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イベントレポート(EdTech動向)

9000本のコンテンツで休校中の学びをサポート――Eテレ編集長に聞く制作の舞台裏

「NHKでの休校対応に関する取り組みについて」レポート

 コロナ禍における休校期間に最も活用されたのが、既存の学習用動画コンテンツだ。中でも、NHKが無料で提供している動画コンテンツ「NHK for School」は主要教科はもちろん、音楽や体育、プログラミングまで幅広く、内容も非常に練り込まれているため、現場の先生からの評価も高い。自宅学習へのサポートとして3月4日から「おうちで学ぼう!特設ページ」を開設するなど、早期からの迅速な取り組みも注目されている。超教育協会が主催する6月24日のオンライン講演会では、Eテレ・R2編集長を務めるNHK編成局 編成主幹の中村貴子氏が登壇し、「NHKでの休校対応に関する取り組みについて」というテーマでEテレの番組制作について語った。

 記事中における登壇者の肩書きなどは当時のものです。(編集部)

ファシリテーターを務める超教育協会理事長の石戸奈々子氏(左)と、NHK編成局 編成主幹(Eテレ・R2編集長)の中村貴子氏(右)。
ファシリテーターを務める超教育協会理事長の石戸奈々子氏(左)と、NHK編成局 編成主幹(Eテレ・R2編集長)の中村貴子氏(右)。

卒業式をテーマにした緊急特番を放送

 中村氏は、1989年にNHKへ入局後、主に女性向け番組を担当し、現在は編成でEテレの放送に携わっている。もともと、プライベートでは子ども2人の母として、教育テレビを楽しんでいたという。

 中村氏の所属する編成センターでは、どの番組をどのタイミングで、どれだけの尺で放送するかを決める番組プログラムを作成しており、最近ではコロナ禍で制作が止まってしまった番組の代わりに、戦略的に再放送を組むことも行っている。

 休校中にも視聴者の期待に応えられるよう、NHKが取り組んできたさまざまな企画の1つとして、中村氏は3月24日に放送した緊急特番「みんなの卒業式」を紹介した。

 「卒業式ができなかったことで、先生や友だちとお別れができないまま、子どもたちは離ればなれになってしまった。悲しい思いをしている子どもたちに、なんとか式をプレゼントできないかということで形にした」というこの番組では、「卒業式で歌いたい」と希望の多かった曲をアーティストがスタジオから全国へ届けた。

「みんなの卒業式」や「休校中の君たちへ」など、この時期ならではの番組制作と編成に取り組んだ。
「みんなの卒業式」や「休校中の君たちへ」など、この時期ならではの番組制作と編成に取り組んだ。

不安な時期こそ「いつも通り」放送することが大事

 中村氏によると、休校期間のNHKの取り組みとしては、3つの柱があったという。

休校中の取り組みとして考えた3つの柱。
休校中の取り組みとして考えた3つの柱。

 1つは、「『非日常』の中で『日常』を大切にする」こと。「休校措置には自分もうろたえ、NHKとして何ができるか悩んだ」という中村氏が思い出したのは、9年前の2011年に起こった東日本大震災だ。

 「震災直後は、被害状況や安否情報を1日中放送していたため、子どもたちの大好きな番組が休止になってしまった。結果として、いっそう不安を煽り、震災で傷つきストレスを感じている子どもたちを慰めることができなかった」と、中村氏は当時をふり返る。

 そこでEテレでは、東日本大震災発生から3日後の朝7時から9時までの時間帯には「おかあさんといっしょ」をはじめとした子ども番組を再開することを決断した。すると、視聴者から「子どもの笑顔が戻った」「子どもが笑顔になることで、周りを元気にしてくれる」といった声がたくさん寄せられたのだという。

 「テレビがいつも通り放送していることは大事」として、不安なときだからこそ通常放送をキープしようと考えた中村氏は、収録に制約がある中、子ども向け教育番組は工夫して制作を続けてもらえるように対応した。

 しかし、同時に難しい点もあった。公共放送として、子ども向け教育番組だけでなく大人向けの生活情報番組や医療情報も大切にしていたため、既存の枠だけでは子ども向け教育番組を増やすことができなかった。そこで苦肉の策として、1つの時間帯を2つに分ける「マルチ編成」を実施。通常はスポーツ中継などで試合が終わらない際などに急きょ使用する「サブチャンネル」を活用することにしたのだ。

 「たくさんの番組を放送したが、ただ番組を並べたのではなく、『子どもたちが笑ったり明るくなったりできるもの』『学習に役立ち、知的好奇心を誘うもの』などを考えた」と、中村氏は番組編成の意図を語っている。

サブチャンネルとして放送した番組には「子どもたちの不安を吹き飛ばしたい」など、それぞれに意図や思いが込められている。
サブチャンネルとして放送した番組には「子どもたちの不安を吹き飛ばしたい」など、それぞれに意図や思いが込められている。

 1日でも早く子どもたちに届けるため、番組チームが権利者や出演者への許諾も通常よりスピード感を持って進めた結果、3月2日からサブチャンネルを活用した休校期間のサポートがスタートできた。

次のページ
先生や保護者のニーズにあわせた休校向け番組を編成

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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