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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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EdTechZineオンラインセミナー

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キーパーソンインタビュー

教科横断の学びや意欲向上にもつながる、学校教育での「スポーツ×データ」による効能とは

 テクノロジーの進化により、あらゆることがデータ化できるようになった現在、教育におけるデータの活用も日々研究されている。最近では学習データだけでなく、部活におけるトレーニング効果を分析したり、定期的に運動能力を計測しそのデータを比較したりするなど、スポーツ分野とデータを組み合わせることにより、教育的効果や子どもたちの意欲を上昇させる取り組みも注目されている。本稿では、GPSデータをスポーツをはじめとした多領域に活用する研究を行う、慶應義塾大学 教授の神武直彦氏と、自治体を挙げてスポーツ×データの取り組みを推進する、さいたま市教育委員会 教育長の細田眞由美氏のお2人に話を伺った。

プロのスポーツ選手も活用するGPSデータ

 スポーツにおけるデータ活用として真っ先に思い浮かぶのは、試合等の勝敗データだ。しかし、それだけにとどまらず、現在のスポーツではあらゆるデータを取得し、分析結果に基づいて練習のメニューやスケジュール調整、さらには選手のメンタルコントロールにまで活用されている。特に、アウトドアスポーツにおいて重要な役割を果たすのが、人工衛星による地上の正確な位置や時刻に関するデータ、すなわち「GPSデータ」だ。

 JAXAで長らくロケットや国際宇宙ステーション、人工衛星の開発に携わってきた神武直彦氏は、現在、慶應義塾大学でGPSデータをはじめとするさまざまなデータを活用した社会課題の解決などに取り組む傍ら、慶應義塾横浜初等部の部長(校長)も務めている。さらに地域の子どもたちに対しては、スポーツアカデミー「慶應キッズパフォーマンスアカデミー」で、スポーツを通じて成長をサポートする取り組みも行っている。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授/慶應義塾横浜初等部 部長 神武直彦氏
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授/慶應義塾横浜初等部 部長 神武直彦氏
慶應キッズパフォーマンスアカデミーでは、データを用いた定量的・定性的評価を行っている(提供:慶應キッズパフォーマンスアカデミー)
慶應キッズパフォーマンスアカデミーでは、データを用いた定量的・定性的評価を行っている(提供:慶應キッズパフォーマンスアカデミー)

 「多様なデータを収集、分析することで未来を予測し、リスクを把握しながら可能性を見いだす」ことをひとつの研究テーマとしている神武氏は、スポーツにGPSデータを活用している。その例のひとつが、日本代表からプロチームや大学、小学校に至るまでのラグビーチームやスクールのデータを活用したコーチサポートだ。選手は、それぞれがスポーツ用のGPSデバイスを身に着け、運動量をはじめとしたさまざまなデータを練習や試合で計測する。

 「アウトドアスポーツ分野では、プロの選手の多くがGPSデバイスを身に着けて計測を行っている。試合中や練習中の運動量を測ることで、疲労度やケガの予測などがスポーツ科学で解明できるようになった」と、神武氏はGPSデータ活用の意義を語る。

 しかし課題もある。スポーツ用のGPSデバイスは高価で、ラグビー用であれば1台につき数十万円ほどにもなる。神武氏が関わるチームは端末単価を1台1万円にする研究を行い、現在はプロ選手だけでなく、慶應義塾大学のラグビー部員などにもGPSデバイスの活用を展開できるまでになった。

 「地球を周回する測位衛星の数が増え、宇宙側のテクノロジーがリッチになったことにより、地上側のテクノロジーを安価で用意できるようになった。運動距離やスプリント回数、ダッシュの回数、心拍データなどを見ることで、大体どれほどで肉離れのようなケガを引き起こしてしまうかも予測できるようになる。ケガを予防し、戦略の立案・実施にも活用できる」と神武氏は話す。

スポーツデータ活用の効果
スポーツデータ活用の効果

スポーツデータの活用で算数や理科分野の興味も広がる

 前述の通り、これまでGPSデータの活用は一部のプロ選手のためであったが、神武氏は子どもたちのスポーツにもその用途を広げている。2015年からは慶應義塾大学のキャンパスが所在する横浜市港北区と連携し、市内の公立小学校においてGPSデータの活用をスタートした。小学生がGPSデバイスを装着して運動を行い、それらのデータをもとに振り返りを行うという取り組みだ。「学校にデバイスを提供するだけでは活用が難しいため、データを使った考え方のプロセスや観点などもあわせて提供することが重要」と神武氏は説明する。

 具体的には、データを取得して議論する前の準備段階として、子どもたちがこれまで体験してきたスポーツにおける「自分がうまくできたこと・うまくいかなかったこと」などを、問いや対話で引き出していく。その後、実際にそのスポーツを行い、取得したデータと比較してみることで、自分たちがうまくできたと思っていたことが、実際にはできていないケースに気付くことができる。「客観視が難しい小学生でも、データがもたらす気付きによって『なるほど』と納得し、動機付けにつながっていく」と、神武氏はそのメリットを解説した。

横浜市立の小学校での取り組みでは、100個以上のGPSデバイスをビブスに取り付けてデータを取得した(提供:慶應義塾大学)
横浜市立の小学校での取り組みでは、100個以上のGPSデバイスをビブスに取り付けてデータを取得した(提供:慶應義塾大学)

 神武氏は「小学生には『他人と比較をするのではなく過去の自分を越えましょう』と話している。成長期だからこそ、過去の自分を越えるという目標を持つことで動機付けをすることができる。それを繰り返すことで、スポーツに興味を持ったり、今まで自分には役割がないと思っていた子も、自分なりの役割を見つけたりすることができる」と話す。その過程で、テクノロジーや映像、数字に触れることも多くなり、体育だけでなく、理科や算数といった教科においても興味が広がり、より考えを深められる観点が生まれてくるという。

ボールゲームのシーンをドローンで上空から撮影し、振り返りに活用(提供:慶應義塾大学)
ボールゲームのシーンをドローンで上空から撮影し、振り返りに活用(提供:慶應義塾大学)

 ただし留意すべき点として、神武氏は「1回きりのイベントとして行うだけでは、データの価値を知ることはできない。それぞれの人やチームを対象に継続的にデータを取得・分析し、内容を改善していくといったPDCAサイクルを回すことが大切」と指摘する。

 さらに神武氏は「子どもたちが小学校に入学したときに、ボールやユニフォーム、スパイクなどとともに、このGPSセンサーを持つことが当たり前になる時代が来れば、スポーツに大きな変化が起きるはず」と、今後の展望を語る。データの活用はケガを予防し、自分の動きを客観視することができる上に、データを見ることで他者を評価もできるようになり、心の成長にもつながる可能性を秘めているのだという。

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スポーツ分野を加えた「STEAMS」教育に取り組むさいたま市

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

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森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

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