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親子でやってみよう! 動画で学ぶ「Raspberry Pi×Python」のIoTキッチンガーデン講座

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2019/08/22 07:00

 農業や工場など、さまざまな産業での活用が広がりつつあるIoT。ご家庭でも簡単なキットで手作りできることをご存じですか? 株式会社Fagriの佐々木健介さんは、「Raspberry Pi」を使ったIoTキットを用いて自宅のキッチン菜園の環境管理および自動水やりまでを実現。完成までの試行錯誤や作り方のコツなどを、オンライン動画学習サービス「Udemy(ユーデミー)」に公開しています。丁寧に解説されているので、プログラミングが初めての方や、親子で取り組みたい方にもピッタリです。講座のコンセプトについて、佐々木さんにお話を伺いました。

「IoTキッチンガーデン講座」の詳細はこちら

マンションの部屋で茂るハーブと葉野菜の秘密とは?

 佐々木さんの自宅マンションのお部屋では、キッチン脇の棚でシソやバジル、リーフレタス、サンチュなどの葉物野菜やハーブが青々と茂っています。よく見ると、容器の端からひょろりと配線が伸び、その先にはやや場違い感がある小さなコンピューターらしきものがひとつ。また、水を張った小さなボウルからはホースが伸び、植物の根元に装着されています。

マンションの一室とは思えないくらい、青々とした空間が広がっていました
マンションの一室とは思えないくらい、青々とした空間が広がっていました

 コンピューターにはセンサーが接続されており、二酸化炭素濃度や明るさ、温度、水分などが自動で計測され、しきい値を超えると自動的に水やりがされるようになっています。さらにセンサーで取得した数値データは蓄積されるため、外出先からスマートフォンなどで様子を見ることもできます。まさに野菜にとってはいたれつくせりの環境と言えるでしょう。

 「こちらは西向きの窓であまり野菜づくりには向かないのですが、かなり元気に茂っています。また、屋外で育てるよりも虫がつきにくいため、農薬を使わなくて済みます。伸びてきた葉を摘んでさっと洗ってサンドイッチにしたり、お弁当の彩りにしたり。ちょっとだけ使う時にもすごく便利なんですよ。傷みやすいハーブも香りの良い生のままで随時使えますし、特にミントはすごく茂るので、モヒートにたっぷり使うこともあります」

 そうちょっぴり自慢げに語る男性は、佐々木健介さん。宮崎に本社を持つ、農業系スタートアップである株式会社Fagriの代表であり、コンサルタントとしても活躍しています。多忙な日々をぬって、この「IoTキッチンガーデン」の装置を手作りし、その動画講座を8月から「Udemy」で公開しました。

株式会社Fagri 代表取締役 CEO 佐々木健介さん
株式会社Fagri 代表取締役 CEO 佐々木健介さん

最先端の技術を難しいプログラミングなしで体験してみる

 ではこのIoTキッチンガーデン、実際にどのような仕組みになっているのか、佐々木さんに紹介していただきましょう。

 「まずセンサーは二酸化炭素と水量、日照、温度の4種類。つないでサンプルプログラムを実行するだけで、センサー機能を利用することができます。センサーで取得したデータは『Raspberry Pi』を通じて数値化され、水量が下がりしきい値を超えると、自動で指定した時間、水が供給されます。またデータはモニターに表示されるとともに、Wi-Fiからインターネットを介して、Google スプレッドシートに蓄積されていきます」

 Raspberry Piは小型、低消費電力で、シンプルかつ安価なコンピューターのひとつです。当初は教育用の低価格コンピューターとして開発され、実際に学校教育の現場やプログラミングスクールなどでさまざまな使い方がされています。現在は他のデバイスと組み合わせて産業用にも使われるようになりました。

 今回の講座で使用するRaspberry Piは4つのセンサー、1つのスイッチとつなげ、サンプルプログラムを用いて制御を行います。例えば、センサーの水量がどのくらいならスイッチが入り、何秒経過したらOFFになるかなど、設定した値によって動的な制御ができるのです。

 ここまで読んで「なんだか難しそう……」そう感じる方もいるかもしれません。しかし、佐々木さんは「その心配は不要です」と話します。

 「プログラミング初心者の方や親子で取り組みたい方、センサーやRaspberry Piを使った授業をやってみたい学校の先生にもオススメです。私自身もプログラマーではありません。サンプルプログラムをしっかり準備してあるので、小学校高学年のお子さんなら十分取り組めると思います。ただ電気工作は危険も伴うので、保護者の付き添いのもとで作るようにしてくださいね」

講座では自由研究で活用する際のヒントや注意事項も紹介されています
講座では自由研究で活用する際のヒントや注意事項も紹介されています

 先日開催されたDIYの展示発表会「Maker Faire Tokyo 2019」でも「IoTキッチンガーデン講座」が紹介され、農業IoTを体験したい方やRaspberry Piを使ってみたかった方、夏休みの自由研究にしたい方などから大きな反響があったそうです。

 「基本的にプログラムのコードは書かずに、他の人が作成したオープンソース(無償公開されており、誰でも利用できるソースコード)をうまく使うようにしました。そのため、技術的背景を知らない初心者であっても、動画講座をそのまま真似していただければ作れるようになっています。Raspberry Piを使ったセンサーシステムは書籍でも作り方が出ていますが、情報量が多いのでかえって混乱しがち。映像は自分のペースで映像を見ながらその通りに作れるので、プログラミングが初めての方にもオススメの勉強法ですね

講座にはサンプルプログラムが用意されているので、初心者も安心して取り組めます
講座にはサンプルプログラムが用意されているので、初心者も安心して取り組めます

 ポイントはRaspberry Piの設定とセンサーの接続、そしてスイッチの制御にサンプルプログラムを使うこと……といたって簡単。それ以上にシステムを作った後の試行錯誤が楽しいと言います。

 「なぜかパクチーだけが発芽しなかったり、枯れそうになっていたハーブが、気づいたら復活して元気になっていたり、植物は本当に気まぐれです。でも、例えば温州みかんは地温がある温度以下になった時に一気に熟し、最も甘くなるといった研究があるなど、目の前の結果には必ず原因が存在します。そんなふうに、IoTで取得した数値を見比べながら、最適な栽培法を見つけるのも面白いかもしれません。

 私も最近、安価なLEDライトと高価な植物専用ライトを比較して、植物の種類によっては、どちらも同じように生育することに気が付きました。また、データを保存しておけば偶然うまくいった時も環境を真似して再現できるかもしれません。日陰と日なたの比較もセンサーがあると、数値化されて面白いと思います。IoTシステムは作るだけでなく情報を活用して試行錯誤すると、より楽しめるはずです。ぜひ、作ったその後もいろいろと試してみてくださいね」

 このIoTキッチンガーデン講座はトータル2時間の分量となっています。順番に進めていくと、自然にシステムを作り上げることができます。

簡単なIoTの体験を通じ、農業の楽しさを感じてほしい

 次に、佐々木さんが農業IoTに興味を持ったきっかけを伺いました。

 「大学では農業を専攻し、その中でコンピューターを活用することは身近なテーマでした。社会人になってしばらく農業とは離れた生活をしていたのですが、もう一度仕事としてやってみたくなったんです」

 佐々木さんは農業の地位向上を目指して、日々お仕事をされているそうです。農業には深刻な人手不足や生産性向上、生産スキルの伝承といったさまざまな乗り越えるべき課題があります。

 近年では、解決手法としてテクノロジーを上手に活用することに注目が集まり、農業IoTとして日本各地に広がっていきました。佐々木さんの経営するFagriが宮崎に本社を構えた理由も、付加価値性の高い園芸作物が多いことや、ビニールハウスを活用してコントロールがしやすいことなど、IoTによる新しい農業の場として最適だったからだと言います。

 「農業には食べ物を育てる重要な役割があり、工夫すればするほど面白さや楽しさも増えていくし、事業として持続可能になります。IoTを活用することで、さらに楽しく、効率よく農業ができることを多くの人に知ってもらいたい。その思いから作り上げたのが、このIoTキッチンガーデンなんです」

IoTキッチンガーデンには佐々木さんの農業へ対する熱い思いが込められています
IoTキッチンガーデンには佐々木さんの農業へ対する熱い思いが込められています

新しい学びにつながるファーストステップとしての動画講座

 この講座の一番の目的は「IoTを使って野菜を育てるのって面白い!」という経験をしてもらうことだと言います。YouTubeなどで無料公開することも検討されたそうですが、より多くの方に手を動かして作ってもらうことを意識して、Udemyに掲載することを選びました。

 「Udemyはパワーポイントを使って基板接続の方法などを詳細に説明できますし、講師に質問する機能もあります。『講座をシェアする』コンセプトで使いやすい機能が多いのもポイントですね。それらの機能を活用して、動画の通りに手を動かせば作れる講座を心がけました」

Udemyでは講師に直接質問できる機能があります
Udemyでは講師に直接質問できる機能があります

 「私を含め、Udemyの講座はいずれも『学ぶ』というよりも、『やってみる』といったモチベーションのものが多いですね。作る側が『教える』のではなく、『実際にやってみて、その過程を細かく紹介する』といったスタンスに近いです。なので、もっといろいろなことを紹介したくなりますね」

 今後の発展型としては、「蓄積されたデータを分析して、検証や実験などを行ってみたい」と佐々木さんは話します。

 「例えば、カメラで苗の様子を撮影し、高さを記録し続けることで成長速度も分析可能になります。そして他のセンサーデータと比較することで、どの野菜がどのような条件なら生育が良いか、推測することもできます。

 成長速度が測定できるようになれば、さらにさまざまな実験ができると思います。種を変えてみたり、条件を変えてみたり。現在は培養用の土を使用して栽培していますが、水耕栽培なども試してみたいですね。『野菜そのものの完成形を作ること』が目的ではないので、試行錯誤や失敗も含めてリアルな情報公開を行い、『自分でもやってみたい』という思いをさらに喚起させるような内容にしていきたいです」

 以前であれば最新のテクノロジーは高額かつ複雑で、なかなか手が届くものではありませんでした。しかし現在は、キットやノウハウが手軽に手に入るようになったことで、IoTのような最新技術を簡単に体験できます。また、データを分析して普段の生活の中で生かす機会はなかなかありませんが、本講座のようにちょっとした実験の場を持つことで、データを見ながら試行錯誤する楽しさを知ることも可能なのです。

 「スモールステップで試行錯誤しながら小さな成功を楽しみ、失敗からも何らかの学びを得て改善する体験は、すごく価値のあることだと思います。私自身、その実感を得られたのは『やってみた』から。IoTやデータ分析、そして少しでも興味を持った方には、ぜひはじめてみてほしいですね」

「ぜひ、試行錯誤を楽しんでください」(佐々木さん)
「ぜひ、試行錯誤を楽しんでください」(佐々木さん)

「IoTキッチンガーデン講座」の詳細はこちら

 他にもUdemyにはさまざまなプログラミング講座が公開されています。あなたにぴったりの講座を探してみてはいかがでしょうか?

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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

  • 篠部 雅貴(シノベ マサタカ)

     フリーカメラマン 1975年生まれ。学生時代、大学を休学しオーストラリアをバイクで放浪。旅の途中で撮影の面白さに惹かれ写真の道へ。卒業後、都内の商業スタジオにカメラマンとして14年間勤務。2014年に独立し、シノベ写真事務所を設立。雑誌・広告・WEBなど、ポートレートをメインに、料理や商品まで幅広...

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