はじめに
「KidsVenture」は「電子工作・プログラミングを通じてつくる楽しさを学び、挑戦意欲溢れる次世代の創出に貢献する」ことをミッションに掲げ、2015年から子ども向けのプログラミング教室を開催している。今回は運営委員会代表のさくらインターネット株式会社 高橋隆行氏、副代表のビットスター株式会社 若狭敏樹氏、同じく副代表の株式会社ナチュラルスタイル 安中剛氏に話を伺った。
KidsVentureについて
KidsVentureは子ども向けプログラミング専用パソコンである「IchigoJam」を使ったプログラミング教室だ。さくらインターネットとビットスター、ナチュラルスタイル、jig.jpの4社が共同で運営し、さらに、PCN(プログラミング クラブ ネットワーク)が協力している。PCNは子どもたちにプログラミング教育を行う団体で、全国各地に支部を持つ。さらに札幌を拠点とするビットスターの存在もあり、東京だけでなく札幌や大阪、仙台などで教室を開催している。非営利で運営されており、参加費はほぼキットの価格のみ。その気軽さもあって、毎回定員となる人気ぶりだ。
しかし、そこには非営利ならではの悩みもある。
「キットの代金以外は全て主催者である私たちが負担しています。そのため、もっと活動を広めていきたい気持ちはありますが、負担を強いてしまうため安易に仲間を増やそうとは思っていません。KidsVentureだけでカバーできない地域についてはPCNさんと協力して開催しています」(高橋氏)
全ての子どもたちにプログラミングの楽しさを!
子どもたちにプログラミングの楽しさを教えたい――そんな思いを抱いた若狭氏が、高橋氏に相談したことがKidsVentureが生まれたきっかけだった。「最初は勢いで始めてみた、というのが正直なところです」と若狭氏は話すが、そこには強い思いがあった。
「ずっとITの世界で仕事をしてきましたが、子どもたちに対して面白さや楽しさを見せる、といったことはこれまでなかったんです」(若狭氏)
時を同じくしてIchigoJamが発売。その存在を知っていた高橋氏は、以前より面識があったIchigoJam生みの親である株式会社jig.jpの福野泰介氏に会うため、若狭氏と共に福井を訪れた。
最初は大々的に教室を開催するつもりはなかった2人だが、福井で見た光景に感銘を受ける。
現在、KidsVentureの代表講師を務め、IchigoJam販売元のナチュラルスタイルの代表でもある松田優一氏は、2014年にPCNを設立。「全ての子どもたちにプログラミングの楽しさを!」をモットーに、地元の福井県で活動していた。高橋氏と若狭氏が目にしたのは、放課後、地域の公民館に子どもたちが集まり、電子工作やプログラミングを学ぶ光景だった。
松田氏と同様の活動ができないか、高橋氏と若狭氏は考えたものの、業務との兼ね合いもあり難しいという結論が出た。また、さくらインターネットの東京支社がある新宿に平日の放課後、子どもたちを集めるのもあまり現実的ではない。そこで、土日にスポット的な活動を行うことにした。
IchigoJamを教育に使用する際のノウハウを享受するため、2人は松田氏からナチュラルスタイルの東京オフィスに勤務する安中氏を紹介された。
現在は、高橋氏と若狭氏が企画立案と営業を行い、2人のアイディアをカリキュラムに落とし込んで具現化する過程を安中氏が担当している。
事業者がプログラミング教育を行う意義
現在KidsVentureで講師を務めるのは松田氏のほか、さくらインターネットやビットスターの現役エンジニアだ。さらに、さくらインターネットのサービスを活用し、IchigoJamをインターネットにつなぐカリキュラムを実施している。
「さくらインターネットもビットスターも、サーバーの運用技術に長けている事業者です。子どもたちには、まずプログラミングに触れてもらい、それに加えてネットワークやサーバーについても興味を持ってもらえたらうれしいです。将来的にはインフラについても教えてあげられたら、と思っています」(高橋氏)
プログラミングで作るのは子どもたちが大好きなゲームだ。簡単な操作で遊べる比較的単純なものだが、それでも子どもたちは夢中になる。
ほかにも、カリキュラムを作る際に高橋氏がこだわった点があるという。それは、最後に参加者の子どもたちがその日の感想を全員の前で発表するということだ。
「人前で話すことは生きている限り必ずあるので、プログラミングができて、さらに自分の思いや体験を説明できるのであれば、それはきっと強みになるはずです」(高橋氏)