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子どもたちに「学びの機会を与える」ためのコンピューティング教育で、考えるべきこと――OLPCの開発者たちが語る

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2018/11/12 14:00

 OLPC(One Laptop Per Child)の活動をご存じだろうか? 日本でも10年ほど前に話題となった、安価なラップトップ「100ドルノートPC」を開発し、発展途上国の子どもたちの教育を後押しするプロジェクトだ。ただし、単にデジタル・デバイド(情報格差)を解消するためのものと解釈されがちなこの活動が、教育現場や学校の改革といった高い理想を掲げた「教育のプロジェクト」であることを忘れてはならない。そんなOLPCの共同設立者 ウォルター・ベンダー氏が8月に来日し、「OLPCが世界の教育を変えた 構築主義とこどもの創造性育成」と題した講演に登壇。OLPCのデバイスやソフトウェア、その背景となった教育の考え方について語った。また、現在同氏が研究している教育用音楽プログラミングソフト「Music Blocks」について、共同開発者のデビン・ウリバリ氏が紹介した。

「子どもは、大人が思うようにはテクノロジーを見ていない」―ウォルター・ベンダー氏

 OLPC(One Laptop Per Child)の活動は、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボが中心となって10年以上前から開始した。その名の通り、「世界中の子どもたち一人ひとりに1台のラップトップ」を届けられるよう、安価なPCを開発し、教育を後押しするプロジェクトは、現在も進行している。「XO」と呼ばれるラップトップには、「Sugar」というソフトウェアが搭載されており、子どもたちの学習や制作に役立つよう設計されている。

100ドルノートPCと呼ばれたラップトップ、OLPC XO-1
100ドルノートPCと呼ばれたラップトップ、OLPC XO-1

 改めてOLPCの活動やミッションを見てみると、その目的は「貧しい国の子どもたちのために安価なPCを開発する」というボランティア的な側面にとどまらないことが分かる。設立者のひとりであり、MITメディアラボ初代所長のニコラス・ネグロポンテ氏は、「これはノートパソコンのプロジェクトではない。教育のプロジェクトだ」と断言しているのだ。

 デジタルを活用したICT教育や、プログラミング教育が注目される昨今。テクノロジーを使いこなす能力は、教育に取り入れるべき普遍的なスキルであるとの風潮が広がる中、その先駆けとも言える活動だ。

ウォルター・ベンダー氏
OLPCの共同設立者 ウォルター・ベンダー氏

 OLPCの共同設立者であり、現在「Sugarラボ」の代表を務めるウォルター・ベンダー氏は、今回の講演でまず「テクノロジー」とはどういうものかについて触れた。

 ベンダー氏いわく、自分の孫はコンピュータもスマートフォンも、さらにはロボットさえも、テクノロジーとは認識しておらず、日常のものと見なしているという。

 「私たちが学びや教えることについて、また学校や変革について考える時は、子どもは、大人が思うようにテクノロジーを見てはいない点を考慮しておくべきだと思います」(ベンダー氏)

 大人はテクノロジーを特別なものと意識することも少なくないが、子どもにとってそれは、自分が生まれた時から当たり前に存在する技術。テクノロジーは、当たり前に日常にあるものとして捉えている。この事実を頭に入れて、教育について考えるべきだと、ベンダー氏は前提を共有した。

壊れないPCはない、でも「修理できるPC」なら実現できる

 2005年頃、ラップトップコンピュータと言えば、最も安いものでも1000ドル以上はしたという。そんな中ベンダー氏は、なるべく低価格で、どんな子どもにでも使えるデザインを目指し、OLPCの最初のコンピュータ「XO」を開発した。

 「このラップトップに、われわれのアイデアを埋め込んでいる」とベンダー氏。タイのチェンマイ近くで、子どもたちが川辺でXOを使っている写真をスライドに映した。必ずしも机に座って使うものではなく、リアルな日常の中で使えることを示す良い例だ。

 また、ラップトップは、子どもが自分で修理できるようにデザインされており、余分なネジをラップトップの中に入れている。ベンダー氏は「『全く壊れないラップトップ』は作れません。でも子どもが自分で修理できるラップトップは作れるんです」と語る。実際、2007年に配布したラップトップは、子どもたちの手によって修理を繰り返され、今でも使われているという。

 また、エチオピアの子どもたちが太陽光で動くラップトップを使っている様子も紹介された。ベンダー氏は「このようなクリーンなラップトップは今までに一度もない」と強調したうえで、昨今の一般的なラップトップでは、新しく買い替えるたびに電力消費量が増えている点を指摘。業界全体が一度方向性を見直す必要があるのではないか、と見解を示した。


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著者プロフィール

  • 岡田 果子(編集部)(オカダカコ)

    2017年7月よりEdTechZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。最近は英語学習のアプリやオンライン講座に興味がある。

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