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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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EdTechビジョナリーインタビュー

変化が求められる教育界で、「変わらない」理由とは――Libryの後藤匠氏が目指す、ICT教育と先生の理想の関係

EdTechビジョナリーインタビュー 第12回

 昨年発表された「GIGAスクール構想」をはじめ、教育界が大きな転換機を迎えている一方、現場は限られたリソースで、その変化に対応しなければならない。そうした中で効果を発揮するのが、ICTを活用した個別最適化学習だ。中でもデジタル問題集「リブリー」は、既存の問題集をデジタル化する、「これまでの勉強を極力『変えず』に、学習を効率化」というコンセプトで中・高500校以上に提供されており、注目を集めている。変化が求められる中で、「変わらない」というコンセプトを掲げる意図は何なのか。株式会社Libry 代表取締役CEO 後藤匠氏に開発経緯や現在の取り組み、そして今後の展望についてお話を伺った。

誰もが可能性を発揮できる社会を作るために、学びを変える

株式会社Libry CEO 後藤匠氏
株式会社Libry 代表取締役CEO 後藤匠氏

 ――株式会社Libryが提供する「リブリー」は 既存の教材で個別最適な学習ができるサービスとして注目されています。まずは開発までの経緯や思いについてお聞かせください。

 これに関しては、僕個人の「誰もが可能性を発揮できる社会を創りたい」という思いが根幹にあります。きっかけは、小学生の時にテレビで見た、学校に通いたくても通えない発展途上国の少女の姿でした。

 僕は勉強したくないのに勉強させられていて、その僕と同い年ぐらいの子が勉強したいと言っているのに学校にすら通わせてもらえていない。そういう状況にショックを受け、何とかしたいと思いました。最初は国際ボランティアとして貢献しようと思ったのですが、大人になるにつれ、その子が本来持っている可能性を発揮できる”仕組み”を作らなければならないと思うようになり、大学生の時に辿り着いたのが教育と雇用の領域で、大学院ではテレワーキングの研究もしました。

 その中で何かやりたいと思っていた時にふと思い出したのが、自分が受験生の時に抱いた課題感です。例えばある問題を間違えてしまった時に、復習しようと似た問題を探しますよね。僕は、持っている問題集の中に似た問題がなければ本屋さんに行き、その問題が載っている問題集を探して、買って、勉強していました。でも、そういった時間は、自分が本来かけるべき時間ではないと思っていました。それで大学受験が終わった頃に抱いた、「自分に必要な問題を世の中の問題集から自由に探してきてくれるような、問題のデータベースがあったら便利なのにな」という考えが今のリブリーに繋がりました。

 出版社と提携して問題集をデジタル化し、学習者は今まで通り紙とペンで問題を解きます。その学習データをもとにしたレコメンデーション機能や、それこそ僕が求めていた、問題を探してきてくれる機能で学習者をサポートします。また、学校の先生向けには、リブリーで宿題を出すことで、宿題管理ツールとしても使っていただけます。先生の残業時間が1日2、3時間減ったという例もあるそうで、嬉しいです。

 ――小学校の時の体験から、個人の可能性を発揮できる社会を作るために教育と雇用を変えようと思い、そこにご自身の勉強の課題感が加わってリブリーに繋がったと。

 そうですね。テレビで見たその子は、家の手伝いをしなければならず、週に1回ぐらいしか学校に通えないので、ずっと進級できなかった。でもリブリーみたいなICTを使って、その子のペースに合わせて学習が継続できる仕組みがあれば、その子が家から週に1日、2日しか勉強できなかったとしても、未来を拓いていけるだろうと思いました。

「GIGAスクール構想」で変わらなければ次はない

 ――個別最適化学習といえば、1人1台の学習環境を実現する「GIGAスクール構想」は、そういった学習方法の追い風になりますね。

 はい。しかし裏を返せば、ここで結果を出せなければこの先二度と日本の教育が変わることはないのではという危機感を持っています。

 ICT教育を進めるために、国として数千億の予算をつけた。でも、2、3年後、現場が動かず全然進まなかったという結果になった時、数千億の予算をもう一度出しましょうとはならない。だから、これからの数年間は国も自治体も、教育委員会も学校も、私たちEdTech事業者も、みんなで協力して、成果を出さないといけないと思っています。

 ――株式会社issuesさんと共に行っている「教員の働き方改革のためのICT活用」を求める政策提言キャンペーンもそういった想いから?

 もちろんです。個別最適化学習を含め、教育ICTを広げていこうとした時に、中学教員の6割が過労死ライン超えて働いている現状で「数年後のこと考えて導入していきましょう」と言っても、そんなことを考える余裕はないですよね。

 でも、先生の業務の中で、ICTによって効率化できる部分はいっぱいあると思うんです。ただ、先生だけが変わろうと思っても変えられるものではないので、予算の決定権を持っている地方自治体や教育委員会の方々と変えていかないといけない。

 そういう中で、各地域の有権者の人に声を上げていただき、集まった声を、自治体や、市議とか区議の議員さんに届けて、変えていこうという取り組みをしているところです。

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「変わらない」ことが日本の教育を変えていく

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この記事の著者

小林 真一朗(編集部)(コバヤシシンイチロウ)

 2019年6月よりEdTechZine編集部所属。カリフォルニア大学バークレー校人文科学部哲学科卒。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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