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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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EdTechZineオンラインセミナー

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先進事例紹介(オンライン授業)

オンライン化した大学での学び~学生と教員はどう受け止めたか

 2020年度は新型コロナウイルス感染症対策に伴い、学生の入構制限や授業のオンライン化など、高等教育機関も大きな影響を受けました。本稿では、ご自身も講義のオンライン化・ハイブリッド化などで苦心されている中央大学 国際情報学部の飯尾淳教授に、大学の教育現場における現状や今後への期待・課題を、教員や学生の視点で語っていただきます。(編集部)

はじめに

 COVID-19のパンデミックは世界中で社会に大きな影響を与えました。教育機関もさまざまな形で影響を受けましたが、なかでも大学はたいへんな変革を迫られている状況です。多くの大学でキャンパスは封鎖に近い状況となり、学生の入構も制限が加えられています。そのような状況下でも教育を止めるなとばかり、教職員は努力を重ねてオンライン講義の提供が進められました。

 一方で、「大学生の日常も大事だ」というハッシュタグがSNSを席巻し、リアルキャンパスライフを取り戻せとばかりに声を挙げる学生たちも現れました。文部科学大臣は「対面講義の再開を」と、世間受けするメッセージを発信しています。いつまでもキャンパスを閉じていることが是とは私も考えませんが、感染防止と大学生の自由闊達な活動の保証をどのようにして両立すべきかという問いに対して明確な解がまだ出ていない以上、この問題はとても難しい問題であると言わざるを得ません。大学や学生、保護者などが互いに非難しあうのではなく、この問題をどう解決するかを皆で一緒に考えていくべきでしょう。

講義のオンライン化

 大学生の日常をどうするかという難しい課題はとりあえず置いておくとして、本稿では講義のオンライン化について焦点を当てて考えてみます。

 まず、押さえておきたいポイントは、オンライン講義(遠隔講義)自体は従来から部分的に認められていた講義形態である、ということです。従来より、60単位を上限として認められることが大学設置基準で示されていました。今年は、コロナ禍での影響に鑑みて、特例としてその上限を撤廃してよいとされました(来年度も継続するそうです)。

 近年はICTが高度に進化して、オンラインでの学習が多様化、対面での授業に勝るとも劣らない品質の教育が提供できるようになっていたことも幸いしました。当初は世界各国の大学でOCW(Open Course Ware)と呼ばれるオンライン教材の提供がブームになり、続いてMOOCs(Massive Open Online Courses、ムークス)というオンラインコースの提供が流行しました。私も実際にスタンフォード大学の提供するMOOCsの科目を受講してみたことがあります。内容の素晴らしさもさることながら、受講者個人を認証する仕組みや理解度を測るテストの仕組みなどさまざまな工夫が凝らされていて、唸らされました(図1)。

図1 Stanford大学のMOOCs「機械学習」のコース。14万人の評価があって★4.9とべらぼうに高い評価を得ている
図1 Stanford大学のMOOCs「機械学習」のコース。14万人の評価があって★4.9とべらぼうに高い評価を得ている

 このように、今回はコロナ禍という外部要因によって慌ててオンライン講義への対応を余儀なくされた大学ではあったものの、長い目でみると大学での講義のオンライン化は歴史の必然であると言えなくもない、のかもしれません。

学生からみたオンライン講義

 今年、急激にオンライン化した大学教育を、学生たちはどう受け止めているでしょうか。もちろん、課外活動が止まっている件や、特に新入生は「せっかく大学に入ったのに友達もできない」という切実な問題を抱えている件などを避けて議論することはできないのですが、本稿ではあえてそこには踏み込まず、講義のオンライン化にのみ焦点を当てます。

 学生に対してアンケートを取った結果がいろいろと公開されていたり、SNSで議論されていたりするのを見聞きしていると、学生が講義のオンライン化をどう受け止めているかはケースバイケースである、としか言いようがない状況です。学生が置かれた立場や講義の受講状況によってもさまざまだからです。入学したばかりで右も左も分からない1年生と、すでに大学にそれなりに馴染んでいる2年生以上とであれば、置かれた状況が異なるのは明らかです。特に学生自身は当事者意識もあり、講義の形態と課外活動を含む大学生活を切り分けて考えにくいということもあるでしょう。対象とする講義にしても、マスプロ講義(大教室での多人数向け講義)か少人数講義かで、また、状況は異なります。演習含みの講義であれば、そもそもオンライン化することができない制約すらあることでしょう。

 オンライン講義を歓迎する学生の声のなかには、「長い時間をかけて大学に行かなくてもよい」という切実な意見もあります。たしかにかなり遠方から通学している学生もちらほら居るようで、彼ら彼女らにとって、そのような無駄な時間を省ける点は歓迎すべきことでしょう。また、オンデマンド型のオンライン講義は「理解できるまで何度も繰り返し視聴できる点がよい」という意見もあります。一方で、「2倍速で見られてよい」という教員からすると(それってどうなの?と)苦言を呈したくなるような意見もありましたが。

 ところで、60単位の上限撤廃とともに「遠隔で講義をやるうえでは課題を出して学生の学修をきちんと支援すべし」という通達があったことは大学関係者以外に意外と知られていないようです。世の中の多くの大学教員はこのお触れを真面目に守ったため、学生は課題に追われるという状況に陥りました。大学の単位は講義時間以外にきちんと予習・復習の時間をとって始めて認められるべきものと定められており、本来あるべき姿に立ち戻っただけであるともいえるのですが、多くの学生たちは大量の課題に追われて悲鳴を上げていたようです。もとより組織的指導という体制が希薄になりがちな大学教育の課題が、オンライン化によって顕在化したと考えてよいでしょう。

次のページ
教員からみたオンライン講義

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この記事の著者

飯尾 淳(イイオ ジュン)

中央大学 国際情報学部 国際情報学科 教授 博士(工学),技術士(情報工学部門) HCD-Net認定 人間中心設計専門家 特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net) 理事 一般社団法人 ことばのまなび工房 理事 1994年,東京大学大学院工学系研究科計数工学...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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