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先進事例紹介(オンライン授業)

講義のオンライン化がもたらした恩恵――反転授業の実践にむけて


 コロナ禍の影響による大学の教育現場の現状を2020年11月に寄稿いただいた中央大学の飯尾淳教授に、続編として講義をオンライン化した1年を振り返っていただきました。(編集部)

はじめに

 2020年度は、多くの大学で講義がオンライン化されました。大学の現場で、学生や教員がそれをどのように受け止めたかについては、以前の記事で報告したとおりです。

 いきなり「オンラインで講義をせよ」ということになり、教員も右往左往、学生も大慌てという状況ではありましたが、1年を振り返ってみると、それなりに恩恵もあったことに気づきます。やれ、通学に時間を割く必要がなくなっただの、自分のペースでじっくり学習できるだの、学生からもオンライン授業を好意的に受け入れる声がいくつか上がりましたが、教員側にも大きなメリットがありました。それは、かねてより実践したかったけれども、なかなか手を付けにくかった、「反転授業」型講義の実践へ一歩踏み出すことができたというメリットです。

反転授業とは

 本稿をお読みの皆さまの多くはすでにご存知でしょうが、反転授業とは何か、おさらいしておきましょう。反転授業とは、学習者は事前に動画などの視聴により新たな学習内容を習得して教室に赴き、教室では講義形式の授業は行わない代わりに演習や議論、グループワークで学習を深めるという形式の授業です。通常の授業では課外での学習は授業後に復習として行うことが多かったのに対して、順序が逆になっているので「反転」授業と呼ばれます。事前に予習を手厚くやることで、学習効果を高めようという取組みですね。通常、反転授業というと初等・中等教育での実践を指すことが多いようですが、大学でももちろん実践することができます。同じように効果も期待できるでしょう。

 大学でもゼミ活動などは、従来から反転方式で演習を実施してきました。学生たちが研究を進めてきたことをゼミの時間に発表し、議論する。まさにそれは反転授業の方法そのものです。しかし、一般の講義に反転授業を取り入れることは、準備にかける労力の問題もあり、なかなか進めることが難しいと感じていました。

 反転授業の推進者は、「準備は簡単だ」といいます。「普段の授業を教室で実施して、それを録画すればよいだけだから」だそうです。しかし、この指摘には大きな疑問を感じます。

 教員の皆さんに質問です。皆さん、授業時間中、演台の上にずっと立ち止まって説明を続けていますか? なかにはそのようなスタイルで授業をする先生もいらっしゃるかもしれませんが、少数派なのではないでしょうか。黒板、使いますよね。机間巡回、しますよね。生徒や学生と対話しながら授業をしませんか? 教員以外の方々は、自分が生徒、学生だったときに、先生はどうだったか、思い出してみてください。

 教室での授業をしっかり記録しようとするのであれば、教室の後ろにカメラを備え付けて、できるだけ広角のレンズで録画しなければなりません。しかし、そのように撮影された授業風景は、先生の姿は小さく、黒板の字は読みづらいか読めない、ときとして何を喋っているかも分からない、そんなコンテンツになるでしょう。そのような動画を、事前に視聴する気になりますか?

 ある大学ではすべての授業をこのような方法で撮影し、欠席してもフォローできる体制にしているとのことでした。しかし、あくまで、緊急避難的に考えるべきモノでしょう。毎回、このような品質の低いコンテンツを観て予習せよというのは現実的ではありません。

 ところが、講義のオンライン化で状況が一変しました。オンラインで視聴するための講義動画を用意しなければならなくなったからです。この動画、対面授業を再開したときに、反転授業の予習用動画として十分に活用できるではないですか。

ハイブリッド型授業

 2020年度前期のオンライン講義では、次年度にまた対面授業に戻れることを期待し、「これは反転授業の予習動画として効果的に使えるなあ」とワクワクしながら講義動画の撮影を続けました。ところが、世間の対面講義を求める声は予想以上に強く、後期は、実習や演習型の授業を中心として対面で実施する傾向が強まりました。

 幸か不幸か、2020年度後期に私が担当した授業はほとんどが演習で、唯一の講義科目も「プログラミング基礎」という1年生を対象としたプログラミングの講義でした。必修の授業です。内容も演習含みの講義科目であり、大学生になった実感をなかなか持てていない1年生にも積極的に登校機会を与えよということで、この授業も対面で実施することになりました。

 ただし、リスクを恐れて登校したくない、あるいは、諸事情で登校できないという学生が数名おり、それを考慮して「対面とオンライン、両方に対応した授業をせよ」というリクエストに応えなければならなくなったのです。

 結果として、2020年度の後期から、ハイブリッド型でオンライン講義と対面講義と両方への参加を考慮した授業がスタートすることになりました。オンライン参加でも、教室での参加でも、いずれも決められた授業時間までに事前に動画を視聴しておくことは同じです。そして、教室では反転授業型の演習や議論が行われます。オンライン参加の学生は、LMS(学習支援システム)の掲示板機能などを用い、Q&Aを重ねることで学習を深めることにしました。

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この記事の著者

飯尾 淳(イイオ ジュン)

中央大学 国際情報学部 国際情報学科 教授 博士(工学),技術士(情報工学部門) HCD-Net認定 人間中心設計専門家 特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net) 理事 一般社団法人 ことばのまなび工房 理事 1994年,東京大学大学院工学系研究科計数工学...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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