EdTechZine(エドテックジン)

学習目的・対象者別

幼児教育におけるテクノロジーの可能性とは? 数学的思考で子どもたちの力を引き出す

グローバルな視点から探る、これからの時代に必要な幼児教育 第7回

  • ブックマーク
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 2020年4月に開始した本連載では、グローバルにおける幼児教育に関する考え方の潮流に触れながら、立命館小学校正頭先生との対談や、千葉大学教育学部松尾教授との対談を通じて、日本の幼児教育の未来を示唆してきました。最終回となる今回は、松尾教授と行う予定の実証実験の概要を紹介し、幼児教育とテクノロジーの可能性について解説していきます。

ほとんどの未就学児は、30秒に1回は遊びの中で数学的思考を取り込んでいる

 前回の松尾教授との対談でも幼少期の数学的思考の大切さについて触れましたが、今回の記事でも改めて解説します。スタンフォード大学で幼少期の数学教育を研究しているプロジェクト「DREME」では以下の通り記載されています。

 In their free play, children naturally engage in mathematics. [1] Observations of preschoolers show that when they play, they engage in mathematical thinking at least once in almost half of each minute that they are playing. Almost 9 in 10 children engage in one or more math activities during play episodes. [2] That's a lot of child-centered, child-generated mathematics!

 要約すると、「ほとんどの未就学児は、30秒に1回は遊びの中で数学的思考をし、数学的なアクティビティを自然に取り込んでいくことができる」という意味です。

 未就学児の遊びをじっくり観察していると、誰からも教えられていないのに、積み木の形を比較して分類したり、おままごとで複数のお皿に同じ数だけフルーツを配膳したりするなど、数学的な知恵を使った動作がよく見られます。

 こうした子どもの「数学的行動」を観察する観点については、これまであまり日本では共通認識を持つことができませんでした。世界最先端の研究においても統一した考え方は形成されていませんが、代表的な観点として4つのマス・アビリティ(数学的行動)を紹介します。

【1】Number Sense(数感覚)

 「バブバブ」しか言えなかった未就学児も、「イーチ、ニー、サーン、シー……」のように言葉として数を言うことができるようになり、やがて実際のモノと結びつけて本当に数えられるようになります。こうした子どもの日常生活では、どのような見え方の変化があるのでしょうか。

 数感覚を持つことができるようになった子どもは、自分とお友だちのお菓子の数の違いに気づくかもしれません。お友だちとままごと遊びで、家族分の野菜や果物を分けて遊べるようになっているかもしれません。このように、子どもたちは日常生活の中で数について気づくことができるのです。子どものこうした気づきを「Number Sense(数感覚)」と呼びます。

【2】Spatial Sense(空間認識力)

 丸、三角、四角、星形、ひし形など、未就学児はいろいろな形の違いを認識しています。一つひとつの形を知るだけでなく、お絵かきの中で家族の絵を描いたり、好きなキャラクターの絵を描く中でいろいろな形を使い分けたり、組み合わせたりするなど、特徴を形で認識してそれをアウトプット(再現)していることがわかります。散歩中、ふと見上げた空に浮かぶ雲の形を見て、「サカナ」や「ハート」と答えるのも形を認識する力を身に付けているからです。

 こうした2次元の形だけではなく、3次元でも子どもは空間認識力を日常生活の中で養っています。代表的なのは積み木遊びでしょう。ブロックをさまざまな形に積み上げて空間認識力を高めています。

【3】Measurement(測定)

 砂場での「山を作って、トンネルを掘りたいなぁ」といった遊びでも、子どもは数学的思考を取り込んでいます。山を作るのにバケツが何個必要か、どこをどう掘ればトンネルが崩れてしまうのか……こうした感覚を「Measurement(測定)」と呼びます。最初は多い・少ないや、長い・短いなどの数量比較から始まり、物差しや代替手段を使った測り方などの知恵をつけ、遊びの中でもこうしたスキルを自然に取り込んだ遊びをしていくことがわかります。

【4】Patterns(パターン認識力)

 ドイツの数学教育学者であるヴィットマン先生は、「数学はパターンの科学だ」と主張されており、「Patterns(パターン認識力)」は数学教育の内容の1つとなっています。何かの法則を発見したり(帰納)、その法則を適用したり(演繹)する力とも言えます。「Patterns(パターン認識力)」が高い子どもは恐らく、この規則・法則の発見自体に面白みを感じ、その結果を予測して、見事当たっていたときに喜びを感じているのでしょう。

 例えばお絵かきの中で、黄色と緑色を混ぜると青色に変化することを発見し、ほかの色の組み合わせを試してどんどん色を混ぜた結果の規則性を楽しみます。ほかにも壁に落書きしてみたり、小さな人形をたくさん並べてみたりするなど、子どものこうした行動は「Patterns(パターン認識力)」の発達と見て取れます。


  • ブックマーク
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

バックナンバー(最新順)

連載:グローバルな視点から探る、これからの時代に必要な幼児教育

著者プロフィール

  • 花岡 直毅(株式会社プレイシップ 共同創設者)(ハナオカ ナオキ)

     ビジネスコンサルタント/株式会社プレイシップ 共同創設者 クリエイティブディレクター  外資系コンサルティング企業で、グローバル大企業に向けてデジタルテクノロジーを活用したイノベーションをテーマにコンサルティング業務を行う。2019年より「知育」「テクノロジー」「遊び」を組み合わせて「親子のかけ...

おすすめ記事

All contents copyright © 2017 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.0