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オンライン授業は多様な受講生にメリットをもたらす――九大ビジネススクールでの実践より

実践してわかった! オンライン授業のポイント【九州大学ビジネス・スクールでの事例】第1回

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 僕が現在所属している九州大学ビジネス・スクール(以下、QBS)および九州大学経済学研究院では、新型コロナウイルス感染拡大防止策の一環として、2020年度前期は全面オンラインで授業を実施しました。本連載では、この経験から得られたノウハウや、今後実施が予定されている教室での対面参加と遠隔オンライン参加を同時進行させるハイブリッド授業に関する取り組みなどを紹介します。

はじめに

 オンライン授業、そしてハイブリッド授業については、日本のみならず世界中でグッドプラクティスの確立に向けた試行錯誤が行われている真っ最中です。本連載は、その中で行われた1つの試みをご紹介するものとして、全国の教育関係者の方々に有用な示唆をご提供することを目標にしてまいりますので、ぜひお目通しいただければ幸いです。

Zoomだけではない、「学びを止めない」仕組みについて

 オンライン授業と一口に言っても、実施の方法はさまざまです。僕がQBSで担当している授業では「事前にYouTubeで動画を視聴し、授業当日はZoomでリアルタイム授業を実施。授業後は、Slackでディスカッションを深める」という、複数の手法を組み合わせたマルチモーダル(Multi-modal)な仕組みにしています。

 具体的には、受講生は毎週授業で取り上げられる内容に関する3~5本の短い動画をYouTubeで事前に視聴し、授業当日はZoomで授業に参加します。すでに動画で主な内容は全員確認済みなので、僕が1人で喋って受講生はそれを聴くだけの一斉講義の時間は最小限。代わりに、決まった正解がない問い(たとえば、「部下のモチベーションを引き上げたいと思ったら、リーダーは何をすると最も効果的か?」など)について受講生同士がディスカッションを行い、さらにそれに対して僕が理論的な説明を付け加えるといったインタラクティブな時間を多くとる、いわゆる「反転学習」(※注1)と呼ばれる形式で授業を進めることができます。加えて、授業後はSlackというコミュニケーションツールを使って授業の感想や追加の質問などを受講生がシェアします。そこに僕やほかの受講生がコメントをすることで、さらに議論が行われ、受講生は内容に関する理解を深めることができるという仕組みです(下図参照)。

複数のツールを使った授業の流れ
複数のツールを使った授業の流れ

「一斉講義」は事前にYouTubeで

 事前学習用の動画は、3~5分程度に細かく切り分けています。1本の動画が何十分も続くような長尺のものだと、かなりまとまった時間を確保できない限りは細切れに何回かに分けて視聴せざるを得ず、内容理解という点で望ましくありません。一度に最後まで見る時間をとれたとしても、何十分もスクリーンを見続けるのは集中力の維持が難しい上に、目への負担も大きくなります。一方、3~5分程度の短尺動画であれば思い立ったときにパッと見やすく、後から復習のために見返す際にも心理的負担がありません。

 QBSの学生はほぼ全員がフルタイムで働く社会人ですが、ちょっとしたスキマ時間に学習を進められるため好評です。これは、社会人学生に限らず、さまざまな授業、アルバイト、サークル活動などをかけもちしながら時間をやりくりしている学生にとっても、学習しやすい仕掛けではないかと思います。

授業後はクローズドなツールで心おきなくディスカッション

 そして授業が終わったら、前述の通りSlackでディスカッションを行います。ツールはいろいろありますが、「講師と受講生だけのクローズドな場をつくれること」「メールアドレスだけで登録できるので、FacebookやLINEといった、ふだんプライベートで使っているアカウントを紐付けなくていいこと」「無料で使用できること」の3点から、Slackを使用しています。

 授業後に改めて感想を投稿したり、Slack上でディスカッションを行ったりすることの意義について、少し補足します。

 ヒトが何かを学ぶときには、新しい知識を受け取って、それをスポンジのようにそのまま吸収するということは、ありません。むしろ、新しい知識に出会うと、それを自分の既存の知識にどう取り込んだらよいのか試行錯誤し、モヤモヤするのです。

 そこで効果的に学習を進めるには、自分で自分なりの理解を言語化すること、そして、他者とコミュニケーションをとることが決定的に重要となります。本当は授業時間内に、一人ひとりの学生が感じたモヤモヤについて個別に時間をとれれば理想的なのかもしれませんが、残念ながら90分授業の枠の中では難しい。しかし、Slackであれば各自が疑問や感想を投稿するのも、それに対してコメントを返すのも各自のタイミングで行うことができます。

※注1:ジョナサン・バーグマン、アーロン・サムズ(著)、東京大学大学院情報学環反転学習社会連携講座(監修)、上原裕美子(訳)『反転学習 ― 生徒の主体的参加への入り口』2015年刊(オデッセイコミュニケーションズ)


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