茨城大学工学部と日立製作所(以下、日立)は、人材育成や共創活動により茨城県日立市を中心とした地域課題の解決ならびに地域活性化に寄与することを目的とした、包括的な連携協力に関する協定を、7月30日に締結した。同日、茨城大学日立キャンパス内で締結式も行われた。

日立市にキャンパスを構える茨城大学工学部は、「たくましいエンジニアの育成」「世界最先端の研究拠点の形成」「茨城活躍人材の輩出」を目標に教育と研究を行っている。地元に貢献する人材の育成も重要な役割と捉え、卒業生・大学院修了生がエンジニアとして茨城県内で活躍するというキャリアパスも積極的に支援している。
一方、日立は、創業の地である日立市に、日立グループのOT(制御・運用技術)・IT・プロダクトを支える主要な事業所や研究開発の拠点を多数有している。これまでも、日立エリアに拠点を持つ日立グループの事業所やグループ会社は、理工系人材の育成に資する活動や共同研究、地域課題の解決をテーマとしたワークショップの開催などを通じて、茨城大学工学部と連携を深めてきた。
茨城大学工学部の前身である多賀工業高等学校は1939年に設立され、創設にあたっては日立製作所の創業者である小平浪平氏が資金や土地・建物を寄付している。その後も両者は現在に至るまで、人材育成や共同研究などの取り組みを通して共に歩みを進めてきた。
茨城大学工学部 工学部長の乾正知氏は「本学工学部には地域で活躍する人材を育成するミッションがある」と説明。茨城大学で学び、地域のハイテク企業に就職し、技術の最先端で活躍する人材を「茨城活躍人材」と呼んでおり、「そうした人材の育成こそ、本学の最大の地域貢献だ」と語る。さらに、こうした人々が地域で家庭を築き、その子どもたちがまた技術の世界に飛び込んでいくという「理工系人材の循環」を目指しているという。今回の協定をきっかけに「地域の未来を変えていく新技術の誕生につなげたい」と展望を述べた。

続いて、日立エリアで地域との協創活動を推進する、日立の佐野豊氏が、協定の目的と活動内容について説明した。

同協定では、茨城大学工学部が持つ専門的な知識や豊富な人的資源と、日立がこれまで国内外の多様な地域で社会課題を解決してきた業務ノウハウおよび最新のデジタル技術を掛け合わせて、地域課題の解決に向けて協働し、地域の活性化に寄与することを目的としている。

主な活動として以下の2つを予定している。
(1)地域の発展を支える理工系人材の育成に関すること
茨城大学工学部の学生に向けたキャリア形成支援として、日立エリアに拠点を持つ日立グループの事業所やグループ会社による企業説明会やインターンシップなどを実施する。学生と企業との交流の機会を提供し、学生が自らキャリアを考える機会の創出を目指す。また、日立で活躍する先輩社員との座談会などを通じて、学生が地域での多様なキャリアを描き、自律的に行動する契機となるような場の提供も予定している。
また、地域に向けたイベントを共同で開催し、小中高生の理工系分野(STEAM分野)への関心も醸成。地域を支える理工系人材の育成に寄与する。

(2)地域の課題解決に向けた共創に関すること
茨城大学工学部の学生と日立グループの社員が、ワークショップなどを通じて地域の将来像を検討していく。活動を通して、学生・社会人それぞれの視点からのアプローチで、効果的な地域課題解決の創出を目指していく。
加えて、茨城大学工学部と日立がそれぞれ有する知見やノウハウ、技術などを活用し、アイデアや研究テーマを創出。地域の課題解決に向け共創活動の環境整備を行う。そして、今後の地域の発展のために両者が協力できるテーマを選定し、地域活性化の推進を目指していく。

また、今後両者の対話を通じて、相互の発展および地域活性化に必要な活動ついては適宜取り組みを追加し、対応していく。
佐野氏は「今回、両者で初めての協定を締結することになる。関係をさらに強化し、地域活性化に向けた取り組みを一層推進していきたい」と語った。
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