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1人1台端末・選定のポイント

学校で導入する端末は、何を選べばいいのか? 4種類を導入した先生が徹底比較


 筆者は東京都内の私立中高一貫校で教員として勤務しています。勤務校にはさまざまなコースが設定されており、それぞれのコースや入学段階での最適な端末を選択してきました。その結果、現在では他に類を見ないほどの複数の端末を扱う学校になりました。本記事では、生徒1人1台の端末として、4種類(iPad、Chromebook、MacBook、Surface Go)を導入した際の所感をお伝えします。

 奥津先生は2020年4月に新渡戸文化小中学校・高等学校へ異動されています。記事中の所属は執筆当時のものです。(編集部)

はじめに

 文化学園大学杉並中学校・高等学校の教員である奥津憲人です。私は2011年に麻布大学を卒業後、現任校にて非常勤講師を経て専任教諭として勤務しています。2014年からは1人1台のタブレット導入に向けた、校内での研修や生徒端末の管理など、ICT関係の担当者をしています。

 専門は理科・生物で、現在はSDGsをキーワードにした活動を、校内・校外限らず行っています。部活動では生物探究部を担当し、養蜂や野外調査、校内での農業など、生徒が「本物」と触れ合える環境をできるだけたくさん設けることを意識しています。

 本校は全日制の私立学校で、進路や学習方法に応じて3つのコースに分かれており、基本的にはどのコースも大学入試を見据えています。特色があるのは高等学校の「ダブルディプロマコース(DDコース)」です。このコースでは入学時に本校と、併設されたカナダのブリティッシュ・コロンビア州(BC州)のインターナショナルスクールに入学するため、卒業時には2つの卒業資格(ディプロマ)を取得することができます。

 BC州の卒業資格(ドッグウッド・ディプロマ)はPISAの調査でも高い成果を出しており、質の高い教育がなされていると認められています。そのため、このディプロマを持つことで英語圏の大学入試の際にTOEFLやIELTSのスコアが不要になるといった利点があるコースです。当然、このコースではカナダ人の教員によるオールイングリッシュの授業が行われており、他のコースとは異なった授業展開があります。

 このDDコース以外には「特進コース」「進学コース」があり、中学校からの附属生と高校入学生が一緒に学んでいます。

複数の種類を導入した経緯について

 2014年、最初の学年(当時の新中学1年生の特定コースのみ)にタブレットを導入した際は、iPadを選択しました。他校の実践にiPadが多いこと、「ロイロノート・スクール」といった授業用ツールが充実していることなどが選定の理由です。

 その後、2015年にダブルディプロマコースが始まった際、カナダ校教員の要望で同コースにはMacBookを導入しました。この状態が数年続いたのですが、上記の通り一部クラスのみを対象としていました。

 2017年から新入生全員にタブレットを導入するにあたり、iPadが高価であることやキーボードがないことなどがネックとなりました。そこで、Google Playが使えるようになることがリリースされ、タッチパネルに対応したChromebookが発売されたことを機に、新入生にはChromebookを導入しました。

 2017年、2018年とChromebookを選択してきましたが、故障が多いことやその修理対応への負担が大きいこともあり、2019年度の入学生にはちょうどリリースされた、廉価版のSurfaceであるSurface Goを導入することになりました。その結果、現在は下図の状態になりました。

2019年現在の端末導入状況
2019年現在の端末導入状況

 このような複数端末があることで困ったことは以下の2点です。

 まず1点目は、教員機をどうするか、という問題です。本校では中学の教員が高校の授業を担当することも、その逆もあります。学年ごとに使用端末が異なることで、操作感やトラブル時の対応を即座にできないことが問題となります。また、一部のアプリ・ソフトウェアでOSが限られることや、ロイロノート・スクールのようにOSによってバージョンが異なるといった点が困りごとです。

 とは言え、全教員が活用することを目指すと、ロイロノート・スクールやプレゼンテーションソフトウェアの活用が中心となるため、全く扱えなくなるというほどの大きな影響はありません。しかし、教員機の問題で最も懸念すべきことは、プロジェクターに接続する機器にかかる費用と、端末更新や変更をどこまで容認できるか、ということです。

 電子機器の寿命はおおむね5年と考えていますが、そのサイクルで購入し続けることができるかは未知数です。また、学年の配属が変わったときに端末の種類を変更できるかどうかといった問題もあります。そういう意味で、全学年統一していた方が良いことは確かです。

 2つ目は中心になる担当者の問題です。上記とも関連しますが、生徒機の故障を含めたトラブルが発生したとき、端末の修理対応はICTの担当者が行います。この際、複数デバイスが存在すると、それぞれの端末についての「スペシャリスト」を置き、仕事を分担することになります。これは作業が分散できるというメリットでもあるのですが、特定端末の担当者の負担が大きくなる(デバイスによって作業負担が異なる)デメリットにもなります。

 本校の場合、故障の多いChromeboookの修理対応がほぼその担当1人に集中してしまったことが、最大のデメリットでした。他のICT担当者が手助けをすべきでしたが、その担当者はまた別のデバイスを担当していて手があいておらず……結果的には修理対応専門のICT支援員を採用する形で対応をしていますが、それでも生徒は支援員ではなくICT担当の「教員」に相談することが多くなるため、個人の作業負担は多大です。とは言え、ICTの部署担当の負担が大きいことは、恐らく多くの学校で課題となっているかと思います。そのため、いずれにしてもICT担当をなるべく多く配属させることをおすすめします。

次のページ
それぞれの端末の長所・短所

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この記事の著者

奥津 憲人(新渡戸文化小中学校・高等学校)(オクツ ケント)

 東京都八王子市出身。私立の中高を卒業し、大学は麻布大学 獣医学部 動物応用科学科を卒業。学部生時代は野生動物学研究室でごみ処分場の自然回復について研究をしていた。前任校では理科主任、ICT委員会委員長およびSDGs委員会委員長を務めていた。現任校ではラーニングテクノロジーデザイナーとして教育ICT...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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