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学習支援プラットフォーム「Classi(クラッシー)」が学校教育を切り拓く――Classiの加藤理啓氏が目指す、実践から得る「新しい学び」とは

EdTechビジョナリーインタビュー 第4回

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2018/11/06 14:00

 教育現場で広がるICT活用。その要となる教育・学習のクラウドサービスとして、「Classi(クラッシー)」はサービス提供開始からわずか4年で全国の高等学校の4割以上が導入するまでに成長した。提供会社であるClassi株式会社の代表取締役副社長 加藤理啓氏は「先生が持つ、生徒に対する想いに寄り添えるからでは」と、多くの学校から支持される理由を明かす。その先にどのような未来を見据えているのか。加藤氏の想いとともに、学校を取り巻くICT事情と、今後の事業の展望について伺った。

Classi株式会社 代表取締役副社長 加藤理啓氏
Classi株式会社 代表取締役副社長 加藤理啓氏

誰かと一緒に取り組む楽しさを伝えたい

――Classi株式会社は、ソフトバンクとベネッセの共同出資によって設立された会社です。立案から事業化に至るまで、加藤さんが牽引役を担ったと伺っています。そのきっかけや動機について教えてください。

 Classiは理念として「子供の無限の可能性を解き放ち、学びの形を進化させる」と掲げています。まさにその通りなのですが、私自身にはもっとシンプルで、プリミティブな想いがあります。

 これから世界全体が予測不能な時代に入るとも言われ、さまざまな暗いニュースも連日報道されています。そんな中で、楽しく充実した時間を過ごして生きていくためには、学ぶことが大切であり、それによってスキルやマインドを身につければ、社会も人生も可能性に満ちて輝いたものになる。「学びの形を進化させた」その先に、何があるのか。それを子どもたちに伝えたいと思っているんです。

 端的に言えば「自分とは異なる背景を持つ人と、一緒に何かをやる楽しさ」でしょうか。学校内でも外でも、誰かと何かをやることは、1人でやる以上にさまざまな可能性に満ちています。これまでの学び方は、1人の先生から皆が同じもの一斉に教わり、似た価値観から出された似た答えが正解とされることが多かったように思います。

 私自身も同様の教育を受けて育ってきましたが、自分とは異なる文化や価値観を持つ人々とふれあううちに、異なるものが融合することで生まれるパワーを実感するようになりました。

 それを感じたのはソフトバンクに入社してからです。Classiの設立以前に、ソフトバンクでコンシューマー向けの新規事業を担当し、海外の新規事業を立ち上げた事業者に出資して成長させるといった仕事に取り組んでいました。出張でシリコンバレーに滞在しては、国内外の関係者と交渉していくハードなものでしたが、つらいことがあってもそれすら楽しかったんです。そしてそれはClassiを立ち上げてからもずっと続いています。この楽しさはまさに「自分とは異なる背景を持つ人と、一緒に何かをやること」だったんです。

 似た者同士でやるのは楽だけど、やはり小さくまとまってしまう。特に日本は縦割り社会だからか、自分のスコープ外に対する関心が低い。私が取り組んでいたような、異なる文化や価値観を持つ人と接するプロジェクトに加わったとき、上手に動ける人とそうでない人がいることに気がつきました。

 日本人は自分の仕事以外も含めた全体を見て、「やったほうがいいのでは」といった部分に気づき、主体的に動いて補完する動き方が得意です。しかし、自分が何をしたくて何をすべきか考え、その上で人を巻き込み、自分と違うタイプの人に協力を求めるなど、熱意を持って「人を動かす」ことは苦手です。

 おそらくそこに苦手意識のある人は「横断的な新規性のある事項を、異なる価値観や考えの人と一緒に実行していく経験値」が絶対量として少ないのではないかと思い至るようになりました。それなら、経験値を上げればいい。私のように社会人になってからでもいいけれど、学校で体験できたらもっと有効なのではと考えるようになりました。

教育を本気で変えたいなら、本丸である「学校」と向き合わなければ

――ソフトバンクでの経験が、加藤さんの起業についての原動力になったのですね。

 その通りです。もともと父親・祖父・曽祖父と3代教育者という家庭で育ちましたし、自己肯定感の低さや貧困など、子どもを取り巻く環境の悪化に対して「何かできないのか」という気持ちを持っていました。

 それが決定的になったのは、ソフトバンクグループの孫正義代表がソフトバンクの「新30年ビジョン」を打ち出したことが大きいです。その中で日本の課題として「教育」が挙げられていて、これはもう自分がやらねばと思うようになりました。

 さらに孫代表は「事業をやるなら、ど真ん中のさらにど真ん中へ行け」と常に話すんです。端のほうなら風当たりも少なくてやりやすいかもしれないけれど、社会を変えるような大きな変革を起こすことはできない。世の中を大きく動かしたいなら、あえてうねりの多い真ん中を狙えということです。

 「教育のど真ん中」といえば「学校」でしょう。そこにどうやって向き合っていけばいいのか。それを考えているうちに、「プロジェクト学習」という学び方に出会いました。

 「プロジェクト学習」とは、具体的な事案に取り組みながら「経験」の中で学ぶ手法で、前述した日本人の強みを生かしながら、自分と異なる人と協力して課題解決に向き合う力が育まれるものです。さらに、ICTを用いたコミュニケーションが積極的に活用されれば、物理的な距離が離れていても「プロジェクト学習」を実施することができます。デジタルテクノロジーはソフトバンクの得意とする分野ということで、現在の強みを生かして新たな事業が創出できると考えました。

 そしてパートナーとして、ベネッセに「ぜひジョイントでやりたい」とオファーしました。組んだのは「学校カンパニー」という、特に熱意を持って学校教育について考え、支援している方々です。そのメンバーとソフトバンクがお互いの強みを発揮する形で協業がスタートしたのです。


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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

  • 森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

    2016年10月に翔泳社へ入社し、CodeZine編集部へ配属。2017年4月からはEdTechZineの編集も兼任。前職は組み込み系ソフトウェアエンジニア。

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