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イベントレポート(プログラミング教育)

「僕はプログラミングができない」――17歳でロボットの会社を起業した東出氏が、中高生と語った「ビジネス」「ものづくり」「生き方」の話


 G's ACADEMYが開催する中高生向けのプログラミング集中講座「G's ACADEMY YOUTH CAMP」に、”17歳の起業家”として知られる東出風馬氏(株式会社Yoki代表取締役社長)が登場。現在19歳、現役大学生である同氏が、”後輩”世代を相手に自身の起業体験やビジョンについて語った。プログラミングを学ぶために参加した中高生の悩みに答えるQAコーナーも設けられ、参加した中高生は大きな刺激を受けたようだ。当日の様子をレポートする。

立ち上げから1年半、初の資金調達に成功――「この上なく優しい情報端末」を目指して

 G's ACADEMYはこの夏、2回のYOUTH CAMPを開催した。7月31日から4日間開催された1回目は中学生から高校生まで合計14人が参加。半数以上が男子だったが、女子も4人が受講した。HTML/CSS、JavaScriptなどのプログラミング言語を学び、オリジナルのWebアプリを作成するところまでを4日でこなす。東出氏はゲストスピーカーとして2日目に講演した。

講演の様子

 高校2年生でロボットの会社Yokiを立ち上げた東出氏。当時弱冠17歳だったことから”高校生起業家””17歳の社長”などと話題になった。あれから1年半、この夏19歳の誕生日を迎えた。もはや高校生ではなく、大学生(慶應義塾大学総合政策学部1年)だ。

 東出氏はまず、起業に至るまでを振り返った。「子どもの頃からものづくりが好きだった」と切り出し、「小さい頃から多趣味で、ザリガニを2年飼ったこともあるし、蒸気機関を作ってみたり…」と続ける。起業に影響しているのが中学2年生の時の出来ごとで、現在のアイデアにつながるロボット制作を試みたり(「その時は失敗して、いったん興味がなくなった」とのこと)、Appleの創業者であるSteve Jobs氏の名言集を読み、「2020年に起業するという目標を立てた」りしたという。

 その前には、今の東出氏につながるとも言える重要な原体験をしている。10分以上飛ぶグライダーを作ったところ人気で、中学校の学園祭において数百円で販売した。「約50基を用意していたと思うが、3分もしないうちに売り切れた」という。「自分が作ったものをいいと言って喜んでもらえる」体験は貴重だったようだ。やはり起業する運命だったのだろう。

 高校1年の時には個人事業主になっていた東出氏だが、現在を決定づけたのは高校2年の時に応募した東京都主催のスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY」だ。「能動的かつ直感的なロボットで、今までの情報端末の限界を超える」といったコンセプトで、見事優秀賞を受賞した。獲得した賞金を一部資本に当てて立ち上げたのが現在の会社、Yokiだ。

 Yokiのビジョンは、「真にパーソナライズされた世界を作り、多様性のある世界を作る」だ。そのビジョンの下、「この上なく優しい情報端末」をミッションに掲げる。

 そこで重要になるキーワードは「感情のデータ」だ。センサーが取った個人のデータをビックデータとして扱い、個人にフィットした服を作るといったことが可能になりつつある。これまでわれわれは自分に合う服を探してきたが、服がわれわれに合わせてくれる時代になる。服だけでなく、食品など身の回りのさまざまなものが個人に合わせる時代になると予想されているが、さらに東出氏は一歩踏み込んで「感情のデータを拾えない限り、本当の意味で個人にフィットしていると言えないのではないか」と考える。

 例えば同じフィットネスアプリの利用者でも、“痩せたいと思っていても痩せ方がわからない人”と“特に痩せたいとは思っていない人”で成果は大きく変わる。「その人の心の情報が拾えて初めて、本当の意味でパーソナルと言えるのではないか」と東出氏は言う。

 それを実現するためには、センサーでユーザーのデータを取るだけではなく、会話などコミュニケーションによって距離を縮める必要がある。これにより、パーソナライズされた情報やサービスを提供できる情報端末を作ろうというのが、「この上なく優しい情報端末」との言葉に込められた狙いのようだ。

 こういった考えに基づき、東出氏らはロボットの「HACO」、そして開発環境の「HACREW」を開発している。この日はうれしいニュースもあった。前日にベンチャーキャピタルNOWより出資を受けることが決定したのだ。NOWはクラウドファンディングCAMPFIREなどで知られる家入一真氏が中心のベンチャーキャピタルで、東出氏は得られた資金を利用してHACOとHACREWの製品販売に向けての準備を進める。

 当初の目標だった”2020年”よりも3年前倒しでの起業となったが、これについては「自分が目指していた世界が思ったより早く来そうだと思ったから」と説明した。一方で、会社設立から1年半、ゆっくり着実に進めてきた。「ああでもない、こうでもないとプロトタイプを繰り返している」からだそうで、「最初の資金調達までにこんなに時間がかかるというのは、(スタートアップとしては)普通に考えると遅い」と認める。スタートアップと聞くと急成長と連想しがちだが、マイペースで進めていくのが東出流のようだ。

 続いて東出氏が大切にしていることを5つ挙げた。

  • 「ネガティブであることに、ポジティブになる」(ネガティブに考えがちだが、そんな自分をポジティブに受け入れる)
  • 「小説や映画に時間を多く割く」
  • 「何もできないという自覚を持つ」(人に頼らないと何もできないという自覚を持って生活する)
  • 「1日を24時間以上にする」(人に手伝ってもらうことで、1日は24時間以上の実績を生み出せる)
  • 「人に期待する時は、同じだけ裏切られるかもしれない」(そうすれば、がっかりしない)

 このプログラミングキャンプに登壇しながらも、実は一切コードは書けないという東出氏。自分ができない部分は素直に人を頼ることで、さらに価値を生み出すのが東出氏のスタンスだ。

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なぜプログラミングをやろうと思ったのかが大切

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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