まず、夢は単元「問題の発見と解決」につながると言えます。そして「技術」では「コンピュータとプログラミング」と「ネットワークとデータの活用」が単元として挙げられています。「デザイン」についても「コミュニケーションと情報デザイン」があり、それぞれの単元が、夢・技術・デザインに対応しています。また、夢・技術・デザイン、どれかひとつだけではダメで、組み合わせて初めて未来が形になる点も、情報教育と非常に近い構造なんです。

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情報教育を充実させるには「現場の先生任せ」ではいけない

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この記事の著者

森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

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