
少子高齢化が加速する社会で、学びはどうあるべきか
福原氏は冒頭、この日の朝刊の一面が人口動態調査の結果だったことに触れた。2024年の出生者数は68万6000人ほどで、前年からも低下している。
「これから人口の3割が高齢者となる社会が到来しようとしており、労働力不足や社会保障費の増大、さらには経済成長の鈍化といった問題が増えている。その中で、学齢人口といわれる、これからの人生を支えるための学びを経験する人たちに、私たちはどのような学びを提供すればいいのか。これを考えてみたい」(福原氏)
続けて福原氏は「教育と学習の役割とは、人類の叡智を継承し、知を創造して、持続可能性、人類の持続可能性を支えること」という認識を共有。日本には150年を超えて大きな役割を果たしてきた「学校制度」がある。この学校制度を時代と社会のニーズに合わせて改良し、充実・進化させなければならない時期が「まさに今」だと指摘した。
一方で、学校だけが学びの場所ではない。人は家庭や地域でも学び、国内だけでなく海外でも学び、さらに学校を卒業した後も学びを続けていく。福原氏は「生涯学ぶことが大切」と述べ、「急激に進行する少子高齢化の時代を生き抜くためには、学びを学校制度の中だけで完結するのではなく、生涯学ぶ環境をどのように作っていくのかが大きな課題だ」と強調した。
こうした急激な少子化を見据えて、高等教育を中心にどのような教育を展開していくべきか、現在議論されている最中だが、その中で特に注目されているのが「規模の適正化」というワードだ。大学の入学者数の「定員割れ」が指摘され、教育機関の規模を縮小する方向に議論は進んでいる。
しかし福原氏は、この流れに疑問を呈す。「統計上の数値が先行しているが、実際にはその定員を超える何倍もの希望者が受験に来ているのが現実。規模の適正化が行き過ぎると、各地域において教育を受けられるチャンネルが減ってしまう恐れがある」と警告した。
こういった議論は、文部科学省の「国立大学法人の機能強化に向けた検討会」や「2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会」において交わされ、将来の大学教育のあり方が検討されている。
「議論の中には、これまでの教育活動があまりにも入試制度に向きすぎたものだったという反省もあった。そういった議論の結果も出てきており、公表されているので、ぜひご覧いただければと思う」(福原氏)