図工とスプリンギンの組み合わせ
連載第4~5回で図画工作科にプログラミング教育を取り入れる良さについて「SOZO.Ed」の副代表である山内佑輔先生のインタビューを掲載しました。その中で、取り入れていく良さとは、子どもたちの「表現のスキル」を高められるところではないかとお話しいただきました。
今回は、デジタルデバイスを活用して表現のスキルを高める方法に焦点を当て、学校で実際に教員をされている方にお話を聞いてみたいと思います。ここからは、小学校教諭の松﨑先生にバトンタッチします。松﨑先生、お願いします!
図画工作科×デジタルデバイス
みなさん初めまして、松﨑です。小学校で教員をしています。現在、企業研修のため、しくみデザインに出向中です。どうぞよろしくお願いします。
さて今回のテーマは、図画工作科におけるデジタルデバイスの活用方法です。デジタルを活用すれば、「誰でも・簡単に・楽しく」本格的な絵が描けます。単純な対象であれば誰でも10分ほどで描けてしまいます。先生も子どもたちもこれまでに味わったことのないような、楽しく絵を描きながら学べる方法を紹介します。
絵を描くのは楽しい!
以下の絵は実際にスプリンギンで描いた風景画です。
緻密な線がたくさんあったため15分ほどかかりました。絵を描く特技や趣味などがない私でも、上手に描けました。方法は、「写真の上からトレースする(なぞる)だけ」です。この方法だと誰でも夢中になれます。難しかったことが、デジタルだと簡単にできる。これが、デジタル活用の良さだと思います。
スプリンギンでできるトレース方法
「トレースするだけでいいの?」と思われる方もいらっしゃると思います。私は、「最初のキッカケ」が大事だと思っています。絵を描く技術には、さまざまな技法があるのですが、最も大切なことは、描きたい対象をきちんと捉える「造形的な視点」です。多角的に対象の形や色を見て特徴を捉えることができるようになれば、大体のモノは描くことができるようになります。
例えば、手の形を描くとすると、パーをしている手をそのまま紙に押し付けて鉛筆で周りをなぞっていくのが手っ取り早いですよね。しかし、鉛筆を持った手の形はそうはいきません。複雑な曲線や重なりがあるものは、細部をよく見ないと描けないのです。どこからどう描けばいいのか、考えながら描いているうちに歪んでいきます。その歪みのある絵も大変オモシロイのですが、それがその子にとって表現したかったカタチではない場合に「うまく描けない」「嫌だな」が発生します。「上手に描きたい=もっと特徴を捉えた絵に近づけたい」といった思いがあるのです。学年が上がるにつれてその思いは増していきます。
では、そのような「造形的な視点」を磨くには、どうすればいいのか。そう、タブレットを活用する方法があります! スプリンギンでは、写真を撮って加工することが簡単にできます。下の画像は、スプリンギンでバナナの写真を撮って加工したものです。
(上)写真のトリミング、(中)トレースした絵、(下)写真から実際の色を抜き出して写真の上から塗った絵です。手前みそですが、上手に見えませんか。スプリンギンで、誰でもササっと描けてしまいます。実際のバナナの形や色を見て描くと普段と違った形や色が見えてきます。実物を触れるようにしておくと効果倍増です。「よく見て描く経験」が誰でも簡単に楽しくできます。タブレットを活用して絵の描き方を学べる、まったく新しい方法です。このデジタル(スプリンギン)を活用した活動は、紙に描く活動に比べて、より「造形的な見方・考え方」が高められると考えています。
連載第9回ではトレースの方法を、次の第10回では色を抜き出す方法や、できあがった作品を使った作品集づくり、絵が動く作品づくりの方法を紹介したいと思います。