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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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GIGAスクール構想で実現する「学習者主体」のICT活用

進学先の高校を動かしたChromebookの「学習者中心」活用実践

GIGAスクール構想で実現する「学習者主体」のICT活用 第2回

 前回の記事では「学習者中心」で端末を用いるべき理由として、(1)児童生徒のほうがICTスキルが高い場合がある、(2)説明不要な機能制限が増えると端末の故障率が上がる、(3)学習者主体の活用で情報リテラシーが向上する、という3つの観点を紹介しました。第2回では具体的な事例として、北海道教育大学附属函館中学校(以下、附属函館中)の実践をお伝えします。4人のグループで協働し、50分の授業内で成果物を提出したり、Gmailを使って修学旅行で取材訪問する企業とやりとりをしたり、探究の集大成として中学卒業前に1万2000文字以上の論文を執筆したり……これらの特徴的な教育活動を支えていたのは、学習者主体での「Chromebook」フル活用でした。

2017年からBYOD方式でのChromebook1人1台活用をスタート

 附属函館中では、1989年から共用のPCを導入して活用したり、2013年よりAndroidタブレットを全生徒に配布して実践を行ったりと、かねてより教育におけるICT活用が行われていました。ちょうどそのAndroidタブレットが更新の時期を迎えた2017年。同校は1人1台の教育用コンピューターの有効性を踏まえ、保護者向け説明会での合意形成を経て、各家庭で端末を購入し学校で利用するBYOD(Bring Your Own Device)方式でのChromebook導入を決定しました。これまで、3年ほどの実践を重ねてきています。その中心人物の1人が、郡司直孝先生です。今回はオンラインで郡司先生にインタビューを行いました。

北海道教育大学附属函館中学校 郡司直孝先生
北海道教育大学附属函館中学校 郡司直孝先生

 インタビューでは、Chromebookの1人1台環境で、2017年の導入当初から3年間学んだ生徒に対し、どのように授業を展開したのかお話しいただきました。

 郡司先生の授業では、授業のめあてや取り組むべき課題・留意点などをクラス全員に説明する時間は冒頭のわずか3分程度。そこから先は、生徒が主体となって課題に取り組む時間です。4名ほどのグループに分かれ、役割分担や時間の使い方をGoogleドキュメントを使って相談し、Webサイトで調査した内容を「Googleスライド」上で共同編集機能も駆使しながら、指定された枚数以内にまとめていきます。その成果物をクラウド上に格納するところまでの工程すべてが、50分の授業中に完結します。

課題の進め方も生徒自身で決めていく
課題の進め方も生徒自身で決めていく
生徒は使いたいツールを選び、それぞれ作業を進める
生徒は使いたいツールを選び、それぞれ作業を進める

 大人にとっても難しそうですが、中学生が短時間でやりとげるためには、どのような指導が必要なのでしょうか。

中学1年生の1学期に基礎スキルを習得

 まずは郡司先生に、学校としてのChromebookの活用指導の状況を伺いました。

 「入学直後の1学期に『総合的な学習の時間』として7コマのカリキュラムを組み、ChromebookとGoogle Workspace for Educationの基本的な使い方を一通りレクチャーしています。これに加えて、国語活動の一環として『メールの書き方・使い方』も指導しています。

 特にメールのスキルは、生徒自身が課題を設定して行う探究活動(のちに卒業論文として提出)の一環である修学旅行での『企業取材』に向けて身につける必要があります。企業とのアポイント獲得や取材準備のため、公的な情報連絡手段としてメールを使用するのです。この活動を見越して、1年生では1通目のメールを送る際の基本的なテンプレートを配布し、それを活用した送受信の演習を実施します。ただし、2通目以降のやりとりについてはテンプレートが使えないので、私たち教員が直接指導しています」(郡司先生)

 このように、入学後すぐにChromebookの基本的なスキルを身につけた生徒は、授業中の課題や宿題の「解決手段」として活用できるようになっていくのだそうです。

 ちなみに「これだけ活用が進んでいるのであれば、生徒から端末の使い方に対する質問がたくさんあって大変なのでは?」と思って聞いてみたところ、郡司先生からは、以下の答えが返ってきました。

 「いえ、生徒は教員ではなくICTスキルの高いクラスメイトに聞きながら、ほとんどの課題を自分たちで解決していきます。聞きやすいのもありますが、恐らく教員よりも生徒のほうが詳しいというのが実態です(笑)」(郡司先生)

 そして、時には先生にも質問が来ると言います。

 「ネットワークの問題で端末がクラウドにつながらなくなった場合や、授業中の調べ物を進める上で機能制限やフィルタリングを緩和してほしいときには、直接質問が来ます」(郡司先生)

 この部分がまさに、前回の記事で最初に挙げた「児童生徒のほうがICTスキルが高い場合がある」という観点の具体例にあたります。特に中学生くらいになると、明らかにICTスキルの高い生徒が学年に数人ほどいることが多く、その生徒がクラスや学年の中で「何か起きたらあの人に聞く」といった神様的存在になり、そのスキルが徐々に周囲に伝搬されていく現象が発生します。加えて、そうした試行錯誤を繰り返せる自由度が生徒の端末にあれば、前回記事の「学習者主体の活用で情報リテラシーが向上する」ことにもつながっていき、ICT活用に対する正のスパイラルが回り始めるのです。

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生徒の活用を支えるため、先生への権限委譲も進んでいる

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この記事の著者

野本 竜哉(EduOps研究所 代表)(ノモト タツヤ)

 情報工学修士。高校生時代に自身が1人1台の端末環境で学んだ経験を世に広げるべく、通信企業の学校SE、教育企業の管理職、教育系システム会社の執行役員を歴任し、一貫して教育×ICT領域の事業に従事。2024年8月に独立し「技術をやさしく伝える」をモットーとした教育現場の取材・執筆・情報発信活動の傍ら、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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