教育現場へ「ナレッジ」と「ツール」を無償で提供
竹村氏は、SAS Japanがデータサイエンス人材の育成に取り組む教育現場に対して行っている支援施策の例として、「大学での講義」「無償ソフトウェア・教材・e-Learningの提供」「初等教育支援」の3つを挙げた。
「大学での講義」は、データアナリティクスの実践経験を持つSAS Japan社員が大学で講義を行ったり、授業で使われるツールを提供したりといった取り組みだ。実際の実施例としては、同志社大学での「Industry-Leading Analytics」、筑波大学での「マネジメント演習」、滋賀大学の「IoT実践トレーニング」などがある。同志社大学では、SAS社員がアナリティクス・ライフサイクルの全容や、いくつかの分野での実践例について、学生に講義を行った。筑波大学のマネジメント演習では、企業から提供されたPOSデータを使い、AIを用いた業務改善や経営改善を学生が提案する課題で、分析プラットフォームを提供している。また、滋賀大学のIoT実践トレーニングでは、電動モーターが発生する信号をリアルタイムデータとして受け取り、処理を行うモデルの実装を演習として行っている。
「無償ソフトウェア・教材・e-Learningの提供」は、学生・教員向けに、教育・学習のためのSASソフトウェア、および教材をクラウドで無償提供するもの。具体的には、SASの最新プラットフォームである「SAS Viya(サス・バイヤ)」の教育機関向けバージョン「SAS Viya for Learners」や、製品版SASと同等の機能を持った「SAS OnDemand for Academics」などが無償で利用できる。これらの製品には、SASのツールを授業で活用するための教材類も用意されており、教員や学生が「SAS Academic Hub」に登録することでアクセスできるようになっている。
「初等教育支援」の例としては、SAS Japanが2016年から、毎年夏に開催している「なつやすみ親子でデータサイエンス」が紹介された。これは、小学生とその保護者が参加し、データをビジュアライズした「発表ポスター」を制作するイベントだ。小学生が生活の中で気になったテーマに沿ってデータを集め、SAS社員のアドバイスを受けながら「仮説」を立て、「可視化」を通じて「分析」を行い、「発表」するという、アナリティクスのライフサイクルを体験できる内容となっている。完成したポスターを夏休みの自由研究課題として学校に提出する参加者も多いという。2020年はオンラインでの開催となったが、場所と時間の制約がなくなったことで、全国各地から参加者が集まり、例年にひけを取らない、充実した学びの場を提供できたとしている。