プログラミング学習による成果の評価指標をつくる
早稲田大学教授の鷲崎弘宜氏は、自身の研究室が取り組む、プログラミング教育におけるルーブリックについて発表した。
現在、プログラミング教育に利用される教材やツールは50以上存在するといわれている。それらは、テキスト言語、ビジュアル言語(ブロック言語)タンジブル(形のない情報に直接触れることができるもの)、アンプラグド、ロボット、ゲームなどに分類できる。「Minecraft: Education Edition」はゲーム型、「OSMO Coding」はタンジブル型、「アーテックロボ」はロボット型、といった具合だ。
鷲崎氏はまず、マス目を引いた正方形のエリアをくまなく掃除するロボットのプログラムを考えるケースの例を挙げた。この場合、スタート地点からマス目をジグザグに動かすパターンと、渦巻き状に移動するパターンが考えられる。ジグザグ方式はコードが長くなる傾向があるが、アルゴリズムが単純で複雑な命令やセンサーなどが不要だ。渦巻き方式はコードを単純化できる可能性があるが(前のマスを掃除していなければ前進。境界があり前に進めない、または掃除済みならば右折、この繰り返しで済む)、実装される命令体系に依存する。掃除したかどうかの判断はマップをつくりながら進むのか、センサーを使うのか、アルゴリズムの単純さに反して実装が複雑になりやすい。
この実装はツールの特性にもよるが、正解が決まっている問題ではない。目的や要件によって最適解は変わってくる。
また、この課題では利用するツールによって、児童がどちらの解法を採用しやすいかの違いも出るという。スクラッチなど、多くのツールではジグザグ方式を選びやすく、ビスケットだと渦巻き方式を選ぶ児童が多かった。
鷲崎氏らは、これらの傾向から分析を行い、ビスケットやスクラッチ、CodeMonkey、OSMO Codingといった各ツールの特徴や、授業で使った時の効果や児童の反応などを分類・整理した。この調査をベースに、プログラミング教育で学ぶ要素・スキルごとに、どこまで理解しているかを評価するルーブリックを表にまとめている。
この研究はまだ途中だが、プログラミング教育向けの教材やスキームの特徴・効果、理解レベルの指標は重要だ。この基準がなければ、教科学習の中でいくらプログラミング教育を実施しても、効果や成果が可視化しにくい。