教育現場におけるVR活用の可能性
まず、大阪大学大学院 准教授の福田知弘氏が、自身が手掛けたVR活用の事例を解説。鳥取県の「水木しげるロード」のリニューアル計画における、地域住民に向けたプレゼンテーションの事例を紹介した。
道路の整備状況だけでなく、観光客の導線や滞留を意識した街並み、歩道、メインコンテンツの妖怪キャラクターたちの銅像を、VRゴーグルで疑似体験することができる。模型と異なり、昼や夜の状況も任意に再現できる上、街路樹などの配置を換えるのも簡単だ。
「こうしたVRのリアルタイム性とインタラクティブ性は教育にも向いていると思います」と福田氏は語る。
VRならば、全員で教室以外の空間を共有することが可能だ。個々の生徒のリアルな動作に対して3Dシミュレーションが現実のように反応する。
「単に動画を見るのではなく、疑似的な空間に働きかけることを可能にするVRは、双方向の授業にも役立つはずです」(福田氏)
先端技術やICT活用した授業となると、多くの教員が総合学習の時間での利用を想定しがちだ。しかし福田氏は、基礎学習や一般の教科授業でもVRは使えると考えている。
数学や物理では、動画よりもシミュレーションが可能なVRのほうが理解が進む可能性がある。シミュレーターやシミュレーションソフトを駆使することで、現象を確認するだけでなく、自ら考えて試行錯誤できるからだ。
これからの学校教育では、答えのない問題への取り組みが重要になるといわれている。ならば、課題解決につながる試行錯誤は重要だ。自分たちの考えを試すことは、新しい何かを作り出す力にもつながる。
さらに福田氏は、プレゼンテーションもパワーポイントからVRを利用したものになる可能性を指摘。教育現場での活用例として、リモート会議システムとVRを組み合わせた遠隔授業を挙げた。