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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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EdTechZine読者イベントレポート

GIGA端末の活用推進に欠かせない「保護者との協働」のポイントとは? ICT活用先進校の先生2人が語る

第6回 EdTezhZineオンラインセミナー「GIGAを加速させる! 保護者との協働」

 「1人1台」のGIGA端末が学校に導入され、端末不足の課題は解消されつつあるものの、学校現場における運用や活用面での課題は山積みだ。また、家庭への持ち帰りも始まったことで、児童生徒の端末の使い方について頭を悩ませている教員も多い。1人1台のICT環境において、さまざまな試行錯誤を重ねた末に効果的な実践を行っている埼玉県のさとえ学園小学校と、東京都の宝仙学園小学校。6回目となるEdTechZineオンラインセミナーでは、それぞれの学校でICT担当を務める、山中昭岳教諭(さとえ学園小学校)と吉金佳能教諭(宝仙学園小学校)にお話を伺い、各校のICT活用の取り組みや保護者との協働から、GIGA端末をフルに生かすコツを考えていく。

さとえ学園小学校 カリキュラム・マネージャー 山中昭岳教諭(左)、宝仙学園小学校 ICT教育研究部主任/理科専科 吉金佳能教諭(右)
さとえ学園小学校 カリキュラム・マネージャー 山中昭岳教諭(左)、
宝仙学園小学校 ICT教育研究部主任/理科専科 吉金佳能教諭(右)

【さとえ学園小学校】失敗から生まれた「レベルアップ型ルール」

 さとえ学園小学校は、埼玉県さいたま市にある私立小学校で、「人間是宝」の建学の精神のもと、正課授業とアフタースクールの融合による複合型の教育を行っている。同校でカリキュラム・マネージャーを務める山中昭岳教諭は、セミナーの冒頭で「共育」というキーワードを挙げ「共育の『共』は、情報共有」というメッセージを伝えた。

 同校はGIGAスクール構想に先駆け、2018年から全学年で1人1台のiPadを所有し、活用を始めた。「世界的に見ても学習への活用が遅れている日本のICTに『光』をあてよう」と始めたが、当初は失敗も多かったという。

子ども主体で始まった同校のiPad活用プロジェクト
子ども主体で始まった同校のiPad活用プロジェクト

 山中教諭は「iPadとの上手なつきあい方を身に付けることを目指し、当初は児童が自らルールをつくるなど、滑り出しは非常に良かった。しかし、1カ月の間にクラスがゲームセンター化したりするといったさまざまな問題が起き、iPadは遊び道具になってしまった」と振り返る。そこで考案されたのが同校独自の「レベルアップ型ルール」だ。

 このレベルアップ型ルールには、最高レベルの「ゴールド」から「レッド」まで5段階のレベルが存在する。「グリーン」からスタートし、児童のスキルやモラルによって上下する仕組みだ。レベルの判定は定期的なチェックテストのほか、教員や保護者による他者のチェックによっても判定され、レベルに応じてiPadの壁紙の色が変わり、一目でわかるようになっている。

さとえ学園小学校で実施されている「レベルアップ型ルール」
さとえ学園小学校で実施されている「レベルアップ型ルール」

 「免許証をヒントにしたこのルールではスキルやモラルが身に付き、レベルが上がるほど自由度が上がり、逆に守れないとダウンしていく。スキルやモラルは一覧表にして、保護者ともポータルサイトで共有している」(山中教諭)

レベルアップ型ルールの一覧表。グリーンからブルーにレベルアップすると「AirDrop」「Apple Books」などが解禁される
レベルアップ型ルールの一覧表。グリーンからブルーにレベルアップすると「AirDrop」「Apple Books」などが解禁される

 レベルアップ型ルールは2018年9月に開始され、2020年12月時点で全校児童のレベルはブルーが62%、グリーンが34%で、もっとも自由度の高いゴールドはわずか4%だという。なお、イエローとレッドはスクリーンタイムによる制限が大幅に入り、最低限のアプリしか使えなくなる。

 「チェックテストはオンラインで一斉に行い、合格した児童には『壁紙贈呈式』で新しいレベルの壁紙が贈られる。周りにブルーの児童が増えると、グリーンの子は焦るという『ピア・プレッシャー』もねらっている」(山中教諭)

日本のICT力を、保護者から上げていく

 レベルアップ型ルールで大きな効果を得た同校は、次のステップとして、2021年度よりCYOD(Choose Your Own Device、提示された端末・条件の中から自由に選んで購入し、使用すること)をスタートした。山中教諭は「保護者にも『日本のICT力を、保護者から上げよう』という大きなビジョンを共有した。本校の1人1台の仕組みが日本のモデルとなるよう、ICTは文房具であるからにはまず『個人で管理できる』ことを目指している」と語る。

CYODについて保護者会で丁寧に説明
CYODについて保護者会で丁寧に説明

 さらに同校は、保護者とともにICT活用を進めていく上で「組織論」を採用。「チーム“さとえ”づくり」として、保護者に「意識改革をしましょう」と訴えかけるだけでなく、実際にシステムをつくり、行動を変えることで意識を変えていく方法をとった。

 システムをつくる上でのキーワードは「全員が同じ情報を共有する」こと。「『頭・心・体』という組織論があるが、考えが一緒になること(頭)で、思いがひとつになり(心)、動きだすことができる(体)」とし、具体的には以下のようなシステムを用意した。

保護者用ポータルサイト「さとえ学園Help Desk」を設置・運営

 「保護者サポートセンター」やFAQで、お悩みをオープンにすることで不安を解消。

保護者向け研修会

 4月から3~4回開催され、教員によるサポートが受けられる。

ICTゴールを設定

 「子どもよりさらに上のスキルを身に付けよう」という目標を保護者全員で共有する。

 「保護者が常に端末を使う機会をつくったことで、以前はICTを苦手に感じていた方も、設定などをすべてフォローなしでできるようになった。結果として、今年の夏休みはiPadに関する問い合わせがほとんどない状況になり、保護者もレベルアップしたことを感じた」と山中教諭は述べた。

「1人1台」を支える仕組みとして「全体共有を行う場」「教員用」「保護者用」の3つのポータルサイトを運営している
「1人1台」を支える仕組みとして「全体共有を行う場」「教員用」「保護者用」の3つのポータルサイトを運営している

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【宝仙学園小学校】保護者とゴールを共有しマルチOS BYODを目指す

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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