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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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教育ICT先進国フィンランドの教育動向~現場からの声

自分で自分の人生を切り開く、フィンランドのアントレプレナーシップ教育とは?

 競争ではなく、自ら学ぶ力を育むことを教育の軸にしてきたフィンランド。その中でも特徴的な教育として「アントレプレナーシップ教育」が注目されている。日本では“起業”の印象が強い「アントレプレナーシップ」だが、フィンランドでは「自分で自分の人生を切り開くための力」として位置づけられている。その考え方や具体的な取り組みについて、フィンランドのオウル大学院で「フィンランドにおける小学生向けアントレプレナーシップ教育」を研究する田中潤子氏が、フィンランド出身で金沢の大学に交換留学の経験があり、現在は起業家として活躍するAleksi Ilmonen (アレクシ・イルモネン)氏をゲストに迎え、トークセッション形式で解説した。その模様を紹介する。

Aleksi Ilmonen氏(左)と田中潤子氏(右)
Aleksi Ilmonen氏(左)と田中潤子氏(右)

「アントレプレナーシップ」は、自分の人生を主体的に生きる力

 日本では「起業家精神」とも訳される「アントレプレナーシップ」。しかし、田中氏は、起業家に求められる「事業を興し運営していく力」はあくまで狭義であり、あらゆる人間に必要な「未来を描く力」「未来を切り拓く力」など、「自分の人生を主体的に作る力」として説明する。それは、自分の中にあるアイデアを形にしようと行動していく力というわけだ。

 それでもまだ抽象度の高い「アントレプレナーシップ」だが、EUではEuropean Commissionが発表した「アントレプレナーシップコンピテンス」がさまざまな指標として活用されている(出典:EntreComp: The Entrepreneurship Competence Framework, 2016)。15のコンピテンスが、「Into action 行動に移す」「Resources リソース(資源)」「Ideas & opportunities アイデアと機会」の3分野に5つずつ分類されているもので、各コンピテンスは関連性はあるものの、優劣も獲得すべき順番もない。

出典:Proposal for a RECOMMENDATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on key competences for lifelong learning, 2005
アントレプレナーシップコンピテンス

 フィンランドでは、1994年改定の学習指導要領からこれらが示されるようになり、2014年に改定された最新版では「21世紀を生き抜く力」としてまとめられた7つのTransversal Competenceの1つとしても掲げられている。田中氏は「それでもまだ『アントレプレナーシップ教育を行っている』と明言する先生は少ない。しかし、実質的に言葉と概念が教育の現場で導入され、広がっている最中」と現状について語った。

「アントレプレナーシップ」を育むための先進的な5つのプログラム

 その具体的なプログラムや取り組みとして、次の5つが紹介された。

(1)Me&MyCity(ミー・アンド・マイシティ)

 2010年より8割以上の学校でクラス教員によって実施されている教育プログラムで、小学校6年生と9年生で受けられる。企業や病院などのブースが並んだミニチュア都市のような会場の中で、仕事生活や経済、社会など、実社会での“経験”を疑似体験できる。履歴書を書いたり、労働契約書について学んだり、税金や選挙、銀行の仕組みなどさまざまな体験に子どもたちも興味津々に学んでいるという。

(2)小さな起業家 若き起業家

 NPOが運営するサービスで、自分たちで会社をつくってみる、ビジネスコンテストに応募するといった「起業体験」ができる。選択プログラムとして提供されており、学校が導入していれば受けられる。

(3)テクノロジークラス、STEAM

 田中氏が滞在するオウル市で特に注力されているSTEAM教育のプログラム。「課題解決の力」を、テクノロジーを含めたものづくりによって身につけていくという考え方に基づいている。例えば、学校によってはファブラボ(デジタル&アナログのさまざまな工作機械を備えた市民工房のネットワーク)で作成したピアスをオンラインショップ販売したり、Instagramでプロモーションを行ったり、実社会と結びついた活動を行っている。

(4)Urakka(ウラッカ、フィンランド語でタスクという意味)

 先生から提示されたタスクを、自ら立てたスケジュールで実践し、進行していく。ペアやグループで取り組むタスクもあり、プランニング力や行動力などのトレーニングとなる。また、行動や思考などに対するさまざまな問いかけが行われ、自己理解を深めていくことができる。

(5)Phenomenon Based Learning

 2014年の学習指導要領改定から、7~16歳の基礎教育の間に年に最低1週間行うことが義務付けられている教科横断型学習プロジェクト。フィンランドでは以前から日常的に教科横断型での学習が進められているが、それをさらに深化させていくためにフェノミナン(現象)をベースとしたものとして掲げられた。

 イルモネン氏は「自分が小中学生の時は、まだこれらはなかったが、過去に課外活動で4Hという団体のアントレプレナーシップ教育プログラムを受けたことがきっかけで、ゆくゆく自分が起業するに至った」と語る。彼自身は現在20代、近年急速にアントレプレナーシップ教育の取り組みは広がってきているようだ。

 また、田中氏は「インターンシップや授業見学を体験する中で、短期的・単発的プログラムでアントレプレナーコンピテンスが身につくとは思えないと感じた。大人も含め不足している項目が誰にでもあり、日常の中で考え、練習することで、育むことができるのではないかと考えた」と語った。

次のページ
日常的な取り組みや意識付けが「アントレプレナーシップ」を育む

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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