ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所と、東京大学社会科学研究所は、2014年に立ち上げた共同研究プロジェクト(親子パネル調査)において、同一の親子(小学1年生から高校3年生、約2万1000組)を対象に、2015年以降7年間にわたり複数の調査を実施し、12学年の親子の意識・行動の変化を明らかにする「子どもの生活と学び」の2021年の分析結果を4月20日に発表した。
今回の発表では、2019年、2020年、2021年の3時点を取り上げて、新型コロナ禍における子どもの生活と学び、それを取り巻く環境の変化について確認している。
分析結果によれば、「勉強しようという気持ちがわかない」に対する肯定率(とてもあてはまる+まああてはまる)は、2019年から21年にかけて増加し、「あてはまる」という子どもが半数を超えた。
「勉強しようという気持ちがわかない」の肯定率(小学4年生から高校3年生までの全体の数値)は、2019年が45.1%、2020年が50.7%、2021年が54.3%と、3年間で9.2ポイント上昇している。
学校段階別では、学校段階が上がるほど数値が高まり、小学生は約4割、中学・高校生は約6割が「勉強しようという気持ちがわかない」を肯定しており、3年間の変化では小学4年生~6年生が10.1ポイント増、中学生が10.9ポイント増、高校生が6.7ポイント増と、いずれの学校段階でも増加した。
学年別では、中学1年生、中学2年生、高校1年生で増加幅が大きい傾向がみられる一方、小学6年生、中学3年生、高校2年生、高校3年生では増加幅が比較的小さい。入学から間もない学年で学習意欲の低下が著しく、小学6年生→中学1年生で14.8ポイント増、中学3年生→高校1年生で6.0ポイント増と、大きな変化がみられる。
個人の学習意欲の変化をみても、学年が上がるとともに学習意欲は低下する傾向があることから、「意欲向上群」に比べて「意欲低下群」の方が多い。一方で、すべての子どもが意欲を低下させていくわけではなく、「意欲向上群」が1割程度存在する。また、意欲が変わらない子どもは約6割ながら、そのなかに意欲を高いまま維持し続ける子どもが3割程度存在することがわかっている。
意欲の変化と関連する要因を分析すると、2019年~2021年の変化で「上手な勉強の仕方」がわかるようになったグループ(「わかるようになった」群)は、わかると感じられなくなったグループ(「わからなくなった」群)と比較して、意欲向上群の出現率が高く、意欲低下群の出現率が低いことが明らかになった。
同じく、「授業の楽しさ」について「楽しくなった」群と「楽しくなくなった」群、「自分の進路(将来)」について深く「考えるようになった」群と「考えなくなった」群の間にも、意欲向上群、意欲低下群の出現率に差がみられる。
とりわけ、上手な勉強の仕方について理解できるようになること、授業が楽しいと感じられるようになることが、意欲の向上と強く関連していることがわかる。
学校における授業形態では、「パソコンやタブレットを使う」が大きく伸びたほか、「グループで調べたり考えたりする」「自分(自分たち)で決めたテーマについて調べる」「調べたり考えたりしたことを発表する」「観察・実験や調査などで考えを確かめる」「調べたことをグラフや表にまとめる」といった探究的な活動が、2019年から2020年にかけていったん落ち込んだものの、2021年には回復した。ただし、授業の変化と意欲の変化に、明確な関連は認められない。
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