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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(先端技術)

AIは教育に何をもたらすのか――活用に向けて乗り越えるべき課題とは?

「Edvation x Summit 2019」イベントレポート

 産業界で活用が少しずつ進み始めたAI。では、教育現場ではどのように利用できるのだろうか? 11月4日と5日に都内で開催された「Edvation x Summit 2019」では、「AIは教育に何をもたらすのか? AIテクノロジーのいまとこれから」と題してパネルディスカッションを実施。「教える」「先生の業務」の両軸で、その可能性と潜在性について意見が交わされた。

民間試験導入の見送り――英語教育をAIは支えることができるのか?

 パネルディスカッションのテーマは「AIは教育に何をもたらすのか?」。ちょうど英語の民間試験導入の見送りが発表されたタイミングでもあることから、パネリストを務めたアイード代表取締役CEOの宮澤瑞希氏は「教育現場の課題」に英語教育改革を取り上げた。

アイード株式会社 代表取締役CEO 宮澤瑞希氏
アイード株式会社 代表取締役CEO 宮澤瑞希氏

 現場の声として紹介されたのは、小学校のある音楽専科の教員の「移行期間の現在は英語が得意な自分が対応しているが、来年から全担任が対応することになる。大学受験以降英語に触れていない教員がほとんどだが、本当に対応できるのか不安」という声。そしてある高校教員の「書く・話すの能力を学んで身に付けること自体は重要で、学びのきっかけになると思っていた。令和6年度の仕切り直しまでに地域・経済格差問題(受験料・内容・難易度など)、試験官の差異問題は解決されるのだろうか」といったものだ。

 手書き認識「Tegaki」など、AIを学習活用するソリューションを開発するCogent Labsの床鍋佳枝氏は、「自身も母親であることから、地域経済格差問題は心配」と述べ、「学校の中で試験が実施できれば問題はなかった。それができなかった理由に着目し、さまざまなテクノロジーを入れるべきではないか」と意見を述べた。もちろん、AIもテクノロジーのひとつだ。

株式会社Cogent Labs 床鍋佳枝氏
株式会社Cogent Labs 床鍋佳枝氏

 「テクノロジーを使うと英語教育は改善される」と同意するのは、Institution for a Global Society(IGS)の創業者兼CEOを務める福原正大氏。IGSは人のソフトスキルを可視化するテクノロジーを持つ。当初は人事評価として企業が配置や採用に利用していたが、学校向けにも作成した。

Institution for a Global Society株式会社(IGS)CEO/Founder 福原正大氏
Institution for a Global Society株式会社(IGS)CEO/Founder 福原正大氏

 福原氏によると、AIは「機械学習」と「自然言語処理(NLP)」の2つに大別でき、英語や日本語といった言語は主にNLPを使用する。ここでの課題は「コーパスがないこと」だ。コーパスとは辞書を指し、NLPでは必須となる。「英語教育で用いるには『日本の子どもたちが英語でどのようなミスをしているのか』という膨大な辞書が必要だ」と福原氏は話す。

 こうした課題を踏まえ、「これから10年かけて国としてコーパスを作成しつつ、NLPでモデルを構築する。仮に英語の先生がスピーキングやライティングを不得意としていても、スピーキングの補正などができるようになる」と福原氏は提案した。英語の試験についても、「現在のコーパスとテクノロジーではスピーキングとライティングを完全に評価しきれない」と言及。「国がこれから5~6年かけ、NLPや機械学習の専門家を登用して英語のテストを作成し、地域格差のない形式を実現しなければいけない」と問いかけた。

 国主導でのAIモデル作成にあたってのボトルネックについて聞かれると、「シンガポールも国主導で作っている。ボトルネックがあるとすれば、民間で作成する企業の競争が働かなくなること。また、国が質のいいものを作れるかどうか(もボトルネックになりうる)」と福原氏は回答した。

AIを英語のスピーキング評価に活用する中国

 パネルディスカッションの登壇者は、実際に教育におけるAI導入に関わる最前線にいる人たちだ。AIは現時点で何を実現可能なのか?

 英語教育に特化したAIとしては、モデレーターである宮澤氏のアイードが日本で展開する「CHIVOX(チボックス)」が挙げられる。「CHIVOX」はケンブリッジ大学発のベンチャーであるChivox Co., Ltd(中国・蘇州)が開発するAIテクノロジーであり、10年にわたってスピーキング評価AIの研究開発を行ってきた。多次元音声評価を大きな特徴とし、「情景説明や口頭作文といったオープンクエスチョンに対する発話内容を、発音や文法、内容、流暢性などの複数の指標で評価を行うAI」と宮澤氏は説明する。

 中国ではすでに企業や上海市などの自治体で導入が進んでおり、教育に限定すると同国でのシェアは60%に達しているという。「中国ではAIを利用したスピーキング教育が推進されており、AIを利用した『評価⇒診断⇒改善指導』の学習プロセスを実現している」と宮澤氏。今年から日本展開を始めた段階だが、すでに実績が出ているという。

 先述したCogent Labsの「Tegaki」は日本語に特化した手書き文字認識技術で、ほぼ100%(99.22%)の精度を誇る。同社の床鍋氏は「テストの採点に使うなどの例がある」と話す。

 床鍋氏は自社の製品としてもうひとつ、自然言語理解エンジン「Kaidoku」も紹介した。キーワードに基づく検索ではなく、生徒の回答と模範解答をディープラーニングで分析することで、文章の意味の類似性に基づいたスクリーニングや採点ができるため、記述式テストなどで利用できる。また、生徒の回答と模範解答との差を抽出することで、「どのようなポイントを改善すれば点数を上げることができるのか」を示唆できるとのことだ。

 IGSの福原氏は自社が開発するクラス・マネジメントもできる評価ツール「AiGROW」を紹介した。リーダーシップ、イノベーション、3つの思考力(批判的思考力・創造的思考力・協働的思考力)について生徒の能力と課題別にマッピングし、育成目的と必要なグループの数を入力すると、最適なグルーピングを提案してくれるという。「学校の先生が持つ、形式知化されている各生徒のソフトスキル(コミュニケーション能力など、他者と協働する際に役立つスキル)や能力を可視化し、『どんなクラス編成がいいのか』『どんなグループでアクティブラーニングをさせるとうまくいくのか』『どんな個別教育をすればいいのか』などがわかる」と福原氏はメリットを説明した。

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教員の仕事多すぎ問題――RPAは解決策となるか?

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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