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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(STEAM教育)(AD)

あらゆる人にデータ活用のセンスが求められる時代に、SASが取り組む「教育支援」とは

SAS FORUM JAPAN 2020レポート(前編)

 SAS Institute Japan(SAS Japan)は11月25日に「SAS FORUM JAPAN 2020」を開催した。同イベントは例年、都内の会場でリアルイベントとして開催されてきたが、今年は新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、完全なオンラインイベントとして実施された。ビデオ配信で行われた60以上のセッションは、業種やテーマに沿った8つのトラックで構成。「アカデミック」トラックでは、近年、政府の教育政策においても重視されている「データサイエンス人材」の育成に向けた取り組みと事例が多数紹介された。

日本の教育現場に求められるAI人材像

 アカデミックトラックでは、SAS Japan アカデミア推進室 アカデミック・プログラム・マネージャーの竹村尚大氏が「アナリティクスの学びが拓く未来」と題し、SAS Japanの教育支援における取り組みを紹介した。

SAS Japan アカデミア推進室 アカデミック・プログラム・マネージャー 竹村尚大氏
SAS Japan アカデミア推進室 アカデミック・プログラム・マネージャー 竹村尚大氏

 コンピュータで高度な統計分析を行うためのパッケージソフトとして生まれたSAS(サス)は、社会における「データ」の重要性と価値の増大に合わせ、データからインテリジェンス(知見)を導き出すためのアナリティクスプラットフォームとして急速に進化を遂げてきた。SASでは「データがあふれる世界を、インテリジェンスに満たされる世界に変える」というビジョンを掲げており、同時に「世界を変える」ために不可欠な要素として、世界規模で教育活動への支援に力を入れている。

 特に日本では、数理、データサイエンス、AIに関する基礎的能力を備えた人材の育成が、政府によるICT戦略の主要テーマに位置付けられており、初等から高等までのあらゆる教育機関において、環境整備、カリキュラムの拡充といった、大規模な取り組みが進められている(文部科学省「AI戦略等を踏まえたAI人材の育成について」)。

日本でいま進められている教育改革
日本でいま進められている教育改革

 「データサイエンスやAIの教育に、これほど大規模な取り組みが必要なのかという意見もあるが、結論を言えば『Yes』だ。AIやアナリティクスの実用化にあたっては、そのライフサイクルの中で、さまざまな知見を持つ人材のコラボレーションが不可欠となる。すべての人が専門的なスキルを持たなくてもよいが、それぞれの立場からライフサイクルの全体像をイメージできることが求められる。今、日本の教育現場に求められるのは、そうした全体像を捉えられる人材の育成だ」(竹村氏)

教育現場へ「ナレッジ」と「ツール」を無償で提供

 竹村氏は、SAS Japanがデータサイエンス人材の育成に取り組む教育現場に対して行っている支援施策の例として、「大学での講義」「無償ソフトウェア・教材・e-Learningの提供」「初等教育支援」の3つを挙げた。

 「大学での講義」は、データアナリティクスの実践経験を持つSAS Japan社員が大学で講義を行ったり、授業で使われるツールを提供したりといった取り組みだ。実際の実施例としては、同志社大学での「Industry-Leading Analytics」、筑波大学での「マネジメント演習」、滋賀大学の「IoT実践トレーニング」などがある。同志社大学では、SAS社員がアナリティクス・ライフサイクルの全容や、いくつかの分野での実践例について、学生に講義を行った。筑波大学のマネジメント演習では、企業から提供されたPOSデータを使い、AIを用いた業務改善や経営改善を学生が提案する課題で、分析プラットフォームを提供している。また、滋賀大学のIoT実践トレーニングでは、電動モーターが発生する信号をリアルタイムデータとして受け取り、処理を行うモデルの実装を演習として行っている。

 「無償ソフトウェア・教材・e-Learningの提供」は、学生・教員向けに、教育・学習のためのSASソフトウェア、および教材をクラウドで無償提供するもの。具体的には、SASの最新プラットフォームである「SAS Viya(サス・バイヤ)」の教育機関向けバージョン「SAS Viya for Learners」や、製品版SASと同等の機能を持った「SAS OnDemand for Academics」などが無償で利用できる。これらの製品には、SASのツールを授業で活用するための教材類も用意されており、教員や学生が「SAS Academic Hub」に登録することでアクセスできるようになっている。

 「初等教育支援」の例としては、SAS Japanが2016年から、毎年夏に開催している「なつやすみ親子でデータサイエンス」が紹介された。これは、小学生とその保護者が参加し、データをビジュアライズした「発表ポスター」を制作するイベントだ。小学生が生活の中で気になったテーマに沿ってデータを集め、SAS社員のアドバイスを受けながら「仮説」を立て、「可視化」を通じて「分析」を行い、「発表」するという、アナリティクスのライフサイクルを体験できる内容となっている。完成したポスターを夏休みの自由研究課題として学校に提出する参加者も多いという。2020年はオンラインでの開催となったが、場所と時間の制約がなくなったことで、全国各地から参加者が集まり、例年にひけを取らない、充実した学びの場を提供できたとしている。

大学とSASが共同で「データサイエンス人材」を認定

 SAS Japanでは、教育支援に加えて、大学でデータサイエンスを学んだ人材のキャリア支援にも取り組んでいる。その一つが、SASと大学が共同で、SASに関するスキルを学んだ学生を認定する「SAS Academic Specialization」(旧、SAS Joint Certificate Program)だ。このプログラムでは、大学で提供される関連講義を6単位以上取得した学生に、大学とSASのロゴが記載された認定証、およびデジタル・バッジを発行する。国内では、滋賀大学、帝京大学、東京理科大学、同志社大学が、このプログラムに参加している。

認定証とデジタルバッジのイメージ
認定証とデジタルバッジのイメージ

 SAS FORUM JAPAN 2020では、同プログラムに参加している大学のうち、帝京大学の事例が、同学大学院公衆衛生学研究科(SPH)講師の根本明日香氏(生物統計学担当)から紹介された。

 帝京SPHは、2011年4月に設置された研究科で、2021年度で開講10周年を迎える。現在、専門職学位課程(MPH)と、博士後期課程(DrPH)で、26名が在籍している。公衆衛生学大学院の国際標準とされている、疫学、医療政策・医療管理学、社会行動科学、産業環境保健学、生物統計学の「基本5領域」において、問題解決のできる「Change Agent」となる人材の育成を行う。

 各領域での問題解決にあたって、統計学的手法の活用は不可欠だ。同学では、特に生物統計学に関連した4科目(基礎生物統計学、応用生物統計学、データ解析演習、課題研究)の単位を取得し、基本的なSASプログラミングの習得と研究におけるデータ解析の実習を修了した学生に対して、SASとの共同認定資格である「Certificate in Biostatistics」の認定証を授与している。認定プログラムは2016年度に開始しており、2019年度までの4年間で、42名が同資格の認定を受けたという。

帝京SPHとSASとの共同認定資格である「Certificate in Biostatistics」
帝京SPHとSASとの共同認定資格である「Certificate in Biostatistics」

 学生が実際にSASを利用したデータ解析を行うのは「課題研究」だ。課題研究では、公衆衛生上の諸問題の中からテーマを選び、問題の把握と分析、解決策の立案と実施、結果の評価といった流れによる「問題解決型アプローチ」で演習を行う。特に「問題の定量的把握」や「実施した対策の評価」といったフェーズでは、SASによるデータ解析が活用されている。

 根本氏によれば「課題研究では、教材データによるシミュレーションではなく、実際のデータを使って、研究にデータ解析を活用する方法を身につける」という。これまでに課題研究で取り扱われたテーマとして、根本氏は「女性の生活習慣病リスクを高める飲酒と社会的要因の関係」「術後血中乳酸値と心臓手術後院内死亡の関連の検討」「中学生の食事摂取およびライフスタイルと心身の健康問題との関連性」などを例に挙げた。それぞれの研究では、各要素間の関連性について、単変量解析、多変量解析といった統計手法を用いた分析が行われている。

 例えば「中学生の食事摂取およびライフスタイルと心身の健康問題との関連性」についての研究では、実際に1600名の中学生に対して、食事、ライフスタイル、心身の健康(SPSスコア)に関する調査を実施し、その結果を分析した。この研究では、調査対象となった中学生の生活において「食物繊維摂取量が多い」「夜12時には熟睡している」「睡眠時間が6時間以上」といった要因が、SPSスコア低値(心身の健康問題が少ない)ことと関連し、「嗜好品摂取量が多い」ことがSPSスコア高値(心身の健康問題が多い)ことと関連していることが、統計的に有意であったという。

 同研究科のMPH修了生については、博士課程への進学のほか、医療機関を中心に、製薬企業、健康関連機関への就職を進路に選ぶケースも多い。根本氏は「帝京SPHのミッションは、社会における公衆衛生課題の解決を目指すリーダーを育成する教育と、実践に結びつく科学的研究を通じて、健康でより良い社会をつくり、いのちと暮らしを守ること。その実現のためにも、公衆衛生の5分野を学び、プログラミング型の統計解析ソフトウェアによる基礎的なデータ解析スキルを身につけた人材を育成することで、社会に貢献していきたい」と述べた。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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